第3話 読書
獣の刃が俺を捉える。ギリギリで回避する。制服が少し破けたが気にしない。上着のボタンを外した。次の刃が迫る。剣で受け流そうとしても、獣が持つ力は強くどうしても今の俺では歯が立ちそうにもない。正攻法では絶対負ける。だから、目に向けて心臓を打つけた。視覚を奪われた獣へ更に上着を覆い、完全に視覚を封じた上で制服の上から脳天へ剣を突き立てた。
「はぁ……はぁ、動かないな。これで勝った……帰宅部にはきちぃぜ」
剣を抜き上着を取ると獣の死体があった。残りは少し大きいテントだ。質素なテントだが、しっかりと防風と中が見えないようになっている。剣を構えながら、テントを捲ると中には誰もいなく、物資がいくつか入っていた。
「敵がいなくて良かった。さて、物資で使えそうなものを見てみるか。これは何だ? 地図か? それに人が着るような衣類まである。この衣類はこの世界の住人の物か」
色々物色をした。服や宝石に男女問わずの衣類が無造作にしかも泥付で血まで付いているのが木箱の中には入っていた。どこかの住人を襲って奪ったのだろうか。地図が手に入ったのはとても助かった。
木箱の横に立てかけてあったからだ。丁寧に現在位置らしきところの川沿いにマルでマークされていた。そして、別の木箱の中には本や武器が入っていた。あとはよく分からないアクセサリーの類いが入っていた。何か使えそうな物は無いかと思い奥を探ると本が出て来た。
「本? なんだこれ? 外国語か? 英語? いや、フランス語? いや、何語?」
よくわらない、見たこともない文字がそこには書かれた。その本は厚く表紙もしっかりしている。本があるということはこの世界にも情報があるということだ。人間がいる痕跡もある。考えながら装備を固める。木箱に入っていた装備で不思議な袋があった。
見た目は小さいのに、中へ収納できる量が多いということ。不思議ポケットとのうな感覚だ。とりあえず、その袋へ全ての物資を詰め込んだ。これで、手元にあるのは、新しい剣と鎧まではいかないが胸回りを守る防具を着用した。
「鎧というよりも防弾チョッキを加工したようなものだな。これ? この世界の技術で作ったのか。凄ぇな。ということは文明のレベルは高いのか」
俺が今いる世界は恐らく、現実世界での実験の結果でその別次元の世界へと移動してしまったと考えている。消去法で言うとそれしか思いつかない。単体で移動出来たのか、世界中の皆が移動出来たのかは分からない。
だが、空気は吸えるということは、ここは現実世界と基本は同じということだ。しかし、現実世界には獣型の人なんて霊長類しか思いつかないが、さっき戦闘したのは犬のような見た目だった。実際に犬かどうかは正直わからない。ただ、似ている別の生物という可能性も充分にあるからだ。
腹が減ったので、解体した肉を調理する。幸いにも焚き火の横には乾いた木が積まれていたので野営するつもりだったのだろう。この火をありがたく使わせて貰うことにした。調理器具のようなものはなかったので、未使用らしき剣を一応、火で炙り消毒をしてから肉塊へさし炙り始める。味付けは何がいいかと物資を漁るが調味料らしき物は見当たらない。つまり、獣は調味料には関心が無かっただけなのかもしれないと思う。
「焼き上がるまでしばらく時間が掛かるな。ここは危険かも知れないがここをキャンプ地としよう。さて、倒した獣を処理せねばな」
三匹を解体し、残りは物資の中にスコップらしき形をした金属製のものがあったので食べないところは離れた場所の地中深く埋めた。川で汚れを落とした。少し冷たいが寒くはない。
ちょうど良い温度だ。肉の加減を見に行くと良い感じに焼けていた。だが、分厚い塊なので、もう少し焼くことにした。ジビエはしっかり焼くことを動画で学んでいるからだ。焚き火の傍で火の温もりを感じながら、読書を始めることにした。やることがないからだ。
「文字は読めないけど、絵や図はなんとなくだが理解出来そうだしね」




