第43話 登録へ
「良い香り」
「うむ、香りだけで美味と感じる」
「二人とも、エニがお風呂から出るまで我慢だよ。今日は新しい仲間が加入したからね」
「エニ姉ちゃんとも色々お話聞けるね」
「そうだね、ルー。白錦も今日は本当にお疲れさま」
「いや、これくらい簡単な使いである」
「本当にありがとう。これから地図の先へ進むために準備と力を蓄えなくちゃいけない。きっと、この世界はとても広いと思うんだ」
「我もそう思う。我が過ごした世界が狭き世界であることは承知している」
「私もあの街から出たこと無いから新鮮だよ」
「俺もそうだ。これからは四人で大冒険だ」
「何の話をしているのか」
半裸の美人が出て来た。
「エニ、馬鹿、着替えを用意していただろう、今日はそれを着てくれ。その衣類は洗濯をしてある」
「これを余が」
「そうだ。そのままの姿だと変態だと思われるぞ」
「う、うむ、わかりました」
そそくさと脱衣所で着替え始めた。
「ルー、エニがなんだか着替えに手こずっているみたいだから手助けしてあげて」
「はーい」
ルーが脱衣所に入り、何やら会話が聞こえる。人族の服は難しいとか、そういう話が聞こえたのは言うまでも無い。エニが着替えて出てきた。普通の服なんだが、サイズはギリギリというかかなりキツいだろう、というのが第一印象だ。胸や腰あたりが、明らかに生地が張っているからだ。明日はエニの衣類やら生活道具も一式購入する必要があるなと思い、心にメモをした。
「じゃ、皆揃ったね。それじゃいただきます」
『いただきます』
四人で食卓を囲んだ。美味い美味いと皆が言う。エニが、人族の料理はこんなに美味なのかと喜んでいる。白錦やルーもむしゃむしゃ食べている。俺もむしゃむしゃ食べた。多分、全部の料理が高級品なんだろう。
知らない肉の名前ばかりだったし、それに味付けが別格だ。昨日の料理と味付けがこうも違うのか思い、この街のホテルであるということはこの街で同じとはいかなくても似たような調味料はいくつか購入しておきたい。
「主よ、この肉はなんと言うのだ? 凄く美味いぞ」
「それは、えーっと、あった。ハイグリフォンの肉らしいぞ」
「ハイグリフォン? 知らぬ名だな。新しい種か。うむ、これの甘辛いのはなんだ?」
「それは、ドワーフウサギのシチューだね」
「これがドワーフウサギか?」
「エニが知っている獣なのか?」
「そうです。余が知っているドワーフウサギはもっと肉質が硬い印象だったが、このウサギは溶けるような歯ごたえというか口に入れた瞬間、溶けてしまう。人族は凄いな」
エニが満面に笑みで食事を楽しんでいた。ルーや白錦も同様だ。皆食事をするときはとても幸せそうだ。俺も食事をしつつ、果実水をコップに注いで飲んだ。味はオレンジジュースだ。しかも冷えて美味い。炭酸があればより美味いと感じることができるだろうなと考えたりした。
食事を楽しみながら、会話が飛び交う。なんだか、仲間というよりか家族に近い食卓だと胸と奥が温かい気持ちになる。食事を終え、片付けをし、疲れたので早めに寝ることにした。白錦と同様にエニも睡眠が要らない体質らしく、二人で静かに会話をしていた。寝ずの番というわけだ。俺とルーはベッドでぐっすりと爆睡した。
朝、目覚めて時計を見ると午前九時の針を指している。
「おはようみんな」
皆先に起きていた。軽い食事を注文したりしていたようで、テーブルには朝ご飯が用意されていた。
「ありがとう。注文してくれたんだね」
「うむ、今日も忙しくなると思い注文した次第」
「ありがとう白錦」
朝ご飯を食べ終え、片付けを終えて今日の打ち合わせを始める。
「さて、今日はエニを冒険者ギルドで登録だ。その後に調味料や生活道具一式を簡単だが購入する予定だ」
「主よ、生活道具とはどんな物なのでしょうか」
「そうだね、皆の意見を聴きながら地図の先へ行くために必要な道具を集めるという具合かな。別に特定の何かを探しているわけではないんだ。例えば、油や火を起こす魔道具、調理用の器具やら必要な物は沢山ある。地図の果てがどういう世界か皆が知らない以上はその先へ進むために、薬も必要だと思うんだ」
「そうですね。確かに必要ですね。薬ならば余の能力でいくらか精製可能です」
「なるほど、そしたら、ルーが採集した薬草とかあるから、それを薬として精製出来るかどうかも実験が必要だね」
「わかりました」
「あと、エニの一応の武装も整えておきたいし」
「うむ、エニならば自身で武装とかは保有しておらぬのか」
「余の武装か。ちょっと待て」
エニが空間から女性用の鎧を取り出した。しかも、ただの鎧じゃない漆黒の黒色の全身鎧だ。ただならぬ気配を装備から感じ取れるのは気のせいだろうか。
「あの、エニさん、これは一体……」
「これは、余の人型である際の武装になる。もう随分、使用していないけどね」
「漆黒の全身鎧は流石に目立つな」
「そ、そうか。なら、こうすればどうか」
全身鎧が、生地で出来たコートとスーツみたいな姿になった。
「これって? コートとスーツ?」
「そうだ。確か、そういう名前だと思います」
スーツやコートがあるってことは、俺と同じ世界の人が広めたということか? でも、このコートやスーツって凄い魔力を感じる。溢れ出すことは無いけれど、オーラは半端ない。美人のエニが着用したらかなりの見栄えが良いことは間違い無い。他にも装備や武装やいくつか所有しているみたいで、日常生活での衣類のみは持っていないとのこと。本来は神獣の姿で行動するためということが理由らしい。納得の理由だ。
鎧は自在に変形出来るようだが、一応、人族の世界で生活するのであれば、部屋着くらいは何着かあっても良いと思う。もし万が一、襲撃された際には直ぐに装備をすればいいのだから。俺とルーは着替える必要があるが、白錦やエニは直ぐに戦闘出来る服装へ瞬時に着替えることができる。
瞬時に着替えるという訓練も追加で白錦へ相談し、俺とルーは特訓メニューに追加した。そういう特訓も互いに会話しながら知らない情報を共有して皆の力になれば、きっと良い方向へ繋がると俺は思った。
「それじゃ、冒険者ギルドに登録へ行きますか」




