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長い冬
その冬は、長く、厳しかった。
流行り病が、村々を、襲った。
ザリーンは、眠らなかった。
昼は畑を、夜は病人の枕元を、駆け回った。
薬を配り、熱を冷まし、時に、自らの血さえ、分け与えた。
一週間。二週間。一ヶ月。
彼の頬は、こけ、目の下には、濃い隈が、刻まれた。
巨躯は、痩せ、肌は、青白くなった。
その変わり果てた姿を見て、村人は、新たな噂を、囁いた。
「見ろ、あの姿を……。人間じゃ、ない」
「夜な夜な、徘徊し、生気を、吸っているんだ……!」
「夜の化け物だ……!」
命を削って、村を救った男は。
その見返りに、化け物と、呼ばれた。
明け方。
最後の病人の熱が、下がったのを見届けて。
ザリーンは、雪の上に、膝を、ついた。
息が、白い。
誰も、見ていない、夜明けの片隅で。
「……ウフフフ」
彼は、それでも、笑った。
「みんな、生きている。……それで、十分だ」
痩せた背中に、静かに、雪が、降り積もっていく。
その姿は、化け物などでは、決して、なかった。
ただ──あまりにも、優しすぎる、一人の人間の姿だった。




