第5話 冒険者ギルド
「冒険者の仕事は危険と隣り合わせだ。十分な準備、慎重な判断、余裕を持った計画、それらが生き残るためには必要だ。そのためには・・・・」
初心者講習の教官の説明が始まった。まずは、冒険者としての心得から説明していくようだ。
「薬草採取について説明する。薬草の採取は、薬草の種類によって違う。その違いを頭に叩き込んでおかないと、ちゃんとした報酬が貰えないから気をつけろ。・・・・」
続いて、教官は薬草採取の注意点について説明する。
「お前たちは、冒険者として、ひよっこだ。背伸びして討伐依頼を受けることはない。しかし、この中には、腕に自信がある者もいるだろう。だが、腕に自信があるからといって、実力以上の依頼は受けるな。冒険者が遭難すると、ギルドに迷惑がかかる。下手をすると、ギルドから賠償金を請求されることもあると覚えておけ。・・・・」
「以上だ。質問がある者はいるか?」
説明が終わった後の質疑応答で私は手を挙げた。
「素材の買い取りは、どこへ持っていけばいいんですか?」
「討伐部位は、受付カウンター。それ以外の素材は、受付カウンターで札を貰って、裏の解体場に持ち込めばいいぞ」
「ありがとうございます」
この後、他の参加者から幾つかの質問があり、講習会は終わった。
これで冒険者の登録は終わったので、宿に戻った。
エヴァにギルドでの出来事を伝え、パンズとダルクに再会したことも伝えた。
キキーラとシルカは落ち着いているようだ。
明日は、エヴァが冒険者登録に行く。そして、明後日には、私かエヴァが冒険者として討伐の仕事を始める予定だ。
エヴァは、私と違って魔法使いの格好をしている。剣士の格好をしている私よりも絡まれやすいかもしれない。
バンズたちには、明日はエヴァが来るから気を付けておいてと言っておいたから、ギルドで待機しているはずだ。まあ、絡まれたからといっても、私と同じステータスを持つエヴァに勝てる冒険者がいるわけはないから、心配するだけ無駄というものだ。
翌日、
「帰ったわよ」とエヴァ。
「お帰り。絡まれなかった?」
「全然、多分、ロープで顔を隠していたからよ」
「そうなの?私も、ロープで顔を隠そうかな」
「イヴまで、魔法使いの格好をするのは変よ。それこそ、本気でスカウトされかねないから、止めた方がいいわ」
「本気で言った訳じゃないわよ、それより、バンズたちは居た?」
「居たけど、目で挨拶しただけで、話はしていないわ」
「あなた、バンズたちと仲が悪かった?」
「そんなことはないけど、バンズたちの主人はイヴだもの」
「そう。でもエヴァも私な訳だし」
「魔法を使っているのはイヴだからね。私とバンズとは、いわば同僚で、あなたが社長なのよ」
「う〜ん。エヴァからはそう見えている訳ね。分かったわ」
それからキキーラに向かって
「キキーラ、調子はどう?」
と聞く。まだ顔色が優れないキキーラが、
「そうね。夜にうなされることが減った気がする。でも、こんなによくしてもらっていいの?あなたたちは、私たちとは、縁もゆかりもないのに」
「行きがかりだからね。あなたたちを放っておくのは、私も気持ちが良くないし。私たちが勝手にやっているのだから、気にしないでゆっくり静養して」
「ありがとう。甘えさせてもらうわ」
キキーラとシルカには、夜に、軽い睡眠魔法をかけている。でないと、夜にうなされるのだ。キキーラにかける睡眠魔法はだいぶ弱くしているが、シルカにかける睡眠魔法は、いまだに強いままだ。
今夜も、キキーラとシルカに睡眠魔法を掛けて眠らせた。
次の日は、朝からギルドに向かう。
依頼ボードに向かうと、一昨日の揉め事を知っている冒険者たちは、私から一定の距離を取る。そんなときにバンズたちが私に近付いてきた。
「これはイヴさん。今日から討伐ですか?何なら、俺たちも一緒に行きましょうか?」
「あれ、バンズさんに、ダルクさん。あなたたちと一緒なら心強いわね。お願いするわ」
「それで、狙うのは何にします?」
「このゴブリン討伐くらいが手頃かしら」と私は言いながら、常設依頼のゴブリン討伐を指差した。
「常設依頼なら、依頼票の手続きも要らないし、手頃ですね」
と言うバンズの言葉にダルクも頷いている。
「討伐証明は右耳ね。なら、行きましょう」
と私は言って3人の先頭に立ってギルドを出た。
そんな3人を見送ったギルドに居た冒険者たちは、互いに顔を見合わせながら、
「どういう組み合わせだよ、あれ?」
「何で、あんな可愛い娘が、あんな物騒な奴らと仲良さそうにしているんだ?」
どうやらバンズとダルクは、荒くれ者の冒険者ですら、物騒な奴と思うほどの面構えをしているようだ。
「それは、一昨日のいざこざのせいだぜ」
「ああ、あの娘が絡まれているところをあの2人が助けたからな」
「助けたって?あんな物騒な奴らがか?あの娘は、騙されているんじゃないか?」
「助けたことで、あんなに仲良くなれるんなら、他の奴らは何で助けなかったんだ?」
「絡んでいたのが、ポイズンスネークだったからだ」
「ポイズンスネーク。最近Bランクになったというあの連中か?」
「ああ、そのBランクだ。それがあの2人組みに、一瞬でやられた。いくら後ろからの不意打ちだといっても、たった2人で4人を一瞬で制圧したぞ。しかも、その2人は、もう冒険者は無理じゃないかと言われている」
「何をされたんだ?」
「1人は顔の骨を砕かれた。人前に出られない顔になったって話しだし、もっと困るのは、飯が食えないらしい」
「そいつは酷いな。どうやって顔面を砕いたんだ?」
「分からねぇ。何かのスキルじゃないのか?」
「もう1人はどうなったんだ?」
「ああ、リーダーのゲイブスか。奴は利き腕が腐っているらしい。しかもその腐れがだんだん肩に登って来ていて、放っておいたら全身が腐るだろうと言われているぞ」
「それは、呪いか何かか?」
「それをあの2人がやったというのか?」
「いや、リーダーを呪ったのは、あの娘だと言う者もいる」
ギルドに居た冒険者たちは、互いに顔を見合わせながら、あいつらには関わらないでおこうと心に決めた。




