第12話 オフィス
それから、休憩と宿泊を繰り返しながら移動をした。途中で、大きなトカゲと遭遇して戦闘したりもした。まるで恐竜だ。山に茂る森も熱帯地域で見られるような人の手が加えられていない未開の地という感じだ。ゾウぐらいの大きさのトカゲでどう倒そうかと一瞬怯んだが、ルーが手際よくトカゲの四肢を斬り裂き、早い速度で動きを封じて止めを俺が刺したという戦闘スタイルになった。
俺にはトカゲにしか見た目は見えなかったが、ルー曰く、これも山の恵みだといい、料理してくれた。いくつか火入れをして調理したものを炙ったトカゲの皮で包み、袋の中に詰め込んだ。この袋には一帯どれだけの物が入るのか最早見当もつかない。
一週間ぐらい色々な動物と戦闘した。見た目は全部恐竜のような見た目だった。移動しながら、ルーが山菜と香辛料を採取して調理用にストックしていた。食料については備蓄用を使うまでもないようだ。
だが、水については備蓄から出すことにした。川が無かったのだ。他のエリアを探せば見つかると思うが、そうまでして時間を掛ける必要は無いとルーと相談した上で判断した。水場には色々な危険な獣や動物が集まってくるからだ。それに、この一週間、天気は悪く、強い雨で進みが止まる日もあった。だが、山暮らしもここまでだ。
「良し、ルー着いたぞ。あれが新しい街だ」
「お兄ちゃん、ようやく着いたね」
山から出た先には巨大な街が広がっていた。最初に見つけた街の比ではない。最早、ちょっとした都市だ。だが、やはりというべきか人の気配はまるで無い。それに鉄道も車が走っている様子もない。無人の都市でしかも綺麗な外観なので、それが余計に不気味さを醸し出していた。
「ルー、思うんだけど、こういう都市に普通は生き物が住んだりとするもんじゃないの?」
「それは考えられないよ。この都市も危険だもの」
「やっぱり、危険か。だから、避けるのか。なんで危険なんだろう」
「わからない。多分、遺跡だから何かの呪いとか思念とかが残っているせいだと思う」
「呪いと思念ね」
ルーの話を聞きつつ互いに周囲を警戒した。住宅街にはルーから入らないようにと指示があったので入らないようにして、俺たちはビルへと向かった。距離は結構ある。数キロメートルは軽くあるだろうか。アスファルトが綺麗に舗装されている。割れている形跡も無い。
住宅街は現実世界にあった街並みと似ているし、細かい所々は文字とか標識なんかは違うけど、この都市も全部俺がいた現実世界とは違う世界の都市の可能性もあるなと思いつつあった。
「ルー、都市が大昔からある遺跡と言っていたけれど、どのくらい昔か具体的に数字で分かる?」
「うーん、数字はわからない。ただ、とても古い大昔からある遺跡だと聞いているだけだよ」
やはり、そうかと思う。大昔からあるのにこの景観に整備された街並み。異常だ。何か超常的な何かに巻き込まれているんじゃないかと、ようやく理解しつつあった。まだ、俺はこの世界にいる自分へ納得出来ていないんだと思う。
新しいことが分かる度に答えが無いし、巨大な動物や獣と戦闘していても命のやり取りの危機感は常に感じているが、同時にこの夢からいつ覚めるんだと、願う自分もいた。そういう時にルーが優しく傍にいてくれる。
まずは手前のビルへ潜入することにした。かなり大きいが中に入って見る。自動ドアが開き、中には空調が効いているようで外より快適だ。
「まるで、俺がいた世界のようだな」
「お兄ちゃんがいた世界はこういう感じだったの?」
「まぁ、全部同じというわけじゃないけど似たようなものかな。どう探索しようか」
「うーん、一人行動は危険だと思うよ。だから、一緒に上の階から探索しない?」
「そうだね。そうしようか」
俺たちは一番上の上層階から探索を開始した。武器を構えて敵に遭遇する前提で丁寧に動いた。エレベーターフロアに到着して、ルーが慣れた手付きで上のボタンを押した。番号らしき模様が点滅し降りて来る。チリンと音が鳴り中を確認するが、誰もいない。そして、一番上の階であろうボタンを押す。エレベーターがゆっくりと上昇を始める。電光掲示板にも上昇している模様が映し出されているが何が書かれているのかは分からなかった。
ルーにもその文字が読めるのか確認をしたが、読めないとの返事だった。ルーがいた街に書かれた文字は別の世界の言葉だから私たちにも解読出来なかったとのこと。この都市全体が異質ということは間違いない。
ベルの音が鳴り、扉が開く。上層階のフロアを探索開始。俺は前方とルーは後方を警戒して進む。周囲には何も気配すら無い。空調の音と俺たちの足音だけがフロアに響くようだった。
「ルー、何か感じるか」
「何にも感じないよ。ここも遺跡なのかな」
「どうだろう」
フロアの内装が破壊された形跡もなく、綺麗という印象だ。それに何かの企業のオフィスのロゴが描かれている。ソファに会議室だろうか。文字は理解不能だけど、状況だけで企業が入っているということは理解した。部屋を回るうちにオフィスエリアだろう大量のパソコンがそこには並んでいた。
「パソコンだ」
「ぱそこん?」
「そう、俺の世界にあったんだ。電源が付けば何か分かるかも知れない」
電源ボタンを押すとパソコンが起動したが、パスワード入力画面になった。入力画面になったということはそういうことだ。周囲にパスワードのヒントになるようなのを探したが、見当たらなかった。
「ダメだな。ログインができない」
「どういうことなの?」
「このパソコンという機械は動くけど使えないということさ。残念だよ。まぁだけど、何かしらの企業っぽいしセキュリティ対策はするのが当然だよな」
念のため、他のパソコンも起動したが同じ入力画面になった。アイコンを見るにインターネットには繋がっているようだ。だけど、現時点では無用な物だ。このフロアを巡ったが、何も無かった。下の階へと進み他のフロアにも入ったが、オフィスというフロアだけだった。




