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王都からの影
王都の、煌びやかな広間。
男爵ペティフォグは、扇子を揺らしながら、声高に語っていた。
「恐ろしいことです、陛下。あのザリーン公爵は──」
「民に毒を配り、水を握り、子を攫い……着々と、王国を蝕んでおります」
居並ぶ貴族たちが、ざわめく。
噂は、尾ひれをつけて、王都にまで届いていた。
玉座の王は、静かに目を細めた。
「……ザリーンが、な」
王は、知っていた。
飢饉の年、見返りも求めず穀物を送ってきた、あの男を。
だが、噂がこれほど大きくなれば、放ってはおけない。
「良かろう。調べさせる」
王は、一人の人物を呼んだ。
王国きっての、冷徹な監察官。
「ローズリンド・ヴェイン。前へ」
進み出たのは、凛とした若い女性だった。
感情を見せぬ瞳。隙のない所作。
「ザリーン公爵の地へ潜入し、罪の証拠を掴んでこい」
「御意」
ローズリンドは、深く礼をした。
彼女は、信じて疑わなかった。
──悪は、必ず、裁かれるべきだと。
その確信が、やがて、音を立てて崩れていくことを、彼女は、まだ知らない。




