第13話 満腹
「この建物には長時間いて大丈夫だと思う?」
「うーん、住宅街へいなければ安全だと思う」
「やっぱり住宅街は危険か」
「住宅街に何かあるの?」
「いや、手がかりがあればあるほどいいかなって。だけど、危険なところへわざわざ行く必要もないし念のための確認だよ」
「わかった」
二時間程度でこのビルを全て見られた。何も無かった。不気味さだけが残るとはこのことだ。
「違うビルに行こう」
「うん」
別のビルへと向かった。中に入ると、綺麗とはほど遠く荒れていた。窓も割れている。ソファの綿も出ている。何かいるのかと思いつつも、エレベーターフロアに着き、同様の手順で上層階から一階まで丁寧に探索をした。このビルでの収穫は本があったことだ。使える本では無い。俺には読めないが、ルーには読めるらしい。天気の話とか料理の話が書かれているようでそれ以外の本も大したことは分からないままだった。
「このビルもダメかー、この都市に来れば何かこの世界についてのヒントが得られると思ったんだけどなぁー」
「ここも、遺跡だね。探索してみないと分からないけど、多分他のビルという建物にも、何も無いと思うな」
「ルーもそう思うかぁー」
「今日は休もうよ」
「そうだね。ルーの言う通りだ。それじゃ、あの建物にしようか」
小さな雑居ビルのような建物に目が向いたので、そのビルに決めた。雑居ビルの階段を昇り玄関をガチャガチャとドアノブを回して見るが、鍵が掛かっていた。内側から鍵を掛けている? それか、誰かが使用していたという意味かとふと思ったが、中からも人の気配も感じない。ルーも同じ意見だ。幸いにも一つの部屋は鍵が掛かっていなくて開いた。
中に入ると玄関にこの部屋の鍵らしきものが置いてあり、間取りは和室と洋室、キッチンやお風呂場まであった。念のため、水道やトイレ機能するかを確認したが、どれもがしっかりと動いた。ドアの鍵を閉めて、外の様子を見ると暗くなってきたので電気を点灯した。調理器具とか食器も一通り揃っていたので、料理の支度を始めた。
その間、ルーはお風呂に案内させて使い方を教えてお風呂に入って貰った。衣類について着替えは容易しているので、浴室前に置いた。この世界の子どもの下着もあったのでそれも置いた。こういう準備をすると昔を思い出す。
「俺も随分風呂に入っていないから、匂うだろうな。料理の支度をしたら久しぶりに風呂へ入るか」
湯船に浸かっているのか、ルーの鼻歌が聞こえる。知らない音色の鼻歌なので思わず耳を立ててしまった。心地良い音色だと心から思った。
料理の支度を終え、ルーに声を掛けた。しばらくしてルーが着替えて出てきた。汚れた衣類は洗濯機に入れ、多分、洗濯用洗剤だと思われるものを入れ、俺の衣類も中に入れた。
ルーには俺が入浴している間に周囲の警戒をしておいて欲しいと伝えた。いつ振りの風呂か、正確な日付を数えているわけではなかったけど、かなり久しぶりという印象だ。水で血を落とした時か。腕を見ると生傷と筋肉がそれなりについていた。あれだけ重たい剣をぶんぶん振り回したり、長時間構えたりしていればそうなるかと思う。
「それにしても良い湯だ。しばらくはここを拠点にしても良いかもなぁ」
湯船のお湯で顔を濡らした。
「これからどうするか、この都市も探索初日で手がかりは無し」
ルーの話では他の建物も同様だという印象。住宅街には見えない何かがいるということ。不気味であることは間違い無い。住宅街では無いが、この雑居ビルの今いる一室は大丈夫なのだろうか。ルーは何も言わなかった。俺も違和感や異変を感じ無かった。
「警戒をしておくことへ損はないしな。さて、出るか」
久しぶりに体を洗ったおかげで体がとても軽い。着替えて、部屋へ出たらルーが待っていた。
「待たせたな、飯にしようぜ」
「うん」
一緒に山菜と色々な種類の肉を食べ比べした。飲み物は水を用意して沢山飲み食いした。ルーが調達してくれた香草と香辛料が肉料理にとても合う。絶品とはこのことだろう。皿に盛り付けるだけもご馳走だ。山菜も生食出来るものを沢山採集してくれてそれを肉料理と一緒に食べた。さっぱりしていて美味しい。互いに沢山食べて満腹になって片付けをした。




