第41話 力量不足
「鬼? いや、それは濃い魔力を秘めているね」
「そうなんだよ。エニの言う通り、普通の小都市で手に入る品物じゃない。かなり、良い買い物をした」
興味深そうにエニが質問を続ける。
「では、その首飾りは鬼神の装飾か」
「うん、鬼神斬首っていう首飾りだよ」
「その首飾りは古代の品だね。しかも、かなり古い」
「うん、しかも相当魔力を溜め込んでいるみたい」
「だろうね。今までの所有者は扱えなかったということだろうね。しかも、力で屈服させたというのはさすが」
「多分、この子たちが呼んだ結果だと私は思うの」
「その可能性が高いわね」
ルーとエニが真剣に話をしているのを見ていると、なんだか微笑ましくなって来る。
「さて、明日はエニを冒険者ギルドで登録しようと思う。これから活動するに当たって必要だしね」
「主よ、その冒険者ギルドというところで何を余はするのだ?」
「うん、ギルドカードっていうこれを発行してもらうんだよ。これがあれば、人族がいる世界は大体は回れるんじゃないかな」
「そうか。わかった」
「そうそう、エニに聞きたいことがあるんだけど」
「主の命であれば、何なりと」
「そんな仰々しい話じゃないよ。この世界の地図とか持ってないかなって」
「地図? そうですね、確かに持っていますが、古いですよ」
「いいよ、古くてもこの世界について知りたいんだ。ルーや白錦の知識も借りたい」
三人が快諾すると、エニが空間から大きな地図を取り出した。その地図をテーブルへ広げる。
「これが、世界地図か」
目にしたのは世界地図にしては恐らく大陸の一部しか記録が無い。エニに理由を聞いてみたが、地図から先の地へ行ったことが無いという。だが、エニはこの地図が世界地図だと認識しているとのこと。白錦の知識も合わせるとエニが持っている地図は原初の地形で、白錦の知識として知っている地形とは変化しているとのこと。ルーもわからないらしい。
「うーん、もしかして、この地図の外側にも人はいるのかな」
「主の考えの通り、その可能性は充分に考えられます。余も白錦、ルーもこの地図の範囲から出たことが無いためわからないだけとなります」
「エニのような、神獣同士で情報交換とかしないの?」
「いえ、他の神獣らもこの地図の外側のことは知らないようです。ですが、神獣らとは仲が良いわけでないため、正確なことはわかりません」
「白錦の家とかに、地図の外の世界について伝承とか伝聞とか聞いていないの?」
「主君よ、残念ながら聞いたことがありませぬ。エニ殿が出された地図の範囲でもこの一帯ぐらいの地形しか記憶としてないである」
白錦が指さし囲んだ範囲は広いが、俺が持っている地図より広いという範囲だ。エニは人族やら他の種族についてどんな文化と歴史があったのかを聞いたら、白錦がいた時代のことも認識していたようだ。それも悠久の時の話で当時は様々な剣豪がいたという。白錦が言うにはその剣豪の内の一人だという。道理で、剣の腕前が良いわけだ。エニに鬼族について聞いてみた。
エニが認識している範囲では、白錦がいた世界よりも古い種族で、かなり長命種と説明してくれた。今やエニも鬼神になったため、不老不死の存在になりつつあるのだという。なりつつということはまだ、完全な不死ではなく、身体が完成してから完全な不死へ移行し、不老自体は既に起きているらしい。
ルーの成長が止まるのかと聞いたが、それはルー次第とのこと。成長に意識を向ければ身体に魂が反応し成長はいつでも可能らしい。つまり、ルーは今の姿でいる理由は自分の意思だということだ。ルーにそのことを確認すると、本人は意識していかなったが、今の姿の方が動きやすいからこのままでいいとのこと。そういうものかと驚いた。
「エニ、賓客について教えてくれないか」
「はい、賓客とは別世界からこの今いる世界が招いた存在の総称のことです」
「それの賓客とはよく招かれる存在なのか?」
「いえ、その可能性は限りなくゼロであり、世界の意思によって選定されたのみだけの存在となります。それ以外の存在は、この世界のことを認識することすらありません」
「今まで、エニはどれだけの賓客と会ってきたんだ」
「余が生きていて遭遇したのは一人だけです」
「そいつの名は分かるか」
「いえ、その賓客は名を名乗りませんでした。ですが、絶大な力を持っていました。その者と対峙したのは大厄災が生誕したあの日に出会い、多くの混沌の中で異彩を放つ強烈な存在でした」
「そいつは今どうしている」
「わかりません。あの日以来、消息不明となっています。もし存命であったとしてもこの地にはいないでしょう」
この地というのは地図のことだ。つまり、地図の外側の世界か。
「それじゃ、俺たちは地図の外側に行く必要があるな」
「主君よ、地図の外側は完全に未知ですぞ」
「そういうもんだろう。白錦だって今の世界だって充分未知じゃないのか?」
「確かにそうである」
「そういうことだ。エニはどう思う?」
「余も知る世界より先の世界は知らない。本当の世界というのがどういう姿なのか、世界の意思とは何なのかは知りたいところ」
「俺もそう思う。ルーはどう思う?」
「私は危険だと思う。お兄ちゃんを守れるか自分の力量が不安かな」




