23/30
男爵、動く
噂は、やがて、一人の男の、野心に、火を点けた。
男爵、ペティフォグ。
彼は、公爵の領地を、狙っていた。
「これだけ悪名が轟けば……失脚させるのは、容易い」
彼は、王都へと、馬を走らせた。
そして、王の前で、大げさに、訴えた。
「陛下! ザリーン公爵は、民を苦しめる、悪魔でございます!」
「毒を配り、子を攫い、空に不吉な火を放ち……今や、民は、恐怖に震えております!」
彼は、集めた「証言」を、次々と、並べ立てた。
どれも、誤解から生まれた、歪んだ噂ばかり。
だが、数が集まれば、それは、力を持つ。
居並ぶ貴族たちが、頷き始めた。
「由々しき事態だ」
「公の裁きが、必要では?」
王は、重い沈黙の後、口を開いた。
「……よかろう。公爵を、王都に、召喚する」
「公開の場で、全てを、明らかにする」
ペティフォグの口元が、醜く、歪んだ。
(かかった……! これで、あの領地は、私のものだ!)
こうして、ザリーンは、王都の法廷に、立たされることと、なった。
数え切れぬ「善意」を。
「罪」として、裁かれるために。




