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無自覚たらし

上上手取は、夕焼けの見えるプール が舞台で『涙』が出てくるバトルする話を2000文字以内で書いてみましょう。持ち時間は一時間。

 パチリ、パチリと盤上を石が埋めてゆく。白と黒の二色のそれは互いの陣地を食い破りながら各々の勢力を広げようとしている。


 パチリ。とうとう最期の空きマスに白石が並べられた。それによって反転する黒の石。


「フッこれで俺の勝ちだな」

「まだ数えてみなきゃわかんねーよ」


 俺は悪態をつきながら黒の石の数を数え始めた。


――――――――


 俺たちはオセロをしている。しかもなぜか誰もいないプール際で。もう日は沈み始め夕焼けになろうと言う頃だ。


 実はこっそりと忍び込んでいるため見回りの教員に見つかるとやばいのだが俺たちはのんびりとゲームなどとしている。

 最初のうちなどは水の冷たさを楽しんだものだが男が二人という状況になんだか虚しくなってこうやってオセロをしているというわけだ。なんで今日に限ってプール脇をカップルが10件以上も通るんだ?


 そうやさぐれていると今日の共犯者こと俺の悪友が面白い提案をしてきた。


「なぁ、最後の勝負になにか賭けないか?」


 ふーん、こいついままで勝ちが続いているせいで負けることはないと踏んで大胆な提案をしてきたな。おもしろい、その提案乗ってやる。いつまでも俺が弱いままだと思うなよ。


「じゃぁあ負けた方は今惚れている相手を答えること。それじゃあゲームスタート」


 ちょっ! それちょっとまった! なしなし! 賭けは無効! キャンセルで!


「だーめ。俺、お前の本命が誰か知りたかったんだよな~」


 ニヤニヤと笑いながら意地悪く微笑む目の前の男。こいつこうなると賄賂では懐柔できないんだよなあ。う、う、う。仕方がないここはこの勝負に勝つしかない! 俺は気合を入れなおすと盤面に向き合った。


―――――――――


 パチリ、パチリと盤面を石が埋めていく。


「なぁ、お前オセロあんまりやったことないだろう?」

「なんだ、今更。まぁそのとおりなんだが」

「実はこのゲーム四隅を取ると圧倒的に有利になるの知ってたか」

「おまえなんでそれを俺が隅取れそうなときにいうんだよ。ブラフか? ブラフで言ってんのか?」

「いやいや、これは強者の余裕というものだよ」


 なんかムカついたので隅は放置した。結果は……


「ま、負けた……」

「だから隅を取れって言ったのに」

「ばかやろーあんな場面で出されたアドバイスに素直に従えるかってんだ」


 最後の勝負も負けてしまった。これで全敗だ。情けなくって涙が出そう。


「で、もちろん約束は覚えているだろうな」

「ん?惚れてる相手だったな。今は特にいないぞ」

「そんな言い訳で言い逃れができると思っているのか? お前の周りのメンツをよくよく思い出してから答えてくれ」


 俺の周りのメンツねぇ。

 ん~まず毎朝起こしに来てくれる幼なじみだろ、んで何かとお世話になってる巨乳の生徒会長さん。それから同学年のちょっと小うるさい風紀委員のあいつに、俺が拾った怪我をしたフェレットが世話になってるちょっと小柄な飼育委員の三年生の先輩。図書館でよく顔を合わす長髪の文系美少女にクラスメイトの何かと突っかかってくる金髪の留学生。頑張り過ぎでちょっとハラハラさせられる陸上部の後輩に次の大会で書く文字を一緒に考えてる書道部のポニテ娘に……


「ちょっとまて、いつの間にお前はハーレム要員をそんなに増やしたんだ? 俺の知らない奴が三人はいたんだが」

「おいおい、ハーレムなんて失礼だな。俺は特定の誰かをそういう目で見たことはないぞ? いやまぁそりゃちょっとはそういうハプニングはあったが全員と関係を持つだなんてそんなことできるわけがないじゃないか。一体何股になるんだ?」


 とりあえず悪友の戯言は置いておいて。ん~そういえば最近彼女たちから一緒に出かけないかとか二人っきりで何かしないかとかそういうたぐいのアプローチが多くなってきたような気がするなぁ。……うん、多分気のせいだろう。俺の自意識過剰ってやつだな!


「うわーん、天然無自覚ハーレム男はみんなそうゆうことを言ってロンリーボーイの心をえぐっていくんだ。てめえなんて大っ嫌いだよバカヤロー」


 そういって悪友は涙を流しながらプールから飛び出していった。


 ……俺、なんかあいつの気に障ること言ったか?



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