第30話 乗合馬車事業を手に入れる
ベレトの意見を聞き終わり、彼が部屋から出て行ったところで、バルバトスとの話を再開した。
「それで、いかような命令を?」とバルバトスは、これからどう動くのかを聞いてきた。
「こうなったら、この王国の乗合馬車事業を全て買い占めるわよ。そのための商会を立ち上げて頂戴。代表者はあなたがやって」
「私がですか?商売なら、バンズの方が向いていますが」
「バンズは表の商売をさせておくから、カーミラブール商会から外せないわ。あなたには、別の商会名で、裏の商売をやってもらういたいのよ。脅し、乗っ取り、殺し屋の始末、相手の組織を叩き潰して乗っ取ることを専門とする商会をね」
「暗殺ギルドか闇ギルドみたいなものですな」
「そうよ。ただし、暗殺ギルドや闇ギルドと決定的に違う点があるわ」
「それは、どのような?」
「金では雇えないということよ」
「なるほど。我らはセニア様のために働いておりますからな」
「まず、名前は何でもいいから組織をつくって、エルセラムから王都までの9つの街の裏社会を押さえてもらおうかな。まず、斥候を放って下調べをして計画を練って頂戴。人員なら500人ほど用意できるから。それと、いずれは、この王国全土が対象になるかもしれないから、いいえ、きっとなるわね。だから、組織の拡大と事業の拡大を念頭に置いておいてね」
「王都は、どうされます?」
「王都は、まだ手を出さないわ。情報収集してからね。王都以外の都市は、あなたがいれば、問題はなく制圧できるでしょうけど、王都には、どんな戦力が潜んでいるのか、今は分からないからね」
「いよいよ、国盗りですな。そうなると、拠点は、地獄の揺り籠にしますか?こんな平地では、軍隊に攻め込まれたときに防衛できません」
「そうね、あそこは好きじゃないけど、防衛の観点からすれば、あそこしかないわね。あそこなら、どんな間諜も入って来れないし」
「確かに。擬態スライムと朱雀蜘蛛が、見張っていますからな」
「あなたの後任として、新市街地を束ねていける人材を直ぐに選べる?選べるようなら、ここに呼んで。強化するから」
「分かりました。先ほどのベレトは、今回の作戦の参謀として私の側に置きますから、別の者を呼びましょう」
バルバトスは立ち上がって、ドアを少し開け、ドアの外に向かって、
「ゼバルを呼べ。急げ」と大声で叫んだ。
暫くして、渋い中年といった感じの男が部屋に入って来た。
「ボス、お呼びですか?」
「ゼバル、セニア様だ。挨拶しろ」
そう命令された男は片膝を着き、
「セニア様に忠誠を」と言って、頭を垂れた。
「あなたを強化するから、ステータスを見るわね」
そう言いながら、片膝を着いてうつ向いている男の頭に手を当てて、スキルを付与した。
名前 ゼバル
種族 人間(蘇生者)
性別 男
年齢 37
レベル 69
クラス アサシンナイト
HP 151(+?)
MP 71(+?)
STR 99(+?)
DEF 96(+?)
VIT 98(+?)
AGI 103(+?)
DEX 91(+?)
INT 72(+?)
