第3話 囚われの少女2人
エデンから追放された直後の森で数日間留まり、自分たちがどれくらい戦えるか確認した後、東側にある街に向かうことにした。
飛べるスキルとしては、飛翔、天駆のほかにエンゼルウイングを持っている。この他に、飛べるほどではないが、空中に浮かび上がる浮遊、空気を踏んで走ったり歩けたりする空歩というスキルもある。
『エンゼルウイング』
そう念じると私の背中に白い大きな翼が生えた。
一見、本物の翼のようだが、服や革鎧を透過して生えている魔力で出来た翼だ。
こんな翼を出さなくても飛翔スキルで飛べるのだが、この翼にも飛翔スキルがあるので、飛翔力が倍になるのと、飛行中は風魔法の結界が展開されるので、高速飛行での空気抵抗が無くなり、超高空でも呼吸ができ、寒さに凍えることもないなど、安全性が高まるからだ。もちろん、精霊結界で身を包んでも同じ効果がある。
そして、インビジブルを使って魔物に見つからないようにし、精霊結界で身を包んでおく。
街は、相当に離れていて、3昼夜飛んだ。
そして、街からかなり手前で地上に降り、そこからは森の中を歩いて行くことにした。
その理由は、街の近くでどんな魔物が棲んでいるのか知っておくのと、街の近辺の魔物の素材を集めるためだ。
また街に入る前に、この世界の人間を見つけて、言葉が通じるかどうかも確認しなければならない。
街からまだ距離もあるので、2人で大樹の上方の枝に立って、空間透視で森を調べる。
空間透視は、障害物があっても透過して見ることが出来るスキルで、千里眼のようなスキルだが、見透せる距離は500メートルほどと限られている。
それでも樹や岩などの陰に隠れている魔物が見えるので、便利なスキルだ。
流石にこの辺りまで来ると、危険な魔物はおらず、オークやゴブリンやウルフやベアなど、弱い魔物の生息地になっていた。
森を調べる目的の一つは魔物の確認だが、実はもう一つ目的がある、それは、悪い奴らを見つけてお金を頂くことだ。
ラノベに盗賊を襲って溜め込んだ金を奪う話が出てくるので、それを真似しようというわけです。
しかし、空間透視は500メートルしか届かないので、盗賊探索の効率は悪い。
とはいえ、分身と2人でインビジブルのまま空を飛び、1人が地上を空間透視で調べ、もう1人が周囲を警戒するといった役割分担で効率よくサーチしていると、ついに、盗賊を見つけた。
盗賊をどうして見分けたのかって?
洞窟の奥で、少女を檻に入れて監禁していれば、言い訳出来ないよね。
こいつらを懲らしめて、少女たちを助け出そう。
そう決めると私たちはすぐに、盗賊たちがアジトにしている洞窟に向かった。
インビジブルと隠密はずっと使い続けているので、そのまま接近しても気付かれることはないはずだが、一旦、近くの大樹の枝に降り、暗くなるのを待つ。
夜になって寝静まった頃、漸く出撃です。
作戦は単純。インビジブルでこちらの姿は見えないので、近付いて魔法で倒す。主力にする魔法は、空間斬と闇魔法のダークランスだ。アイスランスやロックランスは、物質のため、衝突音がするが、この2つの魔法にはそれがない。肉の裂ける音までは消せないが、無視できる範囲だ。
盗賊のアジトになっている洞窟の前まで来て、エヴァと手分けして、2人の見張りの喉を空間斬で掻き切り、心臓をダークランスで撃ち抜く。
その2人は倒れるところを収納に仕舞う。
ほとんど無音で倒したが、勘のいい奴が気付いたかも知れないので、空間透視で内部の様子を探る。
盗賊たちに動きはないので、そのまま洞窟の中に入り、眠っている盗賊たちの眠りを闇魔法に属する睡眠魔法で深くしてから、片っ端から殺していった。殺した死体は全て収納に放り込み、空間透視で洞窟の内と外を確認する。
もうこの洞窟で生き残っているのは、洞窟の奥にある檻に入れられた2人の少女たちだけだった。
盗賊を眠らせた睡眠魔法が、少女たちにも掛かってしまい眠り込んでいる。
少女たちを檻から出す前に、盗賊たちが溜め込んでいた財産を回収して収納に仕舞い込んだ。盗賊は、それほど溜め込んでは居なかったが、この世界の硬貨が手に入ったのは嬉しい。
次にやることは洞窟内の浄化だ。
汚い男たちが大勢住み着いていたので、悪臭が酷い、床などドロドロの上に、盗賊たちを殺したときの血が飛び散っていて、血臭だけでも頭がクラクラするほどだ。
そこで聖魔法に属する浄化魔法をかけて綺麗にした。
その後、檻の扉の鍵を空間斬で切断して、2人の少女たちを檻から運び出した。
睡眠魔法が解ける前に少女たちのことを鑑定しておく。
名前 キキーラ
種族 人間
性別 女
年齢 17
レベル 7
クラス 剣士
HP 32
MP 8
STR 10
DEF 8
VIT 9
AGI 12
DEX 7
INT 6
スキル
剣術Lv4
名前 シルカ
種族 人間
性別 女
年齢 16
レベル 6
クラス 魔法使い
HP 15
MP 38
STR 3
DEF 3
VIT 2
AGI 5
DEX 6
INT 11
スキル
火魔法
ファイアボールLv2
「レベルがずいぶんと低いわね」
「弱いから盗賊に捕まったのかも知れないわよ」
「なるほどね。さて、最初に催眠を掛けて、いろいろ聞き出しておきたいわ」
私はキキーラを、エヴァはシルカを受け持ち、睡眠魔法を解いて2人を起こし、催眠を掛ける。
催眠に掛かった2人から、この世界のこと、2人のこと、盗賊のことなどをいろいろ聞き取った。
私たちが居るのは、ミリデウス王国という国で、彼女たちはその王国の東南の端にあるエルセラムという街の冒険者として活動していたらしい。パーティには、彼女たちの他に3人の男がいたが、盗賊に襲われたときに殺されて、この2人は女だからという理由で殺されずにアジトに連れて来られたらしい。
捕まってからどれくらい経つのかは分からないが、2カ月以上は経つだろうということだった。
彼女たちが属している冒険者ギルドから捜索隊は出ないのかと聞くと、ギルドから指名依頼を受けているなどの特別の事情がない限り、行方不明だからといって捜索隊が出されることはないという。さらに、行方不明になって1週間以上経てば、死亡したか他所へ移動したとして扱われるという。
いちばん気掛かりな、彼女たち自身の出自を聞くと、街の近くの村の出身だった。貴族とかでなくて安心した。
最後に、硬貨の価値、街への入り方、冒険者ギルドの登録の仕方、宿屋の料金など細々したことも聞き出した。
その後、催眠を解除して、彼女たちと話し合おうとしたが、2人とも「死にたい、死にたい」と泣き喚くばかりだった。
気持ちが落ち着くのを待つために一晩、洞窟で過ごしたが、翌朝になっても正気には戻らなかった。
正気を失くしているからといって、ここに置いていくわけにもいかないので、軽く洗脳して、無理矢理正常な振る舞いをさせることにした。
彼女たちの正気が戻らなければ、お荷物になるだけだが、正気に戻るまで面倒を見ることにした。




