第5話 探索
地図を時折開きつつ、下流を目指す。地図にも街らしき絵があるからだ。急流を迂回し、時には森へと迂回しながら、周囲を警戒しつつ歩を進めた。徒歩で三時間程度は動いただろうか。
「下流へ移動するだけでも結構体力持っていかれるな。しかも、下流になるにつれて川の勢いが増している気がする。頑張れ、俺」
息が上がるがそれは運動不足が原因だ。川沿いに沿って下っているのでそろそろ何かが見える頃だろうと思った時にそれは見えた。
「街だ! よし!」
しかも、都会的じゃないか。どことなく現代の世界と似ている街並みだ。川を下るとコンクリートで作られた擁壁が両側へ見えた。
「ここは人の手が入っている? よく河川敷で見る光景だ。ここは日本か?」
念のため、武器を鞘に収めつつも、短剣は何時でも出せるように警戒をして行動することにした。用心に越したことは無いのだ。万が一ということも充分に考えられるし。川沿いから抜け出し、アスファルトで出来た道路を見る。道路には模様があるが読めない。標識もあるがよく分からないモンスターっぽい何かが描かれている。
街へと向かいながら歩くと街並みが見えてきた。民家がある。日本と変わらない。道路はあるけれど、車は走っていない。住宅街を抜け、ビル群が並ぶ中心部へと辿り着いた。ここまで誰一人とも遭遇していない。呼び止められることも、視線すらも感じない。ここまで来ると不気味だ。
「おいおい、ゾンビ映画とかみたいな展開は勘弁してくれよな」
こういう時、大声は出さないこと。慌てないこと。映画で学んだことだ。取り敢えず、スーパーマーケットらしき建物があったので入ってみる。中には空っぽだ。何も無い。近くにあったコンビニらしき建物にも入ってみる。中には物が散乱していた。食料品も無い。荒らされた形跡はあるが、埃を被っているので随分前に荒らされたのだと理解した。
「何がどうなっているんだよ。このビルの中にはどうだろうか」
取り敢えず入って見る。エスカレーターを登ろうとした瞬間に動き始めた。
「え?! 電気があるってことか?!」
動揺しながらエスカレーターへ乗るなんて生まれて初めてだ。色んな意味で混乱している。ここがどこで、この街は何で誰もいないのか知りたいことが沢山あるが、誰もいないし誰も答えてくれない。進むしかない。フロアマップと階層案内らしき掲示を見るが文字が何語で書かれているのか全く分からない。見た目は日本っぽいのに、中身は別世界そのものだ。
「とりあえず、上層階へ向かうか見晴らしが良ければ何か見つかるかも知れないしね」
エレベーターの仕組みは現実世界と変わらないようだ。上の指示ボタンを押し、間もなくベルの音が鳴り、エレベーターのドアが開く。中にはもちろん誰もいない。中に入り、数字らしき模様が描かれているが一番上だろうか。模様のボタンを押し、エレベーターの電光掲示板が上へ移動する案内が文字で流れたがやはり読めない。ふわりと浮く感覚と同時に上昇していく。
ボタンの数を見るに四十階のフロアがあることを知った。かなりの高層ビルだ。外側でも大きく見えたが中もしっかり作られている。ドアが開き、上層階のフロアへ出た。物が散乱していた。電気は点灯していたので暗くはない。剣を抜き周囲を警戒する。
「ここはオフィスフロアだったのか? ここも埃が被っているな」
今気付いたが、空調はしっかり機能しているようだ。天井にある空調設備がウンウンと鳴りながら通風していた。誰が何のためにどうしてと疑問は尽きないが、厚く積もった埃を見るにここのフロアや街全体にも随分人が出入りした形跡は無いと見た。フロアはかなり広い。
この別世界にも大きい企業があったのだろうと思わせる内装だった。ほとんど廃墟のようになっているが、通電しているおかげで屋内でも昼間のように明るい。
「何か手がかりがあればいいんだけどな」
この世界を知る手がかりがあれば、多少は過ごしやすくなるものだけど。俺はガラス窓の付近まで近づいた。街が不自然に街がとして維持しているようにも見えた。見渡す限り、森と山脈だけだ。微かに遠くに何かが見えるが目視では限界がある。なので、地図を開いた。
「ああ、ここから東に都市があるのか。しかも、この地図の絵だとこの街よりも規模が大きそうだな。だけど、その東の都市まで行くのに食料持つかなぁ。これは調達が必要だ」
現時点では武装については問題無いと思う。だけど、肝心な食料と水の確保は必須だ。この街で何か調達出来るものはしておかないと飢え死にしてしまう。必要とあれば狩猟も積極的にしていくことになるだろうし、わがままを言っている場合ではないと腹を括った。
「よし! 一先ずは、このビルを片っ端から探索だ」