スキル
暗殺剣Lv13
暗器術Lv12
投擲lv17
身体強化Lv18
回避Lv15
暗視Lv8
豪拳瞬蹴Lv9
記憶Lv18
隠密Lv20
回復大(NEW)
思考加速(NEW)
並列思考(NEW)
完全異常耐性(NEW)
皮膚筋肉硬化(NEW)
(状態:被蘇生者支配、支配者イヴ、被支配効果:スキル(経験値増加、成長加速)借用)
暗殺剣というスキルも剣術の上位スキルで、それがLv13もある。バルバトス並みに強いんじゃないかと思う。
この後、地獄の揺り籠に、バルバトスを連れて転移した。
現在の地獄の揺り籠は、私が送り込んだ、擬態スライムと朱雀蜘蛛各10体が制圧してそのまま居座っており、他の魔物も人間も入らせていない。アンデッドについては、番犬の代わりになるので放置している。
転移したのは、迷宮の最深部の女郎蜘蛛の魔物が巣喰っていた部屋だ。この部屋は聖域結界を張っているため、アンデッドも入って来れない。その部屋を拡張して、新しい組織の拠点として使うことにした。
バルバトスと相談しながら、収納から300体の死体を出し、次々と蘇生し、蘇生者支配していく。
そして、バルバトスに収納スキルを付与して、必要な物資、人数分の服や武器、当分の間の食料や活動資金を渡して、組織と行動計画が出来たら私に知らせて、すぐに活動を始めるように命令して別れた。
数日後、バンズが、エルセムラの乗り合い馬車の買収が済んだと報告してきた。
乗合馬車は、その街の領主が発行する免許状を買った者が運営権を持つが、免許状は、毎年、入札があって、領主はそれで儲けている。
免許状を買った者には、乗合馬車を運営する権利と義務が発生する。乗合馬車は儲けの薄い商売なので、入札で免許状を買ったものの赤字だから売りたいという者は後を絶たず、免許状の転売は禁止されていない。
そんな事情があるから、好条件で免許状の買取を持ち掛けたら、直ぐに商談が成立したそうだ。
乗合馬車事業を買い取ると、御者も雇ってくれと言ってきたので、乗合馬車の御者は既に用意しているので、他の仕事でよければカーミラブール商会で雇ってもいいと返事すると、その御者は腹を立てて、他の街に行くと啖呵を切って、御者の雇用の話はなくなったということだ。その御者は、間違いなく、乗合馬車犯罪グループの一員だったのだろう。
その後、冒険者のグループが、今まで乗合馬車の護衛をやってきたから、これからも護衛をやってやると高飛車に言ってきたが、こちらで護衛として用意した元暗殺ギルドの殺し屋たちに引き合わせたら、尻尾を巻いて帰ったということだ。
その冒険者を、その日の夜に殺して、蘇生支配して情報を吐かせた。
すると、面倒なことに、この冒険者を乗合馬車の護衛に推薦していたのが冒険者ギルドだということが分かり、彼らが護衛に採用されなければ、冒険者ギルドがカーミラブール商会にクレームを入れる予定だったことも分かった。
やっぱり冒険者ギルドが犯罪の背後にいた。
犯罪グループの目論見では、明日は、カーミラブール商会と冒険者ギルドが対決することになるが、そうはさせない。
こいつらは、明日の朝一番で隣の街ベラリアに向かわせるので、冒険者ギルドの企みは空振りに終わり、クレームをつけられなくなるというわけだ。
本当に、この冒険者たちは、殺して、蘇生者支配して正解だったわけだ。
こいつらは、時期が来たら処分するが、それまでは、冒険者ギルドへのスパイとして働いてもらうとしよう。
エルセラムの乗合馬車事業は、カーミラブール商会が買い取り、御者も護衛も、商会から出しているので、乗客を狙った犯罪の心配がなくなった。
とはいえ、女1人の乗客が乗るときには、残りの乗客が全て犯罪者で固められているかもしれないので、護衛の数を4人に増やし、1人は馬車の後ろから騎馬で付いていく体制にしている。
馬車の中の護衛が不意打ちで殺された場合の対応策だ。
カーミラブール商会の護衛はかなり強いので、犯罪グループに不意を突かれるとは思えないが、万が一ということもある。
馬車自体、側板、後ろの扉、御者席との仕切り板に、鉄板を打ち付けて、後ろの扉を外から閉めれば、犯罪者を閉じ込めることが出来るように改造しており、犯罪グループが、仮に、馬車内の護衛を制圧しても、馬車の外に護衛が2人と御者が残っているので、犯罪者は逃げられないということを見せつけているのだ。




