第34話 外伝4 ヒュプノス覚醒
夜になって眠ると、私はヒュプノスとして、夢の中で目覚めた。
夢の中でのヒュプノスの全能感が凄い。
なるほど、夢の中で出来ないことはないと言っていたが、確かにその通りだ。
その通りなのだけども、所詮、夢は夢。目覚めれば、儚く消えてなくなるものでしかない。
つまり、夢の中で何をしても、現実そのものを変えることは出来ない。
例外があるとすれば、私に吸い込まれる前のヒュプノスが言っていたように、人の魂を夢の中に閉じ込めることぐらいのようだ。これは、人の死というカタチで、夢が現実に直接介入出来る唯一の手段だ。
もっとも、これは、夢で直接的な影響を与える場合で、夢の中で情報を聞き出したり、間違ったことを信じ込ませたり、何かを知らせたりといった間接的に影響を与える、つまり夢魔としての本来の力は優れているようだ。
だけど、人の夢に干渉するには、その人物の側に居るか、側にアンカーがなくてはならない。
アンカーは、魔石に魔法陣を描き込んで造れるが、相手の側に置いてこなければならない。これらの知識は、ヒュプノスが私に吸い込まれたことで、私に流れ込んできた。
夢の中での出来事が、現実に影響を与えないとしても、夢の中で得た知識や経験は、起きても無くならない。それなら、夢の中で知識や経験を得ればよい。そして、今、私が夢のなかで出来ること、それは本を読むことだった。
魔法使いの部屋で、たくさんの書物や羊皮紙を見つけている。それを読もうと思った。
書物や羊皮紙に書かれているのは、私の知らない文字だったが、ヒュプノスには読める文字だったので、それらを読みふけった。
夢の中での時間と、現実の時間は違う。
何日もかけて読みふけっても、起きてみれば、たった一晩の夢でしかない。しかし、知識は頭の中にしっかりと残っている。
私は直ぐに、その知識を書き留める。
知識を書き留める方は、手作業だから時間がかかる。丸3日、不眠不休で書き続けて、やっと覚え書きが完成した。
覚え書きを書くのに使った羊皮紙とインクは、この部屋にあるものを勝手に使った。
ここにあった書物には、魔術と錬金術など、私の知らない魔法のことが、たくさん載っていた。
書かれていた魔術に死霊術があった。
えっ、魔法と魔術は、同じじゃないかって?
書物に書かれていた内容を魔術という風に読んだのは、ヒュノプスであって私ではないので、その違いは私には分からない。
魔術というのは、この世界の今の時代では失われた知識なのかもしれない。
さて、私は、エデンの園でスキルの実から死者蘇生と蘇生者支配を得ているが、死者を死者のまま使役する死霊術は得ていなかった。
蘇生者支配は便利なようだが、使い勝手の悪さもある。
蘇生させた者は、生きているので、当然、飯を食う。つまり、蘇生者を増やすと、その分、衣食住を確保しなければならず、蘇生者の数を抑えておかなければならないという面倒な面があった。
だが、死者、つまりアンデッドなら、食事も、眠りも不要。維持費ゼロの軍団が出来る。死体さえあれば、アンデッドはいくらでも生み出せる。そして、死体は、地獄の揺籠に行けば、いくらでも手に入る。
さらに、書物には高位アンデッドの生み出し方も書いてあった。
高位アンデッドといえば、やっぱりリッチだ。
この場所には死体がなかったので、眷属化している擬態スライムと朱雀蜘蛛を1体ずつ召喚して、ここを守らせ、私は地獄の揺り籠の拠点に転移した。




