第17話 新しい支配者
カーミラを蘇生者支配したことで、予想を超える収穫があった。
それはカーミラが、私が初めて得た、新市街地の支配者層の人材だったからだ。
カーミラから、この新市街地の支配者たちの顔ぶれ、裏組織との金のやり取り、取り決めごと、裏社会の資金源などについて、いろいろ聞き出せた。
そういった情報の中で最も価値があったのは、娼館の経営と娼婦たちについての情報であり、カーミラには、経営者や女将を失くした娼館の買収と、逃げ出した娼婦の回収に当たらせた。
このどさくさに、何処の娼館でも大半の娼婦が逃げ出していたが、カーミラが好条件で迎えると貼り紙を出すと、多くの娼婦が戻って来た。その中には、他の娼館から逃げ出した者も大勢おり、カーミラには全て召し抱えろと命令しておいた。
資金なら、地獄の揺り籠の暗殺ギルドの地下の本部からも大金を回収しているので、資金は十分にある。
こうして新市街地のメイン産業の娼館は、襲撃があった次の日から、以前と変わらず店を開けて客で賑わったが、その夜までに、新市街地の娼館の半分はカーミラが買収しており、残りの半分もバンズとダルクが始めた闇金融から金を借りて急場をしのぐしかない状態となり、新市街地の勢力地図は大きく変わっていた。
カーミラによる他の娼館の買収は、平穏に進んだわけではない。
幾つかの娼館では、居なくなった経営者を継いだと自称する者が現れて抵抗しようとしたが、バルバトスが手勢を率いて、後継者を自称する者を殺して回ったので、新市街地の新しい力関係は、1日で決定した。
被害が著しいのは娼館だけではなかった。夥しい数がある飲食店は、襲撃者に店のストックを呑み尽くされ、食い尽くされた上に、店主を殺された店が多く、当分は再開出来ない店が多かった。
飲食店については、私は手を出さず、バンズたちの闇金融からの融資だけに留めておいた。
奴隷商館の多くも荒らされたが、奴隷たちは、檻に入っていたのが幸いして無事だった。とはいえ、殺された奴隷商も多く、残された奴隷をどうするのかという問題が残されたが、そこは、カーミラに上手く立ち回らせて、経営者が居なくなった店の多くの奴隷を手に入れただけでなく、幾つかの奴隷商館を手に入れた。
バルバトスも、戦闘のどさくさに紛れて10数軒の酒場を支配下に組み入れ、新しい拠点とする大きな酒場も手に入れていた。
バンズとダルクは、壊滅した裏組織が拠点としていた建物を占領し、金貸しの看板を上げた。
セゲールたちは、半分が燃えて焼失した貴婦人の宴館に拠点を置くことにし、新しい部屋をつくる形で娼館の修繕を始めた。
こうして私の支配は一気に拡大したが、あの襲撃を逃れた、元からの支配者たちも多く残っていた。
元からの支配者たちは、彼らの利権の多くが一夜で失われたことに驚くとともに、目覚ましく活躍しはじめたカーミラを取り込もうと動き始めたが、この試みは、ことごとく失敗していた。
その理由は、カーミラが私の支配を受けていることと、彼女を大幅に強化しておいたことによる。
超回復Lv1
思考加速Lv1
並列思考Lv1
視覚強化Lv1
聴覚強化Lv1
気配察知Lv1
警戒Lv1
危機感知Lv1
魔力感知Lv1
完全異常耐性Lv1
毒耐性Lv1
身体強化Lv1
怪力Lv1
剛体Lv1
皮膚筋肉硬化Lv1
俊敏Lv1
回避Lv1
豪拳瞬蹴Lv1
感知系のスキルをたくさん付与しておいた。これで不意打ちに遭いにくくなるだろう。さらに、完全異常耐性と毒耐性。レベル1では、全てを防ぐことは出来ないが、睡眠薬や毒薬による攻撃から身を守れる確率が高くなる。最後は、身体強化と格闘技系だ。
既に暗殺者が送り込まれ始めており、飲み物に毒を混ぜられたり、腹をナイフで刺されたりしている。
毒を盛られたときは、完全異常耐性と毒耐性で、毒消しポーションを飲むまで持ち堪えた。腹を刺されたときは、身体強化、剛体、皮膚筋肉硬化で、ナイフが僅かしか刺さらずに済んだし、その刃に塗られていた毒にも耐えた。そして、剛拳舜蹴で暗殺者を撃退している。
しかも超回復で浅い傷は、すぐに治った。
これがあってから、インビジブル化したデビルアイを彼女の護衛に着けた。
私の視幹に魔力糸で結合しているデビルアイは、17体から35体に増やしている。そのため、自分自身の目からの情報以外に、35の目からの情報も常に脳に入ってくる。最初は、制御出来なかったが、日に日に並列思考がレベルアップして、今では余裕で処理できるようになっている。
デビルアイの視幹の有効範囲がほぼ500メートル、これにデビルアイによる空間透視の有効範囲500メートルを足すと、半径1キロ、直径2キロの範囲を、一歩も動かずに監視出来る。そして、この壁外の街は、新市街地とスラムを含めても南北1キロぐらいの大きさしかないから、私は、新市街地の何処にいても、この街のほぼ全てを空間透視で見張れる状態になっているのだ。
デビルアイを使った情報収集はとても便利で、もう止められないほどだ。私自身がデビルアイズになってしまわないか心配だけども。
襲撃のあった翌朝には、壁内の街から領軍と衛兵隊が新市街地に入って来て、被害の酷さと死体の多さに驚いていたが、すぐに死体の回収と、昨晩の襲撃についての聞き取り調査を始めた。領軍や衛兵隊の幹部たちは、誰が襲撃者を撃退したのかを知りたがったが、何が起きたかを知っている者は皆無だった。
バルバトスやバンズやカーミラたちは、そんな衛兵の目の前で、この街の支配を推し進めていたわけである。
私は、貴族と関わりたくないので、壁内の街には、手を出していない
それに、私自身はバルバトスの新しい拠点の地下室の奥で、デビルアイで壁外の街を監視しているだけだ。誰にも知られないように動いているので、私の存在がバレることはないだろう。
エヴァたちのことはほったらかしだが、シルカの回復に時間が掛かっているので、そのまま静かにしているようにと指示しておいた。




