第35話 大厄災の生誕
「余の全力の一撃を片手で去なすとは、さすがという言葉以外見つからない。貴様、いや、凛城は余を上回る強者だと理解した。道理で二人の神へと至った存在が付き従うわけだ」
「死ぬのか?」
「わからぬ。余は不老不死であるが、ここまでの深手は初めてだ」
「お前は俺たちへ本当は何しへ来た」
「最初に言った通りだ。存在の確認をしに来ただけ。まさか、これ程とは……」
「俺のことを知っているのか」
「知らぬ。だが、この歪な世界において別次元の存在ということは理解している。この戦闘でより理解が深まった」
「それでどうする」
「余がもし死ねば、人の世界が繁栄しより勢力圏を拡大することになるのは必須。他の強者も動き出すだろう」
つまりだ。エニとか言う魔獣の王が死ぬと世の中が混乱になるというわけだ。不老不死とか言っていたけど、白錦が知らないのを見るに更に古い存在なのかも知れない。その王が俺に会いに来て挑み敗れた。その姿は虫の息に近い。傷口は再生しているようには見えなかった。
白錦へ確認をしてみると体内の気がもう残り少ないとのこと。ルーは何も言わずにエニを見つめている。エニという魔物が死ぬことで世界が不安定になるのであればそれは避けたい。俺が知らない所で被害が出るのは後味がとても悪いからだ。だから、考えて結論を出した。
「お前、俺たちの仲間になれ」
エニが驚いた表情をしていた。
「人成らざる存在で余を超える力を持つ存在の配下か、王が配下となる日が来ようとはな」
「エニに死なれては後味が悪いんでな。俺たちに挑み敗れたのだから条件を飲む以外の選択肢は無い」
「いいだろう。余はお前の配下となろう。余の体へ手を当てるといい」
俺は手を当てた。眩い光が森中を包み込んだ。そして、光が収まるとそこには傷が塞がったエニがいた。
「これで、契約成立だ。余は凛城の臣下となった」
「うむ、主君よ。天晴れなり」
「お兄ちゃん、凄い凄い」
「手を当てただけで、契約ってこんな感じでいいのか?」
「契約とは魂との誓いであり、それは縛るもの。余は凛城へ生涯を通じて盾や矛となり守り抜こう」
「わかった。それじゃ、エニ改めてよろしくな」
「主よ、よろしく頼む」
「私はルーよろしく。エニの毛皮はピカピカに光っているね」
「ルー、よろしく。その毛皮は我の根源たる星の光であり、魔力の具現化したものだ」
「へぇー、この毛皮魔力で出来ているんだ」
「我は白錦である。エニよ、お主はもしや神獣の類いか」
「白錦か、お前も強い。そうだ。余はあの大厄災の日に生まれた存在の一つ」
「大厄災の日っていうのはどういう意味だ」
俺は素直に質問を投げかけた。
「この世界が生まれたのは、大厄災の日と呼ばれる時に始まったとされている。余らは大厄災の生誕と呼んでいる。それは全ての根源であり、概念であり、誰が何のために引き起こしたのか不明だ。その存在について、最早、この世界では知る存在は少ない。しかし、だが、あの時、凛城と戦った際にその日の大厄災の時と同じ感覚になった」
「俺との戦闘で? 俺と何かその大厄災の生誕とかいうのは関連があるのか?」
「わからない。ただ、余の本能が感じたのだ」
「そうか、その時に俺と似たような存在とは出会わなかったか?」
「出会ったかも知れぬ。残念ながら覚えておらぬ」
「そうか。それは俺にとっては大事な情報かも知れないから思い出したら教えてくれると助かる」




