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私が死んだ日、冷血大公の夫は国を焼き始めました――三年後、花屋になった私を見つけた暴君が絶対に離してくれません  作者: 茗子


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10話 妻を失った男の粛清


 妻からの手紙は、七通あった。


 すべて、未開封だった。


 クロード・ヴァレンティアは、執務机に並べられた封筒を見つめていた。


 白い封筒に、淡い青色の封蝋。


 そして、見覚えのある丁寧な文字。


『クロード・ヴァレンティア大公閣下』


 七通すべてに、同じ宛名が記されていた。


 夫に宛てた手紙だというのに、そこには親しげな呼びかけひとつない。


 クロードは、机の前に立つ執事長へ目を向けた。


「……説明しろ」


 声は静かだった。


 けれど、執事長の額には汗が浮かんでいた。


「お、奥様からお預かりした書簡でございます」


「それは見ればわかる」


 クロードは、一通目を手に取った。


「なぜ、私に届かなかった」


「……閣下は、ご多忙でいらっしゃいましたので」


「それが理由か」


「以前、閣下より、緊急性のない家政上の案件は執事室で処理するようにと、ご命令をいただいておりました」


 クロードは、口を閉じた。


 覚えがあった。


 結婚して間もない頃のことだ。


 妻から届く細かな相談や、屋敷の管理に関する報告が煩わしくなり、執事長に命じた。


『私の判断が必要なものだけを回せ。それ以外は、お前が処理しろ』


 たしかに、そう言った。


 あのときの自分は、それが効率的な判断だと思っていた。


 妻からの報告を読む時間があるなら、軍務に関する書類を一枚でも多く処理したかった。


 クロードは、封筒を見つめた。


「……私が、そう命じたのだな」


「は、はい」


「では、なぜ保管していた」


「奥様からの書簡を、勝手に破棄するわけにはまいりませんので……」


 執事長は、視線を落とした。


「いつか閣下にお時間ができましたら、お渡ししようと」


「三年間、時間がなかったと?」


「……申し訳ございません」


 クロードは、返事をしなかった。


 封筒に触れる指先が、わずかに強張っていた。


 執事長は、命令に従ったのだ。


 少なくとも、そう主張できるだけの理由を、自分が与えてしまった。


 それでも。


 妻が自分に宛てた手紙を、一度も受け取らなかったという事実は消えない。


 クロードは、最初の封筒を開いた。


     *


『クロード様


 お忙しいところ、申し訳ございません。


 来月で、私たちが結婚して一年になります。


 もし、ご都合がよろしければ、その日だけでもご一緒に夕食をいただけないでしょうか。


 長い時間でなくても構いません。


 お返事をいただけましたら、嬉しく存じます。


 セリア』


 短い手紙だった。


 たった、それだけだった。


 クロードは、便箋を持ったまま動かなかった。


 結婚一周年。


 あの日、自分は何をしていた。


 記憶をたどる。


 東部の領主たちと会議をしていた。


 夕食は、執務室で一人で取った。


 会議の内容は、今でも覚えている。


 けれど、セリアが何をしていたのかは知らない。


 クロードは、二通目を開いた。


『クロード様


 先日、庭園の温室で白い花が咲きました。


 とても綺麗でしたので、もしお時間がございましたら、ご覧になりませんか。


 お仕事のお邪魔になるようでしたら、どうかお気になさらないでください。


 セリア』


 三通目。


『クロード様


 最近、お疲れのご様子と伺いました。


 お身体を大切になさってください。


 もし、何か私にできることがございましたら、遠慮なくお申し付けください。


 セリア』


 四通目。


『クロード様


 慈善院への寄付について、ご相談がございます。


 今年は冬が厳しく、燃料が不足しているそうです。


 例年と同額だけでもお認めいただければ、子どもたちが安心して冬を越せると思います。


 ご検討いただけますと幸いです。


 セリア』


 五通目。


『クロード様


 使用人の配置について、少し気になることがございます。


 私の侍女であるミレーヌが、ほかの使用人から不当な扱いを受けているようです。


 私の立場では改善を命じても徹底されず、困っております。


 お忙しいことは承知しておりますが、一度だけお話を聞いていただけないでしょうか。


 セリア』


 六通目。


『クロード様


 最近、お食事をきちんと召し上がっていらっしゃいますか。


 厨房の者から、執務室へ運ばれた料理が手つかずで戻ることが多いと聞きました。


 差し出がましいこととは存じますが、どうか無理をなさらないでください。


 セリア』


 そして、七通目。


 クロードは、最後の封筒を開いた。


