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カタストロフ・ファンファーレ  作者: 竜蔵寺 佑


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第19話 所作

「聖域? ここが?」


「うむ。この雑居ビルの他の部屋にも何も感じなかったが、この部屋だけは我がいたフロアと同じ聖域特有の気配がするのだ」


「危険は無いよね」


「無論。聖域にはあいつらも入って来られない。ここは安全で間違いない」


「そうか、それなら安心したよ。それじゃ、お風呂にしようか。白錦から入るか?」


「ぬっ、風呂があるとな。主君それは本当か?」


「ああ、風呂があるぞ。しかもしっかりとお湯が出るから温かいぞ」


「なるほど、しかし、主君よりも先に入るのは恐れ多く先に主君から汗を流してください」


「白錦、そしたら、先にルー、そして俺、最後に白錦だ。それでいいか」


「無論」


「よし、決まった。それじゃルー先に入っておいで」


「わかったぁー」


 パタパタと脱衣所へ入って行った。俺はその間、ルーの着替えを用意し夕飯の支度を始めた。


「白錦、その鎧も脱ぎなよ。汚れているだろ。お前の衣類も用意しておくから」


「かたじけない」


 収納袋から男性用の衣類をいくつか見繕う。白錦は大柄な男性なので大きいサイズの服を選んだ。その間に、鎧を脱ぐ音がしたので見ると、顔は髭面だが、体はボディビルダーのように鍛えられた肉体をしていた。古傷も多く見られた。


「ああ、髭剃りってあったかな」


 収納袋から段ボールを取り出した。


「主君、何を?」


「ああ、白錦の髭を剃る道具が無いかと思ってね。備蓄からあればと思って、あった。これだよ」


「ほう、これで髭を剃れるので?」


「そうだよ、お湯でしっかり柔らかくしてから石けんで泡立てて剃るといいさ。本当は髭剃り用のクリームか何か、あればいいんだけど石けんしかなくてね。石けんの方が肌にも優しいと思うしいいと思うよ」


「何から何までかたじけない」


「お互いさまだ。さて、俺は料理を作るさ。白錦が仲間に入ったから祝いをしよう」

 収納袋から色々な肉と野菜を摂りだした。収納袋の中は保存が効くのか傷んでいる形跡はない。匂いも平気だ。中がどんな風になっているのか気になるけど、手を入れれば何がどこに入っているのかを瞬時に把握出来るので便利だ。


 白錦の収納術というものも話を聞けばどうような理屈原理らしい。ただ、白錦は武士なので、学者ほど詳しくはないとのこと。普通はそうだと俺も思うし、専門分野以外にも把握しているとは流石に無理があるというものだ。


「ほう、これの肉は巨獣か」


「そうだよ。可能な限り、解体したやつを肉塊だ。これ昨日食ったけど美味かったぞ。今日は白錦が仲間に入った祝いだし、豪勢にするつもり。腹減っているだろ?」

「腹が減るという感覚をいつ以来か、とても楽しみだ」


 白錦が腹をさすりながら笑顔になる。


 料理をしているとルーが出てきたので料理の手を止めて、風呂へ入ることにした。ルーがその間、料理をしてくれることになった。脱衣所にあるルーの衣類を洗濯機へ入れ、俺の衣類も入れて風呂に入った。体を洗い、湯船に浸かり今日一日を振り返ってみた。鎧武者との戦闘に、新しい武器、そして探索。大冒険とはこのことだ。


 結局この世界のことや、状況はわからない。だが、備蓄倉庫も発見したし当面の食料は安泰だろう。今日は新しい白錦という仲間が出来た。この世界について知識は俺やルーと比べるとかなりあるだろう。今後の方針を決めるに当たって作戦会議をする必要があるなと思った。


 風呂から上がり、白錦を呼ぶ。白錦の着替えと着用していた衣類は洗濯機に入れることと、お風呂場の使い方、髭の剃り方を教えて、脱衣所から白錦と交代するようにリビングへ出た。


「お兄ちゃん、ゆっくり出来た?」


「ああ、ゆっくり出来たよ。料理は出来たか」


「うん、あのおじちゃんを待つだけだよ」


「よし、いい感じだな。後で作戦会議をしよう。この都市には白錦が言うにはもう手が掛かりは無いだろうし、他のビルも確認したけどやっぱりなかったしな」


「うーん、そうだね」


「ルーは何か気付いたことあった?」


「わからない。ただ、私がいた街の雰囲気とは違うということだけかな」


「白錦がいたからかも知れないね」


 テーブルへ料理を並べた。並べ終わる頃に白錦が用意していた服に着替えて出てきた。


「お、白錦はイケメンじゃん」


「いけめん? とは麺類のことか?」


「いや、顔がかっこいいってことだよ。髭を剃ってやっぱり正解だ。印象が全く違うね」


「おー、白錦おじちゃんからお兄さんになった」


「我はおじちゃんじゃないと言っただろうが。我はこう見えて若人なのだぞ」


 確かに見た目は俺より少し上の年齢に見える。多分、二十代前半の見た目。髭で溢れていた時は四十代の風貌だったから、印象がまるで違う。


「髭を剃ったほうが断然かっこいいから、今後も続けなよ」


「ルーもそう思うよ」


「う、うむ。そうか? では、そうするか」


「それじゃご飯にしようか」


 三人で食卓を囲んだ。テーブルには料理が沢山ならんでいる。肉の山々に、野菜の炒めやら色々だ。香草と香辛料で味付けしてある。素朴だけど素材の味だけでも充分に味は濃いので丁度いい具合だ。三人でご飯を食べる。ルーは育ち盛りでモリモリと食べていく。白錦は丁寧な所作で箸を使い口に食べ物を運んでいく。

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