証人
王都の、大法廷。
傍聴席は、野次馬で、埋め尽くされていた。
中央に立つザリーンを、無数の敵意が、突き刺す。
「静粛に!」
裁判官の声が、響く。
男爵ペティフォグが、勝ち誇った顔で、進み出た。
「証人を、申請します。公爵の悪事を、見た者たちです」
次々と、証人が、立つ。
「公爵は、毒を配りました……!」
「子どもを、川に、沈めていました……!」
歪んだ証言が、法廷を、満たしていく。
ザリーンは、反論、しなかった。
ただ、静かに、立っていた。
(……いい。人は、見たいものを、見る。それで、いい)
判決は、傾きかけた。
その、時だった。
「待って、ください!」
凛とした声が、法廷に、響き渡った。
進み出たのは──監察官、ローズリンド・ヴェイン。
王が、自ら放った、密偵。
「私は、陛下の命により、公爵の罪を、暴くため、潜入して、おりました」
ざわめきが、走る。
ペティフォグの顔が、青ざめる。
「そして、数ヶ月にわたる調査の末──私は、一つの真実に、辿り着きました」
彼女は、懐から、分厚い帳面を、取り出した。
ザリーンの、手記。
そして、治療した患者の、名簿。
「公爵は、毒など、配っていません。それは、薬でした」
「子を沈めたのではない。溺れた子を、救ったのです」
「ここにある全ては、罪では、ありません」
彼女の声が、震えた。
「これは、一人の男が、見返りも求めず、民を愛し続けた──その、記録です」
法廷が、静まり返る。
ザリーンは、呆然と、ローズリンドを、見つめていた。
初めて。
誰かが、彼のために、立って、くれた。




