第33話 外伝3 ヒュプノス
魔法使いが用意した100体の死体を貰ったことにして、反魂魔法を使った、
魔力をごっそり持っていかれた気がするが、あの相手も、この魔法が使えるほどの魔力の持ち主であったわけだ。
それで、この魔法を使った結果はというと、目の前に銀色の少女がいた。
全身が銀色、腰の下まである長い髪も銀色で、その髪が裸の身体を隠している。
顔は大人になればさぞかし美人になりそうな整った顔立ちに、幼さを残した美少女だった。
「あなたは、誰?」
驚きを押さえながら、何とか声を搾り出した。
「私は、ヒュプノス。100人の人間の魂の残滓を元に、タナトスの呪文によって、あなたの魔力を注ぎ込まれて生まれた夢の精霊。人によっては、夢魔と呼ぶ者もいる」
その言葉に、浮かんでいた100体もの死体が、消え去っていることに気付いた。しかし、今の私には、もっと気になる言葉があった。夢魔という言葉だ。
「夢魔?あなたには実態があるの?」
夢魔は夢の中だけに存在できると思ったからだ。
「あると言えばあるし、ないと言えばない。私の姿は、あなたにしか見えないから」
「私にしか見えない?だとすると、あなたは、私の味方?」と聞くと、ヒュプノスは小首を傾げて、
「当然。私は、あなたの魔力で出来ている。だから、あなたは私。私はあなた」
「謎かけのようなことを言うのね。よく分からないけど、味方でよかったわ。私のことはイヴと呼んで」
というのは、反魂魔法を使ったときに、セニアの変身が解けて、イヴの姿に戻っていたからだ。
「分かった。あなたはイヴ」とヒュプノス。受け答えが、無機質と言うか、自動反応みたいで、ロボットと会話しているようだ。
「それでタナトスというのは誰?」
「私を生み出す呪文を書いた魔法使い。あなたが消滅させた」
「その呪文に命令とか、制約とは設けられているの?」
「私を制約するものは何もない」
「ところで、あなたは何が出来るの?」と聞くと、
「私は夢の番人。あなたが眠ったら、夢の中で私として目覚める。私になったあなたは、夢の中で出来ないことはない。例えば、誰かを夢の中に閉じ込めるとか。あなたが夢の世界に誘い込んで閉じ込めた魂は、あなたの許しがないと、夢の世界から出られない」
「魂を夢の世界に閉じ込めたら、どうなるの?」
「魂が入っていた肉体は、早ければ3日で、遅くても10日で死ぬ」
「その間、目を覚ますことはないということね」
「魂が抜けた身体は目覚めない」
そこまで会話すると、ヒュプノスは私の中に吸い込まれるようにして消えた。
「ヒュプノス?」
と叫ぶと、
『あなたが眠ると私になれる。そのときに、知りたいことをしればいい』
と頭の中で言葉が聞こえて、それっきり、いくらヒュプノスを呼んでも応えがなかった。
ヒュプノスの能力は、随分と物騒なようだ。
こんな強力な存在を創り出せる魔法使いは、本当に何者だったのだろう?
私自身が眠るまで、ヒュプノスは呼び出せないようなので、魔法使いが魔法を開発していた部屋を調べることにした。
死体が100体置いてあった部屋は、空間が拡張されており、外からは5メートル四方の大きさに感じられるが、中に入ると大きな体育館ほどの広さがある。
そして、幾つかの小部屋が付随していて、どの部屋からも、分厚い本や羊皮紙の巻物がどっさり見つかった。
私には、内容が全く分からないが、ヒュプノスなら分かるかも知れないと思い、全て収納に仕舞い込んだ。
さらに、幾つかの小部屋は、化学の実験室かと思うぐらいに、大小様々なガラスの器、ビーカーやら試験管の代わりのようなものが大量にあり、様々な色の液体やゲル状の物質などもあり、鑑定してもよく分からないものばかりだったが、これらもまとめて収納に仕舞った。
そして、空間透視や魔力視、熱感知など、感知系スキルを総動員して、見逃しているものはないか探した。




