5.観劇後
お芝居は、素晴らしかった。
観客が侯爵夫人をはじめとする女性が大半であることを考慮してか、内容もわかりやすい恋愛もの。
でも、ジョンはいなかった。
――ジョンが演じる登場人物は、いなかった……と、思う。
何故だろう。
今日は、来ていないのかしら。
ジョンのことが気になって、終演後、わたしはすぐに席を立った。
隣に座る叔母が驚いているのがわかったけど、説明している余裕はなかった。
廊下に出ると、劇団の人たちが行ったり来たりと忙しそうにしている。
片づけと荷造りで大忙しの様だ。
「あ、あの……。すみません、今日、ジョンは……」
申し訳ないと思いつつも、一番近くにいた人に声をかける。
けれど、自分の仕事に集中していて気づかないのか、応えはない。
「あっ、あのっ!」
先ほどよりも大きな声で、再度呼びかける。
やっぱり、反応がない。
まだ、聞こえない?
もう少し近くから声をかけてみようかと、数歩近づいた時、その人が突然振り返った。
その拍子に、相手の肘がわたしにぶつかる。
「あっ……」
衝撃で、後ろに倒れそうになる。
と、背中を、優しく何かに支えられたのを感じた。
そのおかげで、倒れるのを免れる。
「もっ……申し訳ございませんっ‼」
わたしにぶつかった劇団の人が、青ざめて猛烈な勢いでわたしに向かって謝罪をする。
「あっ、い、いえ。わたしが不用意に近づいてしまったのがいけないのです。こちらこそ、すみませんでした」
「そ、そんな‼ お、お怪我は? 大丈夫ですか?」
「は、はい。大丈夫です。わたしを支えて下さった方が……」
「お怪我がなくて本当によかったです。おまえがいてくれて助かった。ありがとうジョン」
劇団の人が、わたしへ、そして、わたしの後ろへ向けてお礼を告げる。
ジョン⁉
わたしは驚いて、振り返る。
そこには、青いきれいな瞳をした少年が立っていた。




