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エデンの園の理不尽な力  作者: 肩ぐるま


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第21話 穀物卸問屋

カーミラブール商会が、最初に国に申請したのは、奴隷商の認可だった。

穀物など他の商材を扱うには、大勢の人手が居る。人材の乏しいというか、ほとんどいないカーミラブール商会で扱えるものとなると、とりあえずは、奴隷ということになる。奴隷なら、奴隷を置いておく建物一つあれば商売が出来るからだ。


申請は無事に通り、カーミラブール奴隷商会が立ち上がった。

カーミラは、早くも奴隷商館に転用出来そうな空き家を見つけて買い取り、地下に奴隷を置く檻を入れて奴隷商館の体裁を整えた、

このカーミラブール奴隷商会から一番多く奴隷を買ったのは、実は、カーミラブール商会だった。

実はこの奴隷商館は、私が収納に死蔵している盗賊たちを、合法的に壁内に入れて私兵にするのをカモフラージュする役目も果たすものだった。

どういうことかというと、まず、私の収納にある死体を蘇生者支配して、それを壁外のカーミラ奴隷商会が、仕入れた奴隷に仕立てて商会に置く。

次に、壁内のカーミラブール奴隷商会が、それを格安で買い付け、壁内に運び込んで商品として店に置く。最後に、それを、一般客としてのカーミラブール商会が買う。

全くの自作自演だが、これで、死蔵されていた盗賊たちが、合法的な奴隷として壁内で活動出来るようになるのだ。わけが分からないと言えば、分からないだろう。マネーロンダリングの人間版と思っておこう。世の中、複雑なのだ。

合法的に買い取った奴隷なら、堂々と商会の護衛に当たらせることが出来る。

そのため、カーミラブール商会の施設には、過剰なくらいの奴隷の護衛がいることになった。


壁内のカーミラブール商会は、仲卸商会本舗、従業員宿舎、娼館「貴婦人の歓待」、雑貨小売店×2軒の4店舗、1施設を有し、これとは別にカーミラブール奴隷商会がある。

そして、カーミラブール商会として買った奴隷は約60人だ、

護衛を兼ねた従業員として、商会本舗に20人を置き、娼館に20人、雑貨店に各1人、そしてカーミラ奴隷商会に8人を貸し出し、残りの10人は新店舗用として、従業員宿舎に待機させている。


カーミラによると商会として大きくなるには、穀物の卸問屋にならなければならないらしい。

穀物はそのまま兵糧になるから、穀物の卸問屋は、国や貴族に対しても影響力を行使出来るという。

しかし、穀物の卸問屋になるには、大きなハードルが幾つもある。

まず、穀物の仕入れ先を確保しなければならない。そして、仕入れ先は、大規模な農園を持つ高位貴族になるから、高位貴族と交渉出来なけれならない。

そして高位貴族と交渉するならば、ただ金を積むだけでは相手にしてもらえない、

権威か名声か立場のいずれか、あるいは、その全てが必要となる。

しかもその際には、この国内の全ての貴族領の農園で、何が、何時、どれだけの品質と収穫が見込めるのかに通じ、その買値と売値の相場にも通じていなければならず、また、周辺国の穀物の出来不出来と相場についても通じていなければならない。しかも、それは今年だけではなく、5年は遡って、国内外の収穫と相場の値動きを答えられないようでは、高位貴族との交渉において恥をかくだけである。

さらには、買付けた穀物を、いかに運搬し、保管するするのか。自前のキャラバンと護衛部隊、さらに自前の倉庫群、それらすべてを持っていなくては、相手にもされない。

それだからこそ、とカーミラは言う。

「穀物の卸問屋でなければ、真の商人としては扱われないし、だから私は、穀物商にならなければならない」と。

私はカーミラの見識の高さに驚いた。

だが、その望みを実現するには、相当の年月がかかるだろうし、広い国内の全ての貴族領、全ての農園に情報網を張り巡らすのは、私の眷属を使っても不可能だ。

一介の商人たちが、そのような情報を集めることが出来ているとしたら、それは国の機関や貴族たちから情報を貰っていなければ出来ることではない。

そして、国や貴族とそういう関係を築くには、それなりに時間がかかる。

「何か策があって言っているの?」と問うと、

「いきなりは無理ね。だけど、王都の中堅どころの商会の支店がエルセラムにあって、その支店を御曹司が任されているのよ。そして、今、その商会に目を付けているの。そこを手に入れることが出来たら、王都に進出出来るわ」

「王都の中堅どころといえば、エルセラムの大手より格上になるわけでしょう。目算はあるわけ?」

「そこの御曹司が、うちの娘に入れあげているのよ」

「その御曹司に、何かしたの」

「勿論よ。魅了を使ったわ。御曹司が入れあげている娘は、娼婦には見えない娘でね。その娘を身請けさせるつもりなの」

「その御曹司は、結婚しているの?」

「御曹司といっても40過ぎだからね。妻子持ちよ」

「それで、身請けさせてどうするの?」

「その娘は隠れ蓑なの。あの男の家族を騙すための目眩しよ。うちの娘を身請けさせたら、直ぐに離婚させて、うちの娘と結婚させる。それで、あの商会は乗っ取れるわ」

「悪いことを考えるのね」

「女がこの世界でのし上がって行くには、他に手がないでしょう」


その会話から間もなく、カーミラが話していたドリップ商会の御曹司ランド・ドリップが離婚し、娼婦上がりの女と結婚したことが、エルセラムと王都の商人の間で、スキャンダルとして口端に登ったが、直ぐに忘れ去られた。

ドリップ商会の父親は、ランドの再婚に猛反対して盛大な親子喧嘩をした挙句、脳溢血で倒れて、そのまま逝ってしまったということだ。

そして、カーミラはいつの間にか、ドリップ商会の顧問の地位に着き、ドリップ商会の本舗がある王都に旅立った。


エルセラムの事業は壁外から呼び寄せたバンズとダルクとセゲールが、カーミラブール商会の番頭となって事業を引き継いでいる。

バンズが仲卸業を、ダルクが奴隷商会を、セゲールが娼館を、それぞれ引き継いだ。

壁外の事業は、全て、バルバトスに面倒を見させることにした。

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