第28話 犯罪は元から断たなきゃ
とにかく、この犯罪グループは撲滅しないといけない。
しかし、乗合馬車という交通機関そのものが犯罪に加担しているから、簡単にはいかない。
この乗合馬車のネットワークが全て、犯罪グループに加担しているのか?それとも、たまたま、私がそういう被害に遭っただけなのか?
暫く考えてもよい考えが浮かばなかったので、行きがかり上、目の前の犯罪グループを始末することにした。
本当にクズな奴らだ。尋問しているうちに、腹が立ってきたので、範囲指定した氷魔法で心臓を凍らせて、全員殺した。
その後、蘇生支配して、ユルスクの街に行って、お前たちの仲間を殺せと命令して、私が乗っていない馬車に乗り込ませて、次の街ユルスクに向かわせた。
その日の夕方、ユルスクの乗合馬車事務所で、チンピラ同士の争いが起きた。
私が蘇生支配してユルスクに向かわせた犯罪グループの奴らが、仲間に襲いかかったからだ。
その結果、二十数人が死んだ。私が蘇生支配した奴らは全員死んだようだ。クズが掃除出来たからよしとしよう。
この調子で、犯罪グループを見つけては同士討ちをさせたら、クズの数が減っていくだろうが、新しいクズが置き換わるだけかもしれない。
乗合馬車を組織的に押さえることは出来ないか?しかし、そんなことをすれば、確実に目立つ。何処かの貴族が介入してきかねない。
どうしたものか。いい知恵がないものか?
しかし、悩んでばかりもいられないので、エルセラムまで、街から街へと、インビジブルを使いながら飛び、乗り合い馬車を見つけては、上空から空間透視で見張るが、犯罪現場には出くわさなかった。女の1人旅は、それだけ珍しいということか。
そうやって馬車を見張りながら、街から街へと飛行して、遂にエルセラムに戻って来た。
エルセラムでは、すぐにエヴァの家に転移し、分身を解除した。
これで、私とエヴァは、あらゆる情報と経験を共有したので、改めて分身してエヴァを出す。キキーラは、すっかり元気になっており、シルカも冒険者を続けたいと言うぐらいに精神が安定してきた。
この2人が弱いままだと私のアキレス健になりかねないので、そろそろスキル付与で強化することにした。
名前 キキーラ
種族 人間
性別 女
年齢 17
レベル 7
クラス 剣士
HP 32
MP 8
STR 10
DEF 8
VIT 9
AGI 12
DEX 7
INT 6
スキル
剣術Lv4
回復中(NEW)
身体強化(NEW)
回避(NEW)
気配察知(NEW)
危機感知(NEW)
完全異常耐性(NEW)
毒耐性(NEW)
名前 シルカ
種族 人間
性別 女
年齢 16
レベル 6
クラス 魔法使い
HP 15
MP 38
STR 3
DEF 3
VIT 2
AGI 5
DEX 6
INT 11
スキル
魔力操作(NEW)
魔力回復(NEW)
魔力感知(NEW)
完全異常耐性(NEW)
毒耐性(NEW)
火魔法
ファイアボールLv2
土魔法
アースバインドLv1(NEW)
聖魔法
聖域結界Lv1(NEW)
翌日、エヴァたち3人は、ゴブリン狩りに出かけた。
トラブルを避けるため、冒険者ギルドには寄らず、直接、森に入って行く。
エヴァの眷属のデビルアイが、5体着いているので、心配はないだろう。
一方、私の眷族のデビルアイ35体は、私の周囲に散開している。
エヴァたちを送り出した後は、どうしても、乗合馬車のことに考えが向かってしまう。
完全な解決を目指すなら、各街の乗り合い馬車事業を買い占めるほかはない。
各街の乗合馬車事業は、領主が事業の免許状を発行しており、その免許状を、毎年、事業者者が入札して手に入れる仕組みになっているという。
そのため、乗合馬車事業は、街によって、商業ギルドが運営していたり、御者組合が運営していたり、商会が運営していたりと、いろいろのようだ。
運営母体が統一されていないので、街毎にローカルルールがまかり通っている。そのため、どこの街でも、乗合馬車の管理が杜撰になり、犯罪グループが堂々と女を襲っているのだ。
しかし、これを正すのは、国の規模の仕事になってしまう。
とても今の私の手には負えないが、まず、このエルセムラの街の乗合馬車事業を手に入れて、次々と各街の乗合馬車事業を制圧していくしかないと思った。
私は、カーミラブール商会の本部店舗3階の部屋に転移して、セニアに変身した。ここでは、私はセニアなのだ。
部屋は、私がいつ戻って来てもいいように、毎日掃除され、空気も入れ替えられていたようだ。身の回りの世話をするために買った2人の少女奴隷が、今でも、休みなく働いてくれている。