『クロード様


 ご遠征中のところ、私事でお手を煩わせることをお許しください。


 帰還後に、一度だけお時間をいただけないでしょうか。


 大公家の公務についても、今後の私たちのことについても、お話ししたいことがございます。


 長い時間はいただきません。


 どうか、ご検討ください。


 セリア』


 そこで、クロードの手が止まった。


 今後の私たちのこと。


 その言葉を、何度も読み返した。


 セリアは、何を話そうとしていたのだろう。


 夫婦としての今後。


 それは、まさか。


 クロードは、便箋を握りしめかけた。


 慌てて、指の力を緩める。


 もう、彼女の残したものを傷つけたくなかった。


 七通の手紙。


 そこに記されていたのは、ささやかな願いばかりだった。


 一緒に食事をしたい。


 花を見てほしい。


 話を聞いてほしい。


 そして、自分の体調まで気遣っていた。


 宝石も、ドレスも、贅沢な暮らしも求めていない。


 セリアが求めていたのは、ほんの少しの時間だった。


 それさえ、与えなかった。


「……なぜだ」


 クロードは、低く呟いた。


 執事長が、びくりと肩を震わせた。


「……閣下?」


「なぜ、私に見せなかった」


「そ、それは……」


「一通目は、結婚記念日の食事の誘いだ」


 クロードは、便箋を机に置いた。


「二通目は、花の話だ」


 次の手紙を重ねる。


「三通目は、私の体調を気遣っている」


 さらに、重ねた。


「……どこが、家政上の案件だ」


 執事長は、答えられなかった。


「私の妻が、私に宛てた手紙だ」


 クロードの声が、低くなる。


「家政上の判断を任せたのは私だ。だが、妻から私への私信まで握り潰せとは命じていない」


「……申し訳、ございません……」


「謝罪を求めているのではない」


 クロードは、ゆっくりと立ち上がった。


「答えろ」


 その瞬間。


 執務室の窓硝子が、音もなく凍りついた。


     *


 執事長が床に膝をついたのは、それから間もなくのことだった。


 クロードは、彼を見下ろしていた。


「……私は、閣下のご命令に従っただけでございます」


 執事長は、震える声で言った。


「奥様からのご相談は、緊急性が低いと判断し……」


「緊急性が低い?」


 クロードは、五通目の手紙を持ち上げた。


「侍女が不当な扱いを受けていると、妻は訴えている」


「そ、それは、使用人同士の些細な行き違いで……」


「調査したのか」


「……いえ」


「では、なぜ些細だとわかる」


 執事長は、口を閉じた。


 クロードは、深く息を吸った。


 自分が執事長に与えた権限。


 その権限が、妻の声を遮るために使われていた。


 そして、自分は三年間、それに気づきもしなかった。


「……全使用人を集めろ」


「……は?」


「この屋敷で、セリアがどのように扱われていたのか。すべて調べる」


 執事長は、顔を青ざめさせた。


「閣下、それは……」


「聞こえなかったか」


 クロードの足元から、薄い霜が広がっていく。


「今すぐだ」


     *


 大公邸の大広間に、使用人たちが集められた。


 料理長。


 給仕係。


 侍女。


 庭師。


 家令補佐。


 そして、奥様付きの侍女であったミレーヌ。


 全員が、緊張した面持ちで並んでいた。


 クロードは、彼らの前に立った。


「……セリアについて、聞きたいことがある」


 誰も、顔を上げなかった。


「妻は、この屋敷でどのように暮らしていた」


 沈黙。


 クロードは、料理長を見た。


「朝食の薬草茶について、答えろ」


 料理長が、びくりと肩を震わせた。


「……はい」


「セリアは、好んでいなかったそうだな」


「……そのようでございます」


「なぜ、三年間も出し続けた」


「先代からの慣例で……」


「妻が望んでいなくてもか」


「……申し訳ございません」


 クロードは、次に庭師を見た。


「セリアは、庭仕事をしたがっていたそうだな」


「……はい」


「なぜ、させなかった」


「大公妃殿下のお召し物が汚れては……」


「本人が望んでいてもか」


「……はい」


 次に、給仕係。


「セリアが、私との食事を希望したことはあるか」


 若い給仕係は、震えながら答えた。


「……何度か、ございました」


「何度だ」


「……正確には……」


「覚えている限りでいい」


「……十回以上は……」


 クロードは、目を閉じた。


 十回以上。


 妻は、十回以上も一緒に食事をしたいと願っていた。


 それを、自分は一度も知らなかった。


「……その希望は、誰に伝えた」


「執事長へ……」


 クロードは、執事長を見た。


 男は、顔を伏せた。


「……閣下は、お忙しいので……」


「忙しかったのは事実だ」


 クロードは、静かに言った。


