第24話 金翡の盾
「そうだ、いいことを思いついたぞ」とカーゴ。
「何だよ。また、いつもの下らない思い付きじゃないだろうな」とテオドール。
「あのリブという子を臨時パーティに誘ったらどうだ?クラリスが勝手に抜けて、俺たちだけじゃ人数が足りないからな」とカーゴ。
「そうだな。いつ帰ってくるのか分からないクラリスを待ってはいられないな」とテオドール。
「そうね。Bランクだといっても、所詮、冒険者はその日暮らし。Aランクのブールみたいに、稼ぎのいい指名依頼が来るわけないしね」とアニタ。
「俺だって、一月も遊んでたら金が尽きちまうぜ」とカーゴ。
「だけど、あの子はまだCランクだぜ。俺たちの狩りについてこれないんじゃないか?」とテオドール。
「だからこそ、いいんだよ。俺たちと一緒に狩りをして、Bランクを目指さないかって誘えば、一発で着いてくるって」とカーゴ。
「何よ、それ。カーゴ、本当は、あの子を狙ってるんじゃないの」とアニタが眉を顰めてカーゴを見る。
「いやいや。違うって」と両手を目の前で振って否定するが顔が赤くなっている。
「はん、下心丸出しね」とアニタは軽蔑の眼差しになった。
「カーゴに下心があったとしても、あの子を誘ってみるのは悪くない思いつきかもな」とテオドールが助け舟を出す。
「Bランクの狩りに誘える人材がソロでいることは珍しいものね。彼女なら、もうすでに、いくつかのパーティが声を掛けたけど断られたっていうわよ」とアニタが指摘する。
「だけど、それはCランクパーティの話だろう。Aランクは、どのパーティも、今は王都に居ないし、Bランクパーティで人手に困っているところはなさそうだしな」と、アニタに撃沈されたカーゴが復活してきた。
「でも、彼女が癒し魔法を使えるという情報はないわよ。雷魔法は使えるみたいだけど」とアニタが懸念を口にする。
リブが雷魔法を使えることは、リブが初めてギルドに現れたときに、絡んだ冒険者の髪が逆立ったので、確認済みの情報になっていた。
「癒し魔法が使えなくても、雷魔法が使えるならいいんじゃないか。クラリスが居ないと、残りのメンバーは近接戦闘職ばかりだしな。雷魔法で足止めが出来たら、その間に俺とテオドールで倒せるし」とカーゴが力説する。
「やけに熱心ね。でも、魔法使いが必要だというのには賛成するわ」とアニタ。
「よしそれなら、さっそく誘いに行こうぜ」
とカーゴは、アニタが賛成したので嬉しそうに宣言した。
私が依頼ボードを見ていると、
「リブさん、少しいいかしら」と話しかけてくる女性がいた。
「私はアニタ、金翡の盾の斥候をやっているわ。あなたと少し話がしたいのだけれど、時間を貸してくれるかしら?」
不味いブールの仲間が話しかけてきたと思ったが、顔には出さずに、
「え〜と、私に何か用ですか?」と、出来るだけ平然としながら答えた。
「あちらの席で話さない?」とアニタが顔を向けた酒場には、大柄な筋肉の塊と背の高い細マッチョの2人の男が座っていた。
「あっちにいるのは、パーティ仲間よ。彼らも、あなたと話しがしたいの。どうかしら?」と重ねた聞いてくる。
これはどう見てもパーティへの誘いのようだ。ここは、断るべきかと一瞬悩んだが、むしろ、良い機会かもしれないと考え直して、
「分かりました。お話をお伺いします」と答えた。
アニタはニッコリと微笑んで、
「着いて来て」と言って酒場に向かい、私もその後から着いて行った。
アニタと私が、空いている椅子に座ると、
「金翡の盾の仲間よ。自己紹介して」とタニアが男たちに言う。
「俺はカーゴだ。タンクをやっている」と筋肉の塊のような大男。
「俺はテオドール。剣士だ」と背の高い細マッチョ。
「ご丁寧にどうも。リブです」と私は頭を下げた。
「もう、察しはついていると思うけど、これは勧誘よ。私たちと臨時パーティを組む気はないかしら?あくまでも、臨時なのは申し訳ないのだけど」とアニタが頭を下げる。
「そんな、頭を下げるのは止めてください。私のような格下に声を掛けてもらえるだけで名誉ですのに」と私が答えると、
「えっ、それじゃあ、受けてもらえるのか?」とカーゴが嬉しそうな声を上げる。
私はチラッと大男を見て、こいつ私に気があるなと憶測しつつ、
「金翡の盾の方々と、臨時とはいえパーティを組めるなんて、思ってもいませんでしたし、正直、今でも戸惑っていますけど、これ、揶揄ってたりしてないですよね」と念を押した。
「揶揄うなんて失礼なことはしていないわ。真面目な話なのよ。実は、今、金翡の盾はこの3人しか居ないの。後の2人は、私用で暫く離脱しているのよ。それでどうしても戦力不足なの。それであなたが加わって、魔法を使ってくれたらなって思ったの。雷魔法が使えるんでしょう」とアニタ。隠し事をしないあけすけな性格のようで、チーム事情をせきららに語ってくれたことに好感を持った。しかし、同時に、警戒心が足りないとも感じた。いくら格下相手でも、油断しすぎだと思いつつ、口では、
「私が雷魔法を使えることをご存知なんですね」と下手に出ておく。
「そりゃ、人前であんなのを使ったらな。でも、良い手だったと思うぜ。つまらない奴らには、警告になったみたいだし」とテオドール。
私が、登録時に絡まれたときのことを言っているらしい。
「ありがとうございます」と謙遜しておく。




