第47話 気掛かり
そして、窓の景色が動き始めた。揺れすらもない。凄い技術だと思う。そのまま、移動し続けて俺たちは今後のことを皆と話合った。まず、残りの魔獣の素材の買取だ。これで当面の資金面を確保すること。そして、魔道具と魔導書についての情報集め、調味料や食材の購入だ。
俺としては、学習用の追加で品質が良い魔道具を揃えたいと考えていることを伝え、この地図の外側へでも役に立ちそうな品を全員で確認して購入していく。または各々が購入することで統一した。白錦やエニが所有している武器や武装、道具も便利だし強力だ。
それらに合わせて人族独自で開発した品を手に入れれば良いと俺は考えている。神話の道具だって万能ではないと思うからだ。神話の道具やらが現在まで普及していないということは、つまりその製法なり技術が廃れたか失われたという線が濃厚だ。
俺たちの意識はもう既に地図の外側へと向かっている。道中、気のコントロールをする訓練も常に行っている。初日ほど疲労困憊にはならなかったが、ぐったりとしてしまうのはまだ慣れない。白錦が言うには、それは気脈が巡って活発化している証拠だという。
普段、使用されていない経路を動かすにはそれなりの労力を要するということらしい。ルーも常にコントロールし、会話しながらも少し疲れている様子だ。互いにまだ、収納術というものは顕現出来ていない。そう簡単にはいかないものだと改めて思った。
「主よ、ギルド長と話していた中で地図の外側へ人族が調査に向かったという話だが」
「どうしたの、急に」
「いや、余も知って範囲で共有しておこうと思ってな。ふと思い出したついでさ」
「いいよ、どんな話」
「余らは人族がかつて何度か、地図の外側へ挑戦したことを目にしている。オブライアンの話では、殆どが帰還しなかったという話だったが、それは嘘だ」
「え? どういう意味?」
「正確には、多くは帰還している。だが、皆記憶が無いのだ」
「記憶が無い?」
「余も正確なことまではわからない。余が見たのは大昔の話のため、最近の話ではそうなのかも知れない。オブライアンが何時の時代のいつの調査隊なのかを教えないということは、全てを総合して帰還者は少ないという事実を伝えたのだろう」
「そうか、記憶が無いか。そういう現象が起きるか、そういう魔獣がいる前提で行動する必要があるね」
「そうです。余らは皆、状態異常に対する完全耐性または無効を装備を着用しています。それを突破することについて簡単では無い筈ですが、余らと同格の神獣ですら地図の先へ行ったことが無いを見るにそれ以上の何かがいることを前提に行動するべきかと」
「エニは地図の外側について知りたいと思ったり行動しようとしなかったの?」
「考えたこともありませんでした。余らはあの日の大厄災で生まれた存在の一部、この地より外がなど意識もしたこもありませんでした」
「その大厄災の生まれたという場所はこの辺りの大陸で起きた話なのかな」
「余も分かりかねます。この地は恐らく大陸ではなく、大陸のほんの一部でしかないのでしょう。大厄災というのは、地図の外側に爆心地があると思われます。あの日、余は見ました。その時の文明を全て破滅させ、何かが起きたことを。オブライアンとの話し合いの中で、巡礼地方の忌み地と呼ばれる都市について言及があったかと思いますが、あれらも大厄災の痕跡で間違いないです」
「うむ、エニの話、我も白錦家でも似たような話を聞いたであるな」
「そういうこと。ルーや白錦は忌み地を鎮めるために贄とされたのでしょう」
「だから、二人とも都市にいたのか」
「はい、あの遺跡という都市はこの世界では異質な物質と言ってよいでしょう」
「確かに異質だね。変な存在がいたし」
「亡霊たちのことですね」
「エニはそう見えているの?」
「はい、正確には触れてはいけない人と呼び、忌み人とも呼ばれる時代もありました」
「忌み人か、確かに白錦やルーも危険って言ってたしね」
「余もそうです。力でどうこうとかの存在ではないからです。余はもしかすると地図の外側にはそういう存在が多数いるのではと気掛かりです」




