7.叔母の好奇心
「どうゆうことなの? エレーナ」
身内だけが使う部屋に入るなり、叔母がぐぐいと詰め寄ってくる。
「どう、と言われても……」
「私……私が今一押ししているマシューと、どうして一緒に話を?」
「ああ! 彼が!」
『叔母が最近夢中になっている役者』と、『さっきぶつかったマシュー』がわたしの中で繋がった。
これまでにもマシューの名前を叔母から聞いたことはあったかもしれないけれど、なにぶん興味がないものだから記憶に残っていなかった。
「今⁉」
「だって……そもそも、マシューとは、ただぶつかっただけだもの。わたしはジョンを捜していて……」
はっと気づいて口を閉じたけれど、もう遅い。
マシューとは何の関係もないことを伝えようとしただけだったのに、ジョンの名前を出してしまった。
「ジョンを?」
好奇心に輝く叔母の瞳を前に、わたしは後ずさる。
わたしが現実世界に存在する生きている男性の名前を口にしたことに、叔母が食いつかないはずがない。
「……あ、いえ、あの……そ、そもそもジョンのこともよく知らないし……」
「でしょうね。なのに、どうしてジョンを捜していたのかしら。お話、詳しく聞かせてちょうだい」
さあさあ、と叔母がわたしに、ソファへ座るようにと促す。
わたしは天井を仰いだ。
「そんな、お話しするほどのことは、何も」
「そんなこと言わないで、エレーナ。私と貴女の仲じゃないの。それに、私ならきっと、貴女に協力できるはずよ」
――協力。
確かに、お芝居のことも劇団のことも、わたしなんかより叔母の方がよほどよく知っている。
先ほども、ひいきの劇団員マシューだけではなく、ジョンのことも知っている様だった。
わたしがその点に気づいたことを悟ったのか、叔母がわたしの目を見て深くうなずく。
「ほ、本当に大したことではないんだけれど……」
「ええ、わかったわ。その、大したことのない話を、どうぞ聞かせて」
叔母に押し切られるように、こくりとうなずいたわたしは、促されるままソファに腰を下ろす。
そして、観劇に行ったあの日のことを、叔母に話し始めた。




