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由衣と祐也  作者: 雪月花
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優良ダンナ様と下等奥様

 祐也と私の夏休みの部活のスケジュールを照らし合わせて、まずは英会話の日程を組んだ。その後、祐也の古文たたき直し勉強会の予定を入れた。ちなみに、祐也が古文をやっている横で、私は理数系の科目を勉強することにした。わからないところを祐也にすぐ聞けるしね。


 しかし、こうしてみると、夏休みの間もけっこう祐也と一緒だなぁ。不思議。1年前は話もしなかったのに。ううん、1年どころじゃない。もう何年も、話なんかしてなかった。祐也と過ごすのは楽しい。そう思ったら、なんだか、その期間がもったいなかったような気分になってしまった。



 夏休みになって、一番びっくりしたこと。それは祐也が家事ができることだった。祐也のうちで一緒に勉強していた時のこと。お昼近くなって、お腹が空いてきたね、なんて話をしていたら、祐也はすっくと立ち上がって、


 「チャーハンでいいか?」


と私に聞いた。ん? どういうこと?


 「チャーハンなら作るけど……」

 「えっ?! 祐也が作るの?」

 「え、まずいか?」

 「いや、そんなことない。……お願いします」


 そう言って、まあ手伝うか、と横に立ったら、


 「いいよ、由衣は座ってて」


というではないですか。

 なんとなく興味が湧いて、


 「見てていい?」


とお願いっぽく言ってみたら、


 「う……、ああ、いいよ」


と、ちょっと詰まりながらOKしてくれた。

 いやー、びっくり。ネギやら人参やら、冷蔵庫の野菜を手際よくきざんで、手慣れた様子で炒めていく姿に感動してしまった。


「すごい! 祐也! もう、びっくり!」


 ほめまくる私に、ちょっと引き気味ではあるものの、嬉しそうな顔の祐也。

 味も良かったんだよ、これが。私はさらにほめちぎった。


 「祐也にこんな才があるなんて! すごいね~」

 「もういいよ。そんなにほめてくれなくても。必要に迫られて作るようになっただけだから」

 「ああ、おば様、忙しいもんね」

 「うん。前は佐和さんが来てくれてたんだけど、去年、お孫さんが生まれたんで、来てもらえなくなっちゃったしな」


 佐和さんというのは、祐也の小さい頃からずっと通いで家事をしてくれていたお手伝いさんだ。私も小さい頃可愛がってもらったっけ。佐和さんのお孫さんかぁ。会ってみたいなぁ。かわいいだろうなぁ。


 でも、食べるものがないならうちに来ればよかったのに……って思って、ハッとした。

 小学生くらいまでは、佐和さんが来られないときは、祐也もお兄さんの一樹さんもうちに来ていたのだ。でも、一樹さんが中学・高校と大きくなって来なくなり、そのうち祐也もだんだん来なくなった。

 祐也はもう何年もうちに来てはいなかったんだ。それなのに、いきなり「お腹すいたので、なんか食べさせてください」とは言えないよね。


 「佐和さんが辞めることが決まってから、ちょこちょこと簡単な料理を仕込んでくれたんだよ。困らないようにって。作り方を書いたノートもくれて、最初はそれを見ながら作ってたんだ。今でも時々見ながら作ってる」

 「うわ~、佐和さん、すごい。だから美味しいんだ。でも、よく素直に習ったね。だって、出前とったりもできるし、コンビニに行けば食べるものが買えるでしょ?」

 「うーん、なんていうか、危機感?」

 「は?」

 「俺にとって、佐和さんの味は、なんていうのかな、家庭の味……」

 「オフクロの味?」

 「あ、そんな感じ。それがなくなっちゃうのはまずいんじゃないかな、という気がしてさ」

 「祐也が引き継ごうと」

 「うん、そう。それに面白かったのもある」

 「ああ、料理は面白いかもね」

 「そうなんだよ。作り方を見て、きっちり作るとちゃんとできるだろ? なんか、理科の実験に似てるなぁと思ってさ」

 「は? ……ああ、まぁそうかな」


 男の子って面白いな。祐也と話していてそう思った。

 友だちで料理が上手な女の子がいるけど、彼女は「やっぱ女子力上げるのには料理は必須でしょ」と言ってたっけ。

 え? 私? 私は料理にかぎらず、お裁縫とか、そういういわゆる女子力?が必要なものはまるでだめなんだよね。ていうか、うちにはお母さんがいつもいて、私がやらなくても大丈夫だし、お母さんもあまりうるさく言わないので、そのままになっているって感じ。お母さんいわく、「必要になったらいやでもやるからなんとかなるわよ」とのこと。本当かなぁ。

 あ、部屋のそうじくらいはしますよ、そりゃ。


 ともかく、私のできないことをやれるっていうのは素直にスゴイと思うよ。


 「祐也はいいダンナさんになりそうだね!」


というと、祐也はチャーハンを吹き出しそうになって、かろうじてとどまったもののむせていた。


 「なんだそりゃ」

 「や、今は夫婦とも働きの家庭が多いじゃない? だから、男女ともに家事は出来た方がいいんだろうから、祐也みたいな人は優良ダンナ様じゃないかと。あれ、それでいくと、私なんか、ぜんぜんできないから、不良?下等?奥様になっちゃうかなぁ」

 「由衣は掃除と洗濯ができればいいんじゃないか?」

 「そっか。二人とも全部できなくても、お互いできることを持ち寄ればいいのか。じゃ、私は祐也みたいに料理の上手な人をみつければいいんだね!」

 「……」


 にっこり笑ってそう言うと、なんだか微妙な顔をした祐也がこちらを見ていた。あ、やっぱり料理もできなきゃダメ?



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