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色とりどりの煙
真夜中の、地下工房。
ローズリンドは、扉の隙間から、それを見た。
公爵ザリーンが、巨大な釜の前に立ち、怪しげな液体を、次々と混ぜ合わせている。
ボコボコと、泡が立つ。
「ウフフフ……もう少しだ……」
紫の煙。
赤い火花。
そして──ボンッ、と、緑色の煙が、部屋いっぱいに広がった。
ローズリンドは、口を押さえた。
(黒魔術……! 悪魔でも、呼び出す気なの……!?)
彼女は、確信した。これこそ、決定的な証拠だ、と。
翌朝、彼女は、意を決して問いただした。
「閣下。昨夜の、あの煙は……一体、何を?」
ザリーンは、きょとんとした。
そして、棚から、小さな袋を取り出す。
「ああ、あれか。……肥料だ」
「え?」
「痩せた土でも、作物が育つように、な。あとは、これ」
彼が差し出したのは、傷薬の瓶。
「昨夜のは、その調合だ。煙は……まあ、失敗の副産物だが。ウフフフ」
ローズリンドは、言葉を失った。
悪魔を呼ぶ煙だと思ったものは──痩せた大地と、傷ついた民のための、ものだった。
「試すか?」
ザリーンは、傷薬を、彼女の手に握らせた。
その手は、驚くほど、あたたかかった。
ローズリンドは、その温もりから、慌てて手を引いた。
──認めては、いけない。
まだ、認めるわけには、いかないのだ。




