第39話 店主
「こちら報酬となります。クリムネア草の採取は銅貨三枚となります」
「ありがとうございます。俺たちは宿へ戻るつもりですが、よろしいでしょうか」
「はい、当ギルドから何かあればギルドカード経由で、ご連絡いたしますので」
「わかりました。ありがとうございます」
男性の職員へ一礼するとギルドを出た。流石に今日は疲れた。時間を確認するとまだ、午前十一時の時刻を針は指していた。まだ、午前中かよ。もう、一日分働いた気がする。
「お兄ちゃん、お疲れさま」
「いや、ルーこそお疲れさま。今日の薬草採取はルーがいなかったらこんなに直ぐに採集出来なかったよ。エニとの戦闘は大変だったけど、あれは事故みたいなもんだし。ルーもお疲れさまでした」
「えへへ。お兄ちゃん、今日はこのまま宿へ向かうの?」
「うん? そうだけど、ルーは何か行きたいところがあるの?」
「うん、お兄ちゃんが良ければだけど、昨日の続きがしたくて」
「ああ、商店街だね。まだ午前中だし、行ってみようか」
「わーい。お兄ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。ところで何を見たいの?」
「うーんとね、魔法の道具が見たいの」
「魔法? 魔道具じゃなくて?」
「そう、魔法」
「それじゃ、まず魔法を取り扱うお店があるのかを一緒に探してみようか」
「うん!」
ルーと一緒に商店街へと向かった。そういえば、昨日は魔法のお店には行ってなかったと思った。魔法か、魔道具という物がある時点で魔法はあるのか。そうだなと思う。魔導書もあったし、魔法を専門で取り扱う店があってもおかしくない筈だ。
「よし、商店街だ。さて、魔法のお店はどーこだ」
俺は文字をいくらかは習得したので、看板と商品名ぐらいは多分理解出来ると思う。
「あった、あそこだ。セシル魔法店だ」
「おー、お兄ちゃん、文字が読めるようになったんだね」
「うん、だけどまだまだ道半ばと言ったところだよ。まだまだ語彙力が必要な感じさ」
「お兄ちゃんなら大丈夫だよ」
「あはは、ルーありがとう」
俺たちはセシル魔法店へと入店した。店内に入ると、いかにも魔法のお店ですっていう雰囲気全開だ。怪しげな装飾に蠢く水晶、謎の液体が入った小瓶に何かの動物か獣の骨で作製された杖や椅子とかもあった。
「いらっしゃい」
女性の店員さんの声が聞こえた。奥のカウンターに高く尖った円錐形で、広いつばの紫色の大きな帽子を被った女性がいた。長い煙管煙草を吸っている。ただ、俺が知っている煙草の香りじゃなくて、甘い香りがした。多分だが、吸っているのは煙草じゃなくて薬草の一種なんかじゃないかと思ったりした。
ルーが色々店内を見て回っている。俺も商品を眺めて見た。マンドラゴラの根とか言うどこかで聞いたことがあるような植物は大瓶の中で液体に包まれて浮いている。これは植物の皺なのか、目と鼻と口があるように見えた。他にも魔獣の牙も売っていた。魔法のお店というよりかは魔道具店に近いのかもなと思う。
「ルー、何か欲しいものは見つかった?」
「うーん」
ルーが真剣に何かを見つめていた。俺もその視線の先へと向けるとそこにはお守りがあった。
「これは、何かのお守りか?」
「うん、多分」
「おや、その商品に目が行くとはお目が高いね」
女性の店員さんが近くに来て話掛けて来た。
「あのこれってお守りですか?」
「そうだよ、それは鬼の魔力が込められた品さ。その子、鬼族かい? しかも、かなり高位だね」
「ええ、俺の大事な仲間なんです」
「そうかい」
「この鬼の魔力が込められたお守りはどのような効果があるんですか?」
「それは、魔除けの効果だね。鬼の魔力が込められているだけであらゆる邪な力をはね除けると言われているさね」
「ルーはどう感じる?」
「うーん、魔力というより鬼の力が込められているって感じがする」
「鬼の力か、あの店員さん、これ以外で似たような商品がありますか?」
「あるよ。私はこの店主のセシルさ。よろしく坊やたち」
「これは失礼しました」
「いいさ、ちょっと待ってておくれ。店の奥を見て来るよ」
そういうと店主はそういうと店の奥へと姿を消した。物音がする。ルーはお守りをずっと見ている。
「それ気になるの?」
「うーん、このお守りね。生きているんだよ」
「え? この小さな袋に入っているお守りが?」
「うん。多分、鬼の力が魂として物に宿っている感じかな。私にはそう見える」
「欲しいの?」
「うーん、他の商品を見てから考えるよ」
「そうか」
店主さんが店の奥から出て来た。




