第17話 刀剣
「お主ら!」
後ろから白錦の声がして振り返ると土下座している。何故?
「おっさ……白錦は何をしているのかな」
「我をお主らとの旅へ同行させて欲しい」
その言葉を聞き、ルーと目を向き合い戸惑った。そういう流れでは無かった筈だし、そういう雰囲気でも無かった。
「いや、急にそう言われても……」
「お主らが我を倒し、その暁には主君に仕えるのが我の使命であり、我よりも強き者でかつ懐深き君である凛城殿やルー殿にも仕えたく存じます」
「いやいや、聖地を守るって話はどうなったんだ?」
「それは先程の戦闘で我が敗れた瞬間に解除された。我は死ぬか生きるかの二択しか無かった。お主らは我を倒し、そして、命も救ってくれた。その恩義を返す意味ではなく、一武士として主君に仕えこの白錦一命を賭して生涯通じて報いたく存じます」
「ルーはどう思う?」
「味方は多いほうがいい」
「そ、そうかー」
ルーの返事はあっさりだった。確かに白錦には敵意や悪意も殺意すらも感じない。今は忠誠心という言葉が似合う気配を出している。どうするか、少し悩んだが決めた。
「分かった。一緒に旅へ出よう。改めまして、白錦よろしくな」
「はッ、この白錦。必ずやその言葉に恥じない忠誠を御身へ」
白錦が仲間になった。多分、白錦自体は仲間という意識よりも臣下という意味で捉えているだろうなと思う。さて、何はともあれ、これで仲間として三人になった。しかも、白錦は強い。戦闘面では一役買うことになることは間違いない。
白錦からこのビルについて詳細を改めて確認しながら探索を開始した。白錦が言うには、このビルという建物は時間という概念が存在しなく、これは白錦が悠久の時を過ごして来た直感だが、大昔に何かがあった時に生まれた建物だという。白錦がここを聖地として守ることになった経緯について当時の家の命令で聖地にて御神体として生きながら祀られたという経緯とのこと。
話を聞いて、何それって引いたけど、当時の主君の命令は絶対で荒れた世界を鎮めるために生け贄が必要だったとのこと。それから、悠久の時が流れ、白錦家が無くなったことを研ぎ澄まされた気配で確認したらしい。仕える主君や家も無くなり、それが更に聖地の御神体として呪縛を強くし、自身を倒すまたは仕える存在が見つかった時点で開放されると理解したのだとか。
悠久の時というぐらいだから、とんでもない時間を生きていたということになる。この都市全体の時間が止まっている理由とは違うらしく、既に白錦の身は御神体として完成しているようだ。鬼の子に半分神様のような武者と賓客としての俺、不思議な組み合わせだと心から思う。
「このビルも見終わったな。そういえば、白錦はこの都市に武器とかあるか知らないか」
「武器ですか、うむ。残念ながら、この都市には無いと思われます。何か急ぎで?」
「いや、俺の剣もルーの短剣もそろそろ新しい武器にしたいなと思って」
「私もお兄ちゃんと同意見」
「なるほど。では、拙者の武器で良ければ業物が確か」
白錦の真横に白いモヤみたいなのが出現した。その中へ両手を入れ何かを探っている。
「白錦、それは何だ?」
「主君よ、これは収納術です。我が集めた武器や武具がありますぞ」
「おー、楽しみ!」
ルーが目をキラキラさせている。
「お嬢、しばし待たれよ。あった、これだ」
白錦がまず二本の短剣をルーに渡した。短剣というよりも刀だ。短刀というべきか。そして、俺には刀を渡してきた。
「白錦、これは?」
「主君に渡したのは、刀匠、戒能鎮氏の絶品、名刀:白天。お嬢に渡したのは刀匠、杉之坊政友氏の絶品、名刀:千夜」
俺の刀は雪のような真っ白で汚れ一つ無い刀身をしていた。俺の今持っている剣よりも刀身は少し長い。ルーの二振りの短刀は鮮やか漆黒の黒だ。俺の刀もそうだが、どのような素材を使えばこんな色になるんだろうと思う。ルーはとても嬉しそうに白錦にお礼を言っていた。
「ありがとう、白錦。この刀を貰っても良いのか?」
「主君やお嬢であればこの程度、惜しくはありません。我が持つ武器で最高峰の刀剣と自負しております故」
「本当にありがとう。大事に使わせて貰うよ」




