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蝗を討つ
裁判は、ザリーンの、完全な無罪で、終わった。
男爵ペティフォグは、偽証の罪で、失脚した。
そして、季節は、巡る。
噂は、少しずつ、形を、変えていった。
「恐ろしい公爵」から──「少し変わった、優しい公爵」へ。
そんな、ある日。
領地に、強欲な商人たちが、現れた。
彼らは、安く買い叩き、高く売りつけ、農民から、富を、搾り取った。
まるで、畑を食い荒らす、蝗の群れのように。
農民たちは、困り果て──今度は、自ら、公爵の元へ、走った。
「公爵さま! どうか、お力を!」
かつて、逃げ惑った民が。今は、助けを、求めていた。
ザリーンは、静かに、頷いた。
「ウフフフ。……任せて、おけ」
彼は、知識で、戦った。
公正な価格を、定め、農民の組合を、作り、悪徳商人の不正を、白日の下に、晒した。
剣では、なく。知恵で、民を、守ったのだ。
商人たちは、尻尾を巻いて、逃げ出した。
その夜、広場では、祭りが開かれた。
民は、公爵を、囲んで、笑った。
恐れではなく、感謝で。
子どもたちが、彼の大きな手に、ぶら下がる。
「こうしゃくさま!」「あそぼ!」
ザリーンは、困ったように、しかし、心の底から、嬉しそうに、笑った。
その隣で、ローズリンドが、微笑む。
長い、長い誤解の、冬が。
ようやく、終わろうと、していた。
――そう、誰もが、信じた。
この幸せが、永遠に続くのだと。