この建物の私の部屋は、私とカーミラ以外には、身の回りの世話をさせている奴隷の少女以外は入れない。
今のカーミラブール商会は、蘇生支配した配下だけではなく、一般の従業員も150人ほど雇っており、本舗の建物も両隣の敷地を買い取って増築している。
商会の者は、カーミラが王都に旅立つ前の数カ月間、カーミラと常に一緒に居たセニアの顔をよく覚えいて、私を経営者の1人だと認識している。
バンズたちからは、本来の私の姿ではないセニアの姿でもいいから、私に、この街に居て欲しいとせがまれている。支配者の姿を常に見ていたいとのことだ。
カーミラブール商会は仲卸業者として、多彩な品を扱っている。
奴隷商の認可は真っ先に取っているが、その後は、穀物、鉱石、石材、木材、馬、薬剤、綿織物の認可を取っている。
宝石と塩と絹織物は、高位貴族が独占しているので、騎士爵のブールでは、認可申請すら出来ないらしい。
それでも、材木と石材と綿織物の売買で、大きな利益を出している。
新市街地の外れに材木の保管所を持っている老舗の材木商を、木材の在庫ごと買収しており、毎日、大きな荷馬車で材木を運び出している。主な買い手は、街道沿いの街にある家具職人や新築増築を請け負った大工だったりする。
認可が不要な、農具や肥料の扱いも多い。食糧品では、タロ芋のような芋も扱っているが、贅沢な貴族は、不味くて食べないので、これも認可が要らない。
このエルセラムの街での日々の売買の金額と相場の台帳が、毎日、2階の執務室に届けられる。この他に、娼館や奴隷商会からも日々の帳簿が回ってくる。バルバトスからは、壁外の店舗の売り上げ台帳が届けられる。
カーミラがいるときに、一緒に見ながら、金額をチェックしていたのが、今はバンズが処理するようになっている。
私が誰かと話をしたいときは、私の部屋から直接通じているカーミラの部屋を改装したオーナ室を使う。
そして、今、そのオーナー室に入り、念話でバンズに来るように伝えた。
空間透視で、バンズが2階の執務室で、売り上げ帳簿の処理をしているのは分かっている。
「お帰りなさいませ、セニア様、この度は、いかようなご命令ですか?」
と、床に片膝を着くバンズ。
無駄話が一切なく、要件だけを聞いてくる。
その姿勢は有難いが、味気はない。しかし、余計なことを聞いてこない姿勢は好感が持てる。
「相談事があるから、座って話しましょう」
執務机の前のソファに対面で座ると、
「バンズは、この国の犯罪事情について詳しい?」と聞いてみた。
「犯罪事情と言いますと?」とバンズは首を傾げる。
「実はね、乗合馬車が、女の乗客を狙って襲っているのよ」
「乗合馬車が女の客を襲うというのは、御者と護衛がですか?」
「それが、乗客もグルなのよ」
「乗客が?」バンズが意外なことを聞いたという風に眉を顰める。
「乗客といっても、乗客の振りをした犯罪者の一味ね。女の乗客がいると分かったら、他の乗客を押しのけてかどうか分からないけど、馬車の乗客を犯罪者だけで固めるのよ。たぶん、乗合馬車は、夕方に付くから、名簿を見て女の乗客が続けて乗るようなら、夜が明ける前に一味で席を確保してしまうんだと思う」と憶測を述べる。
「この犯罪を何とかしたいんだけど、背景が分からなくて」と説明すると、
「それなら、バルバトスのところにいるベレトが何か知っているかもしれません」
「ベレトね。分かったわ。後で、バルバトスのところに行ってみるわ。それで、この乗合馬車の犯罪だけど、許せないから潰したいのだけど、犯罪は国中に広がっているらしいのよ。だから、まず、ここエルセラムを起点に、乗合馬車事業を手に入れていこうと思うの。この街の乗合馬車事業を買収して傘下に収めて頂戴。買収したら、御者と護衛は、うちの人間を使ってね。雇いはダメよ。護衛は、とくに腕の立つのを4名使って欲しいの。待機させている者の中から選んでもいいし、バルバトスのところからスカウトしてきてもいいわ。ギルドの冒険者は絶対に使わないようにね。それから、隣の街のベラリアの乗合馬車事業も買収して傘下に入れて欲しいの」
「買収は、力尽くでもよろしいのですか?」
「今は脚力穏便にやって。相手が応じないときは、カーミラに工作させるわ」
「畏まりました」
「直ぐに取り掛かってね」
さて、バンズの買収工作が上手く行くのかは見ものだ。もっとも、今のカーミラブール商会に正面から逆らう奴等が、エルセラムにいるとは思えないけれど。