「だが、妻と食事をする時間さえないと決めた覚えはない」


 そこで、言葉が止まった。


 いや。


 決めていたのだ。


 妻と過ごす時間を、必要のないものとして。


 それを言葉にしなかっただけで。


 クロードは、拳を握りしめた。


「……私が、そう思わせたのだな」


 執事長は、何も答えなかった。


     *


「……ミレーヌ」


 クロードが名を呼ぶと、彼女は一歩前へ出た。


「はい、閣下」


 ミレーヌは、深く頭を下げた。


 その仕草は、いつもと変わらなかった。


 けれど、胸の奥では、心臓が激しく脈打っていた。


 氷晶石の棺。


 補助鍵。


 葬送用の形代。


 もし、あの夜のことを知られたら。


 自分だけではない。


 ようやく自由を手に入れたセリアまで、連れ戻されてしまう。


 ミレーヌは、指先をそっと握りしめた。


「セリアは……」


 クロードは、そこで言葉を止めた。


 棺の中の妻を思い浮かべたのだろう。


 白い頬。


 閉じられた瞼。


 何も言わない唇。


「……幸せだったか」


 ミレーヌは、答えなかった。


 長い沈黙が落ちた。


 クロードは、彼女を見つめた。


「正直に答えろ」


 ミレーヌは、ゆっくりと顔を上げた。


 その目には、涙が浮かんでいた。


「……奥様は、いつも笑っておられました」


 クロードの胸が、わずかに緩んだ。


 けれど。


「ですが、それは……」


 ミレーヌは、唇を噛んだ。


「誰にも、ご迷惑をおかけしたくなかったからです」


 クロードは、動かなかった。


「奥様は、何かをお願いするたびに、申し訳なさそうにされていました」


 ミレーヌの声が、震えた。


「温かい牛乳を飲みたいとおっしゃることも、庭で花を育てたいとおっしゃることも……」


 彼女は、涙を拭った。


「そんな小さなことさえ、わがままなのではないかと気にされていたのです」


 クロードは、何も言えなかった。


「奥様は、大公妃でいらっしゃいました」


 ミレーヌは、まっすぐにクロードを見つめた。


「けれど、この屋敷では……ご自分の望みを口にすることすら、許されていないようでした」


 沈黙が落ちた。


 クロードは、ゆっくりと目を伏せた。


 そして、低い声で尋ねた。


「……私のことを、何か言っていたか」


 ミレーヌは、しばらく黙っていた。


 やがて、静かに答えた。


「……最後の頃は、何も」


 クロードの指が、ぴくりと動いた。


「……何も?」


「はい」


 ミレーヌは、涙をこぼした。


「以前は、閣下のお帰りを心待ちにしておられました。お食事をご一緒できないか、何度も尋ねておられました」


 彼女は、息を吸った。


「でも、最後の頃は……」


 声が、震えた。


「もう、何も望まれなくなりました」


 クロードは、目を閉じた。


 その言葉は、どんな剣よりも深く胸に突き刺さった。


 ミレーヌは、静かに頭を下げた。


 嘘は、ひとつも言っていない。


 セリアがどれほど孤独だったのか。


 どれほど小さな幸せさえ諦めていたのか。


 それだけは、誰よりも知っていた。


 けれど、今、彼女がどこにいるのかだけは。


 決して、口にするつもりはなかった。


     *


 その日のうちに、執事長は職を解かれた。


 家令補佐も、職務を停止された。


 要望を握り潰した者。


 報告を怠った者。


 不当な扱いを知りながら、見過ごした者。


 クロードは、一人ずつ名前を挙げさせた。


 そして、すべての記録を提出させた。


「……閣下」


 古参の家令が、恐る恐る進言した。


「処分が、少々厳しすぎるのでは……」


 クロードは、顔を上げた。


「厳しい?」


「はい。確かに不手際はございました。しかし、使用人たちにも、それぞれ事情が……」


「事情」


 クロードは、その言葉を繰り返した。


「妻が三年間、何を望んでいたのかすら知らなかった私に、事情を語るのか」


「……閣下」


「セリアは、何度も訴えていた」


 彼は、机の上に並んだ手紙を見つめた。


「誰も、聞かなかった」


 そして、静かに言った。


「……私も含めてな」


 家令は、息を呑んだ。


 クロードは、目を閉じた。


 自分が、最も責められるべき人間だということはわかっていた。


 使用人たちが妻を軽んじたのは、自分が妻を軽んじていたからだ。


 夫が関心を示さない女を、屋敷の者たちが尊重するはずもない。


 そのことを、今さら理解した。


 けれど。


 理解したからといって、怒りが消えるわけではなかった。


 むしろ、怒りは膨れ上がっていった。


 誰かを責めなければ、立っていられなかった。


 自分自身を責め続ければ、正気を保てそうになかった。


 だから、彼は命じた。


「……調査を続けろ」


 家令は、顔を上げた。


「まだ、何か……?」


「この屋敷だけではない」


 クロードの声は、氷のように冷たかった。


