第4話 街へ
しばらく読んで見たが、文字はさっぱりよく分からない。確実に別世界の言葉だ。俺の頭じゃどうにも理解出来ない。どこかで文字の練習をする必要があるんだよなぁ。別世界には俺しかいないのだろうか? いや、俺だけというのは傲慢だな。多くの人間がこちらに来たと想定して動くのがベストだろう。現実世界に戻る方法は現時点では皆無だ。
そもそも、艶島から見せてもらった動画には世界各地が滅茶苦茶になっているということは理解出来ている。つまり、俺がいた日本も例外では無い。もし仮に国があったとしても滅茶苦茶になっていることは間違い無いと簡単に理解できる。あの状況で五体満足を維持していられた自分自身を幸運だと思うべきだ。
何冊か本を読んで見るがどれも言語はよくわからなかった。絵や図に関してもさっぱりだ。何を目的に描かれているのか、理解出来ない。挿絵というよりかは何かの模様にも見える。
「うーん、よくわからんな。お、肉が焼けたか」
良い感じに焦げて美味しそうだ。別の肉を石焼きでジュージューと鳴らして焼く。端から見たら倒した相手を食べる人間なんてクラスメイトから見たらドン引き事案だ。しかも、家畜でもなければ見知らぬ動物。それに知的生命体らしくもある。血は赤だった。グロい内容だけど、生き残るためには仕方が無いと割り切っている。自炊は現実世界でもよくしていたので得意な方だ。
だから、料理は苦ではない。熱消毒した短剣で、丁寧に肉を切り分ける。中にしっかりと熱が入っているようで赤みはなく、肉汁がじわりと溢れていた。
「いただきます」
口に肉を運ぶ。味はほんのりと塩気があった。
「お、美味いな。味付け無しでもイケる、やつじゃんか。ラッキー」
肉塊はあっと言う間に完食した。まだ、おかわりはいくらでもあるが、今後の備蓄として焼いて保存することにした。お腹はいっぱいだ。焚き火に木を焼べながら火を見つめた。周囲はすっかりと夜だ。
虫の音が聞こえる。鈴虫ともコオロギとも異なる不思議な音色だ。空を見上げると満天の星々が煌めいていた。星を眺めて思ったのは、やはりここは別世界だということだ。現実世界の夜に見えた夏の大三角形が見えないからだ。少なくとも今いる位置が悪いという可能性も充分にある。
月が一つ大きく輝いている。月は現実世界と何も変わらない様にも見えるが、実際は違うのかも知れない。袋を探り、毛布を取り出して身を包んだ。寒くないけど、念のため温かくすることに集中した。夜になると少しさみしくなる。家族のことを思い出すからだ。忘れることはないけれど、夜になると恋しくなるのはしょうがないと思っている。医師からは精神的なことは時間がかなり掛かると言われた。それもそうだと家族を記憶の中で思い出しながら、ゆっくりと身を預けた。
頬を草木の青い香りが通り過ぎたのを感じ目が覚めた。夢を見ることも無く熟睡したようだ。焚き火には火が少し残っていたので、残りの木をくべた。川が流れる音と森が揺れて葉の擦れる音が木霊していた。温かい風が全身を通り抜ける。
「今日は移動を開始するか。この場所に居続けても意味無いし、食料も様子を見る必要があるし地図もある。街へ行ってみるとしよう」
装備を整えた。戦闘で使う剣は青い色をした剣をメイン武器に決めて、衣類は自分に合うサイズから選び着替えた。これで、この別世界でも変に見られることは無いと思いたい。靴は今のスニーカーで充分だと思ったので保留。胴体には先日から着用をしている防弾チョッキのような丈夫な素材生地で出来たのを使用。
他にもアクセサリーがあったのでファッションとして適当につけた。明らかな宝石類は邪魔なので袋へ収納。テントを持っていくか悩んだけど、諦めた。理由は一人で組み立てられそうに無いと思ったからだ。ここで放棄しても街で宝石を売り、新しいテントを買うというのも手だろう。現時点ではテントはいらないという判断をした。装備の確認をし直して下流へ向けて歩き始めた。
「地図の通り下流へ進めば必ず街へ辿りつける筈だ」




