第25話 試運転
正直、私の立ち位置は難しい。
彼らはブールのパーティメンバーであり、彼らに、私とブールの関係を知られると面倒だ。
それなら、この話を聞かなければ良かったんだが、あのときの私は、何を血迷ったか、話を聞くことに同意をしてしまった。
「それじゃあ、私たちと臨時パーティを組んでくれることで、いいわね」
他のことを考えているとアニタが確認してきたので、
「はい。臨時パーティに加入しますので、よろしくお願いします」と頭を下げた。
「それじゃあ、ギルドで登録しましょう」とアニタが言うので、
「あの、私の魔法は確認しなくてもいいんですか?」と聞く。
相手の実力も確認しないでパーティに誘うなんて、ちょっと抜けている連中じゃないないかと思う。顔には出さないけれど。
「ああ、そうだな。それじゃあ、修練場で雷魔法を見せてもらうか。新進の冒険者リブさんの実力のお披露目だな」
とカーゴが無邪気に笑いながら立ち上がったので、
「はい、見てもらいたいと思います」
と応じて立ち上がり、修練場に向かった。
途中でギルドの受付で鉄兜を借り、修練場に向かうと、ホールに居た冒険者たちがゾロゾロと着いて来た。
「最速Cランクのリブ様の魔法が見れるんだ。運がいいぜ」
「あの髪の毛が逆立つやつか?」
「お前も、雷魔法を撃ってもらえよ。髪の毛が逆立ったら笑ってやるからよ」
無責任な冗談と笑い声が後ろで飛び交っており、最後の冗談に私はクスリと笑ってしまった。
修練場に着くと、真ん中を空けてもらって、地面に鉄兜を置くと、私も出来るだけ下がる。
「皆さんも、出来るだけ下がって下さい。何発か撃ちますので気を付けて下さいね」
と注意を促し、
「では、行きます」
と声を掛けてから右の掌を前に突き出し、
「落雷」と呟くと、地上2メートルぐらいのところから鉄兜に雷が落ちた。
その様子を見て、壁際まで下がっていた冒険者たちが、ざわついた。
「あれが雷魔法か。初めて見た」なんていう声が聞こえてくる。
「今度は、少し強く撃ちます」
と言って、また右の掌を前に突き出し、
「豪雷」と呟く、
今度の落雷は激しかった。直径30センチぐらいの稲妻が見え、ズババーンという形容し難い大音響がして、雷に撃たれた鉄兜は、地面から1メートルも跳ね上がった。
これを見た冒険者たちはみな青ざめていた。
「あんな魔法を撃たれたら、即死だぜ」
「ああ、オークだって即死する威力だ」
「流石は、最速Cランクだ。直ぐにBランク確定だぜ」
と嬉しい賞賛の声が聞こえた。
私は、金翡の盾の面々を振り返って、
「まだ、見ます?」と聞いた?
すると、「まだあるの?」とアニタが聞き返して来る。
また、見学の冒頭者がざわつく。
「まだ、あるのかよ?」
「今度は、何だ?」
という声が聞こえてくる。
私は、また右の掌を前に突き出して、
「放電」と呟いた、
私の右の掌から稲妻が飛び出して、鉄兜に当たり、鉄兜を跳ね飛ばした。
「横にも撃てるわけ」
「これくらいでいいかしら」と聞くと、
「十分、戦力になるわ」
アニタからお墨付きをもらい、私は、金翡の盾の臨時のパーティメンバーになったのだった。
「右から、3体来るわよ」とアニタが前方から逃げて来る。オークを釣って来たのだ。
「よし、任せろ」とカーゴが大盾と短剣を構えて前に出て、その横をアニタがこちらに逃げ込むように擦り抜けるて後方に下がる。
ガサガサと右前方の茂みが揺れて、オークが3体飛び出しで来た。
オークの攻撃に備えて力を溜めるカーゴ。その斜め後で、剣を構えているテオドール。
後数歩までオークが来たところで、「今だ、リブ」とテオドールが叫ぶ。
私は、右の掌をつきだして、別に突き出さなくてもいいのだけど、「豪雷」と呟く。
ビシャーンと音がして、上からの3発の稲妻がそれぞれのオークを貫いて、オークは棒立ちになる。
そこにカーゴが盾で突っ込んで、先頭のオークを盾の中央の突起で抉りつつ、跳ね飛ばすして、後続のオークとまとめて転がす。
テオドールがその後に続いて、突っ立っている3匹目のオークの首を刎ねる。
その間に、カーゴが、跳ね飛ばした2匹のオークに、短剣でとどめを刺していった。
「楽勝だったな」とテオドール、
「ああ、オーク3匹がこんなに簡単に倒せるとはな。これもリブの豪雷のお陰だ」とカーゴ。
「よし、今日はこれで引き揚げよう。さて、解体するか」テオドール。
私が「あの、解体のやり方を知らないので」と言うと、
「アニタと一緒に周囲を見張っていてくれたらいい。解体は、俺たちでする」とテオドールが答えて、カーゴと2人でオークの解体を始めた。
オークの解体といっても、全部の肉を切り取るんじゃなくて、心臓部から魔石を抜いて、太腿と上腕分の筋肉の塊を切り取るだけで、後は穴を掘って埋めていた。
私が、オークの死体が埋められた地面を見ていると、
「人手があれば他の部分も持って帰るけどな。俺たちは少人数だ。この腕と腿の筋肉だけでも、そこそこの金になるからな」とテオドールが教えてくれた。
私がオークの死体を埋めた場所を見ていたのは、そういうつもりではなくて、死体を蘇生してみたかっただけなのだけれど。
こうして、私が臨時パーティとして参加した初めての狩りは成功のうちに終わった。




