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凶兆の花火

建国祭の、夜。


ザリーンは、民を、喜ばせたいと、思った。


彼は、工房に籠もり、ある物を、作り上げた。


火薬と、金属の粉を、調合した──花火である。


夜空に、大輪の花を、咲かせるために。


城の屋上から、それは、打ち上げられた。


*ヒュルルル……ドォン!*


赤。青。金色。


夜空一面に、光の花が、咲き乱れる。


それは、息を呑むほど、美しかった。


だが──地上の民は、悲鳴を、上げた。


「空が、燃えている……!」


「戦の、狼煙(のろし)だ……! 公爵が、ついに、王国に、牙を剥いた!」


「あれは、闇の儀式だ……! 空に、魔法陣を、描いているんだ!」


美しい花火は、凶兆と、なった。


人々は、家に閉じこもり、震えた。


城の屋上で、ザリーンは、一人。


夜空に咲いては散る、光を、見上げていた。


「……綺麗、なのにな」


ぽつりと、呟く。


その隣に、いつの間にか、ローズリンドが、立っていた。


もう、監察官の顔では、なかった。


「綺麗、です」


彼女は、夜空を見上げて、言った。


「とても……綺麗です、閣下」


初めて、誰かが、彼の善意を、そのまま、受け取った。


ザリーンは、驚いたように、彼女を見て。


それから、少しだけ、照れたように、笑った。


その赤い顔は──今夜だけは、怒りには、見えなかった。


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