第23話 同行
「あれは、馬車と人か」
俺と同じ見た目の人だ。だが、俺が知っている人間という生き物とは違うような気がした。白錦も元は人だというが、半分神様なので純粋に人としては参考にならない。目の前で野盗に襲われているようで、武器を構えた男達が十人見えた。そして、襲われている馬車の主は家族連れだ。お父さんとお母さん、そして娘の三人が確認出来た。
二人へアイコンタクトで合図を送り、助けるという選択をした。家族が失うというのは俺たちにとっては見たくないからだ。先陣で攻めたのはルーだ。音も無く気配すら無いルーを目で追うには魔獣の主でも不可能だった。
野盗がどの程度の強さかは分からないが、魔獣の主と比較すれば実力の差は圧倒的にルーが上だ。ルーが男達を瞬殺していく。閃光という言葉がふさわしいだろう。野盗たちは何が起きたのか理解出来ていないようだ。俺たちが到着した時には野盗全員が倒れていた。
「ルー、凄いね。あの野盗たちは全員殺しちゃったの?」
「ううん、何人かは生きている」
「うむ、お嬢流石である。情報収集と行こうか。主君と我が尋問する故、お嬢は家族一行から話を聞いておいてほしい」
「わかった」
俺たちは倒れた野盗に近付き、息があるのは三人だ。残り七人は刺突で心臓を一撃で貫かれていた。息がある三人は急所を避けて刺突されてあり、血が流れている。白錦の話によると四肢の骨が折れている可能性が高く、お嬢が刀の峰打ちで四肢を砕いたとのこと。
あの一瞬でそこまで出来るのかと思うと、俺も恐らく同じことは可能だ。人との戦闘経験は皆無だが、ルーや白錦との実戦形式での戦闘でかなり経験値は積んでいると実感はあるけど、まだ道半ばという感覚も同時にある。
「おい、お前、俺の言葉が理解出来るか?」
「黒い仮面? お、お前らは一体」
「言葉は理解出来るようだな。どうしてこの家族を襲った?」
「そ、それは、金品を奪うために決まっているからだ」
「そうか、お前に聞きたいことはある。お前たちは人か」
「ひと? 俺たちは人だ。お前こそ人なのか?」
「ああ、人だとも。お前達の仲間はもう死んだ。お前達を魔獣がいる山へ放置か連行とどっちがいいか」
「う……」
野盗の身なりは杜撰なものだ。布と皮で出来た鎧を着用しているだけだ。剣は鉄で出来た普通の武器だ。刃毀れもしている。これでよく、あの魔獣がいる山で野盗をしているとはある意味で感心した。野盗の男から色々な情報を引き出した。抵抗する気力も無いのかスラスラと答える。この山道は魔獣除けの結界が張られているとのこと。この山道の先には小さな街があり、オルブライト領が広がっていること。野盗のアジトはその街にあるとのこと。
流石にこの山で生活は常識として有り得ないらしい。魔獣たちは確かに恐ろしい存在だが、そこまで警戒するものかと一瞬思ったが、本題に戻す。野盗が持っている装備を白錦が鑑定している。リーダーらしき男と白錦が尋問し、やはり、俺がこの男から聞いた情報と一致した。
「死体はどうするかな」
「自然に帰すのがよかろう」
「私もそう思う」
「そしたら、そうするか。三人は街へ連行する」
ルーが家族とは話をして来たらしく、大変感謝しているとのことだ。俺も挨拶へ行く。
「はじめまして、俺は凛城と申します。旅でリーダーをさせてもらっております」
「凛城様、はじめまして、私はナサニエル・シーウェルと申します。こちらは妻のモニーク、そして、娘のロスリンです。この度は助けて頂き誠にありがとうございます。どう感謝したら良いものか」
「お気になさらないでください。お怪我や被害はありませんでしか?」
「はい、おかげさまで、家族、馬車や荷物も全部無事です。お礼をさせて頂きたいのですが」
「そしたら、情報が欲しいです。俺たちは西の地より旅をしてきました。こちらの地は初めてで地理や周辺の街などの情報が少ないのです。一応、この山道の先には人が統治しているオルブライト領があると野盗から聞きましたが違いはありませんか」
「わかりました。私が知っている情報であればいくらでも差し上げます。凛城様の仰る通りです。私たち人族が統治するオルブライト領があると私たちも聞いております。そこに私たちは移住を兼ねて移動している最中だったのです。領内には大きな街から小さな街まで様々な街があり、豊かで平和だと聞いております」
「そうでしたか。シーウェルさんは移住ということは、周辺の国や街よりも過ごしやすいということでしょうか」
「私たちの前いた村は魔獣に滅ぼされてしまい、この領地が安全だということを知り移住を決意しました」
「そうでしたか、それは失礼しました。もしよろしければ、俺たちも同行させてもらってもよろしいでしょうか。行き先が同じであればご同行出来ればと思いますが、もしご迷惑でなければですが」
「そんな滅相もない。是非、ご同行頂けば私たちも嬉しいです」
「ありがとうございます。では、一緒に向かいましょう。よろしくお願いいたします」




