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最初の声
法廷の空気が、揺れた。
ローズリンドの証言は、しかし、ペティフォグに、一蹴された。
「ふん! 書面など、いくらでも、偽造できる!」
「証拠に、なるものか!」
再び、法廷が、傾こうとした、その時。
傍聴席の奥から、一人の女が、立ち上がった。
貧しい身なりの、村の母親だった。
腕には、小さな子どもを、抱いている。
「……あの薬を飲んで、この子は、助かりました」
震える声。だが、確かな声。
「毒だと言うなら、なぜ、この子は、今、生きているのですか」
ざわり、と、傍聴席が動く。
次に、一人の老人が、立った。
「わしの借金を、焼いてくれた。見返りも、求めずに」
また一人。
「溺れた息子を、川から、引き上げてくれた……!」
また、一人。
「凍える冬に、毛布を、くれた……!」
一人。また一人。
今まで、恐怖に、口を噤んでいた者たちが。
次々と、立ち上がっていく。
それは、小さな声の、大きなうねりだった。
ザリーンは、立ち尽くしていた。
その目に、信じられないものを見るように。
長い間、誤解され、恐れられ、それでも、善を、続けてきた男。
その善意は、決して、無駄では、なかった。
静かに、人々の心の奥に、降り積もって、いたのだ。
ザリーンの頬を、一筋、熱いものが、伝った。
「……ウフフフ」
彼は、泣きながら、笑っていた。
「そうか。……見て、いて、くれたのか」




