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プール際の攻防

上上手取は、夕焼けの見えるプール が舞台で『水たまり』が出てくる楽しい話を3500文字以内で。持ち時間は一時間。

 キャッキャッキャッキャと女の子たちがはしゃぐ声が聞こえてくる。


 けだるい身体でそちらを見やると水着少女が三名ほど、庭に膨らませたビニールプールではしゃいでいた。……そのプール、俺が膨らませたんですけどね! しかも空気を入れる道具がなかったから(じか)だよ(じか)! おかげで俺は生も根も使い果たし畳の上でぐったりと横たわっている。


 久しぶりに田舎に帰ってきてゆっくりできると思ったら子供のおもりとはついてない。今庭にいるのはあんまり顔を合わせたことのない従姉妹とその友達。今年で小学六年生だったか? なんというかこうやってはしゃいでる様子を見ているとまだまだガキだなーって思う。


「おまえらー。スイカは食うかー?」


 その呼びかけに一斉に返ってくる「食べるー」との返事。俺はそれを聞いて台所へと向かうのであった。


――――――――


「ばいばい~」

「それじゃあまた明日ね~」

「おじさんもさよなら~」


 そう言って従姉妹の友達たちは帰っていった。誰がおじさんだ。まだ24だよ!


「それじゃぁプールを独り占めだ!」


 見送りを済ませた後我が従姉妹様は庭に向かって駈け出した。ドボーンという音が上がってあたりに水が巻き散らかされる。


「おいおい、せめて水着の上に着たTシャツは脱ごうぜ」

「いいじゃんどうせこの後お風呂にはいるんだし。些細な事は気にしない」


 そうは言っても濡れた服で家の中を歩き回られたんじゃお守りをしていた俺の責任にされちまうんだよ。っとは言ってもすでに家の中は甚大な被害が出ているわけだが。今更ゴタゴタ言うのも野暮ってものかなぁ。


「はいはい、わかったわかった。続きは風呂でな。じゃぁプールをしまうからそこから出ろ」

「ぶーぶー。もうちょっとくらいいいじゃない。強制立ち退きにはだんごコーギの声を上げさせていただきます!」


 どこで覚えたのかしらないがこの辺では聞き慣れない言葉を使ってきた。


「ならば強制退去を実行するまでよ」


 そう言って俺はビニールプールの縁を持ち上げ中の水を外へ流しだそうとする。


「ぐぬぬ、われわれはこっかけんりょくには屈しないぞ」

「ぐわぁ!」


 どこにしまってあったのか従姉妹は水鉄砲で反撃してきた。突然のことで俺は持ち上げていたプールの縁を取り落としてしまう。従姉妹はバランスを失ったプールの中で悲鳴を上げながら転がり落ちた。そして俺は逆流し跳ね上がった水を浴びてずぶ濡れになってしまう。


「ほう……よくもやってくれたな……」

「あわわ。ち、ちがうだよにーちゃ! これはふこうな事故というやつで……」

「問答無用!」


 俺はプールの底に残っていた水をすくい上げると従姉妹に向かって投げつける。初めはなすがままだった従姉妹も次第に反撃を試みるがなにせ手のひらの大きさが違う。物量に物を言わせた攻撃に従姉妹は瞬く間に白旗を上げた。


「ううう、にーちゃがいじめる」

「あほか。作業の邪魔をするからそうなる。ほら、とっととプールから出ろ」


 気がつけばあたりは夕焼け色に染まり沈みゆく夕日が庭から眺めることができた。


「ふふふ、すっかり仲がいいわね。ついでに一緒にお風呂に入っちゃいなさい」


 いつの間にか帰ってきていたばあちゃんが俺たちを見ながらそんなことを言う。

 はーいと元気よく風呂場へと向かう従姉妹とは裏腹に俺は「小6女子と一緒に風呂とか……やばくね?」とひとりごちるのだった。



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