14/30
落ち着いてください、これはあなたたちの宴です
その冬は、作物が実らなかった。
村には、飢えが、忍び寄っていた。
ザリーンは、館の門を、大きく開け放った。
「腹を空かせた者は、来い。食わせてやる」
長いテーブルに、山のような料理が並ぶ。
温かいスープ。焼きたてのパン。肉と、野菜。
飢えた村人たちは、おそるおそる、館に入った。
そして、貪るように、食べた。
ザリーンは、上座から、それを、静かに眺めていた。
満足げに、微笑みながら。
「ウフフフ……。よく、食べる」
その言葉が、いけなかった。
食事を終えた村人たちの間に、ひとつの噂が、広がった。
「……なぜ、こんなに、食わせる?」
「決まっている。太らせて……何かに、使う気だ」
「儀式の、生贄か……!? それとも、人体、実験……!?」
温かい晩餐は、恐怖の宴に、変わっていた。
厨房の隅で、それを聞いていたローズリンドは、思わず、声を荒げそうになった。
(違う……! この人は、ただ……!)
だが、言えなかった。
言えば、正体が、ばれてしまう。
彼女は、拳を握り、俯いた。
その夜、彼女は、初めて、報告書の筆が、進まなかった。
「罪状:なし」
その一行が、どうしても、書けなかったのだ。




