第21話 キラキラ
支度を整えて、寝ることにした。白錦は半分神様になってしまったため寝ることが出来ないとのことで休憩という形で横になってもらった。
翌日、早朝に皆起きて準備をして出掛けるとした。たった二日間だったけど、この雑居ビルのこの部屋には助かった。名残惜しいけど、次の街まで行かなくちゃいけない。鍵を持っていくか悩んだけど、ここを訪れた誰かのためにも置いておくことにした。もしかしたら、遠い未来かも知れないしいつか、俺たちのような旅人がこの部屋を訪れたときのためにこの部屋は必要だと思うからだ。ルーから鍵を貰い、玄関の靴箱の上に鍵を置いた。
俺たちは北の地に向けて出発を開始した。方角については白錦が方位を示す道具を持っていたため、地図を時折開きながら進んだ。早朝とはいえ、都市全体はとても暗いし住宅街を通る時は嫌な気配と視線を感じた。
二人も同じ感覚を感じていることだろうが、襲ってくるわけでは無いので無視して都市を出た。北の国へ行くにはまた山を越える必要がある。方角に従って着実に進んでいく。朝になった頃には一つの山の頂上へ辿り着いた。
「もう都市があんなに小さくなってる」
「風がひんやりするね」
「お嬢、大丈夫ですか」
「うん、平気ありがとう。白錦」
「白錦、方角はあっちでいいんだよね」
「その通りでございます。あの山々を抜けた先に国がオルブライト領になる筈です」
「オルブライト領か、名前からして人族っぽいけどわからないな」
白錦曰く、ルーのように鬼族が国を興している可能性も否定できないとのこと。人族、魚人族、豚族、巨人族等様々な人種がいるし、文化も皆異なるようだ。俺がいた世界も人間として様々な人間は多くいたし、この世界には種族レベルで更に複雑な文明が築いているのだろうと理解に努める。
俺が知っている常識や知識が役に立つかは分からないが、ルーや白錦とこうして会話出来て信頼関係を築けただけでも可能性は広がるというもの。情報が圧倒的に足りないのが不安だ。
だけど、これから行くところはただの無人の都市では無く、生きている人がいて営みがあると思われる街か都市だ。期待半分、不安半分という感じ。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
ルーが俺の手をギュッと握ってきた。
「ああ、大丈夫さ。ちょっと考え事していただけだよ」
「主君よ、我もついておる。全力で力になる故」
「ああ、二人ともありがとう」
俺たちは山も降り始めた。魔獣と呼ばれる存在がウヨウヨいた。虹色の虎って見たことが無いんだけど。しかも、集団で活動していた。ルーと白錦が手早く片付ける。瞬殺とはこの事。衣類には一切の汚れや返り血すらも無い。凄い布だ。どこかのタイミングで白錦に武芸の稽古をつけてもらうことにしようと心に誓い、直ぐに相談したら快く快諾してくれた。
合わせて、お嬢へも稽古をつけるとのことで、山中時間を見つけては稽古をして貰った。稽古をつけながら魔獣を倒して、素材を集めて、解体し肉や山菜の採集をしながらだったので時間を掛けて移動をしている。移動だけでならば、既に人がいるところへは出ているのだが、白錦曰く、良質な魔獣が沢山いるので稽古と訓練を兼ねた実戦形式で移動した。既に一ヶ月は経とうとしている。
食事は問題無い。水源も確保している。軽い居住地も見つけた。火についても白錦が火打ち石という俺も知っている道具を使用したが、想像とは違い、もの凄い火力であっという間に火起こしが可能になっていた。
「主君、お嬢、随分逞しくなられた。立派である」
「私も大分強くなったよー」
「ああ、ありがとうな白錦。俺も随分筋肉が付いてきたよ、しかし、この服汚れないな」
「うむ、その我らが着用している衣類は汚れに対して絶対無効が付与されておる。反物として一級品だぞ」
「そ、そうなのか。たんものって何だ? 祖母ちゃんちにあったやつか?」
「反物である。その衣類を仕立てる前の編み上げられた生地であるぞ。この旅の道中、匂いや皺や汚れなどなかっただろう」
「た、確かに。訓練に夢中になってたから、気づかなかった」
「うむ。これでいつ人と出会おうが心配無いのだ」
「白錦、凄いね」
ルーが目をキラキラさせて見ていた。




