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学び舎か、檻か
ザリーンは、新しい建物を、建てた。
大きな、明るい、窓の多い建物。
そこへ、彼は、村の子どもたちを、集め始めた。
村人は、震え上がった。
「子どもが、次々と、あの建物へ……!」
「檻だ……! 子どもを閉じ込めて、兵士に仕立てる気だ!」
だが、建物の中から聞こえてきたのは──子どもたちの、笑い声だった。
それは、学校だった。
読み書き。計算。歴史。
貧しくて学べなかった子どもたちに、ザリーンは、無償で、知識を与えていた。
黒板の前に立つ、巨大な公爵。
チョークを持つ手は、不器用で、字は、お世辞にも上手くない。
だが、子どもたちは、目を輝かせて、聞いていた。
その様子を、こっそり覗いていたローズリンドは──ある一冊の帳面を、見つけた。
それは、ザリーンの、手記だった。
『民が、飢えぬように』
『民が、凍えぬように』
『子らが、未来を、選べるように』
『私の顔は怖い。声も大きい。……だから、行いで、示すしかない』
『いつか、一人でも、分かってくれたら──それで、いい』
ローズリンドの手が、震えた。
ぽたり、と。
帳面の上に、雫が、落ちた。
それが、自分の涙だと気づくのに、少し、時間が、かかった。




