第37話 事情聴取
俺たちはエニという新しい仲間が加入した。エニが仲間へ加入したことによってエニが支配する領地も全て俺の支配領域となったようだ。しかも、何れ何処かで訓練するのであれば、更に強い魔獣がいる地域にも案内出来るという。ふと、エニと白錦との会話の中で、龍という言葉が出て来たので、この世界には龍もいるのかよと内心驚いた。
旅をしていればどこかで出会うことになるだろうなと思った。ルーと白錦はすっかりエニと意気投合した様子。最初に対峙した時の強烈な濃い殺意はもう感じ無い。魔獣特有の気配も無い。そういう気配のコントロールが出来る時点で、やはり、エニという神獣は凄い存在なんだなと理解した。
俺が、エニに勝てたのは運の要素が実際は大きい。あの時の咆哮の一撃で右手が消し飛ばされていれば、俺の命は無かっただろうし。何かに導かれているようか感覚が少ししたが、杞憂の一種だと思い振り払った。俺は無知で無力だ。だから、この世界について知らなければならない。
「そろそろ、街へ戻ろうか」
『おう!』
皆が元気良く返事をする。
「お兄ちゃん、エニはこのまま街に入ると混乱しないかな?」
「あ」
すっーっっかり忘れていた。そうだ。ルーの言う通りだ。このままエニを街に入れたら大問題になることは必須だ。
「なぁ、エニ。その姿って人型に変身出来たりとかしない?」
「余が人の姿に? 可能だが、久しく変身していないので自信は無い。少し待て」
眩い暖色の光がエニを包み込み。大きさが人の形へと変わっていく。変身というよりも変形に近いのかも知れない。光が収まると、光色の髪をした女性の姿になった。白い衣服を着ており、身なりはワンピースの上に光を布にしたような光沢感のあるストールを捲いていた。美女とは言葉の通り。気品を湛えつつ格式高い仕草を一つひとつが丁寧で美しかった。
「声が女性だったけど、やっぱり女性だったんだね」
「余には性別は無いぞ。この見た目は私の魂の形を体に合わせたものだ」
「そうなのかー」
よくわからないが、見た目は美人のお姉さんであるのは間違い無い。確実に街を歩けば男性は皆振り向くというそういう大人の色気がダダ漏れだ。気配のコントロールとは一体……とは思ったけど、ルーも見た目は子どもだけどしっかりとした女性だ。白錦もイケメンに入るだろう。
そして、美人のお姉さんが加入し、俺はフツメンという組み合わせだ。うーん、俺の美意識の問題なのか、この世界の美女とイケメンとかの巷の常識も知る必要があるなとふと思ったりした。
「それじゃ、エニの服とかも街で探さなくちゃね」
「余はこのままで良いぞ」
「いやいや、目立つから。光る布で出来た衣類とか目立つから」
「そうかのうぅ」
それから、森の外へ出よう移動を俺たちは行動を開始した。なかなか、エニが俺たちを運ぼうかと言うのに甘えようかなと思ったけど、今回はそれを断った。その判断は正解だったと直後、心から思う。
「お前ら何者だ!」
森の茂みから多くの武装した兵士がやってきた。
「いえ、僕らは冒険者の者です」
近寄ってきた兵士にギルドカードを提示する。そのカードをじっくりと確認し返してくれた。
「すまん、冒険者だったか。先程、この辺りで濃い魔力反応と森全土が何かしらの魔法攻撃を受けたと観測したので調査しに来たのだ。何か見なかったか」
「俺たちは魔獣と遭遇しまして、生憎取り逃がしてしまいましたが、こちらの女性を救出することが出来ました」
「な、そちらの女性を貴方達が救出されたと?」
兵士の男性らはエニの美貌へ釘付けになっていた。男ならそう反応しちゃうよなと俺も頷く。
「そうです。なので、冒険者として薬草採取の依頼も達成しましたので街に戻るところです」
「そうか、では、女性の身柄はこちらへ保護しよう」
男性の兵士が、多分いや恐らく完全な善意での言葉であるのは間違いないと思うが、その発言へエニから殺気が微かに出しそうになっていたので、俺は頭をフル回転で文章を組み立てた。
「いえ、この女性は私たちの仲間になり、彼女と私で約束をしたので残念ながら身柄を引き渡すことは出来ません」
一か八かだった。思い返せば、エニの攻撃は街を飲み込む程の攻撃だった。しかも、最初の雷で森全土が被害を受けたとこの兵士は言った。怪しまれるのであれば、エニには我慢して事情聴取として白錦を同行させようかと思った。
「そうですね、正体不明の魔獣が出たことと、その女性が囚われていた理由も知りたいところ。残念ですが、事情聴取という形で我々とご同行頂けないでしょうか」
「エニ、こればかりはしょうがないから、白錦と一緒に事情聴取に行ってみてよ。大丈夫、白錦が傍についているから」
「主がそういうならば、わかりました」
「うむ、主君の命承った。では、参ろうか」
兵士に許可を取り、白錦とエニは事情聴取へ同行し終わり次第、宿へ集合ということで話を終えて別れた。別れる前に白錦から薬草を受け取ったことは言うまでもない。