「セリアが訪問した慈善院。彼女が支援を求めた領地の役人。彼女の要望を退けた者たち」


 彼は、ゆっくりと立ち上がった。


「すべて調べろ」


「……閣下、それでは……」


「一人残らずだ」


 家令は、震えながら頭を下げた。


「……承知いたしました」


     *


 夜。


 クロードは、妻の眠る棺の前に座っていた。


 氷晶石の内部では、保存術式が静かに輝いている。


 セリアは、相変わらず眠っていた。


 彼は、七通の手紙を膝の上に置いた。


「……すまなかった」


 何度目かわからない謝罪だった。


「お前は、何度も私に話しかけようとしていたのだな」


 返事はない。


「それなのに、私は……」


 クロードは、言葉を失った。


 謝っても、戻らない。


 悔やんでも、時間は巻き戻らない。


 どれほどの財産を差し出しても、彼女が望んだ三年間は取り戻せない。


 彼は、棺の蓋に手を置いた。


「……お前が望んだものを、すべて与えよう」


 静かな声だった。


「花も、温室も、好きな料理も」


 彼は、目を閉じた。


「もう、何ひとつ我慢させない」


 けれど。


 それを受け取るべき妻は、何も答えなかった。


 クロードは、ゆっくりと顔を上げた。


 紫色の瞳に、暗い光が宿っていた。


「……だから、戻ってこい」


 その声は、祈りではなかった。


 命令に近かった。


「戻ってきてくれ、セリア」


 彼は、棺に額を寄せた。


「今度こそ、間違えない」


 長い沈黙。


 やがて、クロードは低く呟いた。


「……お前を苦しめた者は、私が裁く」


 その言葉を聞く者は、誰もいなかった。


 妻も、答えなかった。


 けれど、クロードの中では、すでに何かが決まり始めていた。


     *


 翌朝。


 大公家の名を冠した命令書が、帝国各地へ送られた。


 セリア・ヴァレンティア大公妃の生前の待遇について、徹底的に調査せよ。


 不当な扱いをした者は、身分を問わず処分する。


 命令書を受け取った役人たちは、困惑した。


 大公妃は、すでに亡くなっている。


 なぜ、今さら。


 けれど、誰も異議を唱えられなかった。


 命令を出したのは、帝国最強の大公だった。


 北方の反乱を鎮圧し、数々の戦場で勝利を重ねてきた男。


 皇帝でさえ、その力を無視できない存在。


 その男が、妻の死を境に変わり始めていた。


 それから数週間。


 最初に処分されたのは、慈善院への支援を不当に削減していた地方官だった。


 次に、寄付金の一部を横領していた役人が逮捕された。


 さらに、大公妃の名を利用して私腹を肥やしていた貴族が、皇帝の裁可を経て爵位を剥奪された。


 そこまでは、正当な裁きだった。


 だが。


 やがて、調査の対象は広がっていった。


 セリアの要望を後回しにした者。


 彼女の訪問を軽んじた者。


 彼女の名を、陰で嘲笑した者。


 そして。


 彼女が苦しんでいたことを、知りながら何もしなかった者。


 クロードは、彼らを許さなかった。


 誰もが、恐れ始めた。


 大公の怒りが、どこまで広がるのか。


 誰にも、わからなかったからだ。


     *


 その夜も、クロードは妻の棺のそばにいた。


 窓の外では、雨が降っていた。


 彼は、白い花を一輪、新しく花瓶に挿した。


 セリアが好きだったという、白い花。


 それだけは、毎日欠かさず用意させていた。


「……今日は、少しだけ進展があった」


 彼は、棺に語りかけた。


「お前が支援していた慈善院の、燃料費が確保できた」


 返事はない。


「温室の修繕も命じた。春には、花が咲くだろう」


 彼は、かすかに笑った。


「……見に行こう、セリア」


 沈黙。


「お前が目を覚ましたら、一緒に」


 クロードは、透明な蓋に手を置いた。


 冷たい感触が、掌に伝わる。


「……約束する」


 彼は、目を閉じた。


「今度こそ、必ず幸せにする」


 その言葉は、誰にも届かなかった。


 氷の棺の中の妻は、何も答えない。


 そして、クロードは知らない。


 彼が毎晩話しかけている相手が、本物のセリアではないことを。


 彼が蘇らせようとしているのが、精巧に作られた魔導人形であることを。


 彼の妻は、すでに遠い隣国で、新しい名前を手に入れている。


 朝には市場へ出かけ、焼きたてのパンを買い、花屋の店先で足を止めている。


 大公妃セリアとしてではなく。


 リリア・ベルという、一人の女性として。


 けれど、帝国最強の男は、まだ知らない。


 自分が失ったのは、妻の命ではない。


 妻が自分のそばにいたいと思う気持ちだったのだと。


 その事実に気づくまで、彼の怒りは止まらない。


 やがて帝国の人々は、彼をこう呼ぶことになる。


 ――狂鬼の暴君、と。



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