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エデンの園の理不尽な力  作者: 肩ぐるま


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第16話 新市街地の勢力争い

この人間スタンビードは、バルバトスファミリーが、勢力を広げる絶好の機会だった。

スラムの真の支配者だった『地獄の揺り籠』の暗殺ギルドが壊滅し、そのどさくさに紛れて、新市街地の下部組織も壊滅させた。

『地獄の揺り籠』から逃げ出した賊の半分以上は、私の眷属たちが殺しているが、その一部は蘇生させて蘇生者支配し、新市街地の裏組織を襲わせて、その縄張りを奪い取っていった。もちろんインビジブル化した私の眷属たちも、彼らに同行して手伝っている。


新市街地の住人も反撃しており、迷宮から抜け出した100人ぐらいは地元の住人と争って殺されているが、その死体には手をつけていないし、壁内に流れ込んだ者たちは無視している。

一方、新市街地の住人の被害は大きく、死者は300人を超えているが、実は200人以上は私たちが殺したものだ。

とはいえ、『地獄の揺り籠』から溢れた賊の大半を殺したのも私の眷属たちなので、それがなければ、新市街地の死者は千人を超えていたのは確実だ。


こうして、スラムの裏社会は実質、私の支配下に入った。もっとも、私のことは誰も知らない。表の顔はあくまてバルバトスたちだ。

私は、配下の者たちを、バルバトスのグループ、バンズとダルクのグループ、セゲールとポディスとキセラワの3つのグループに分けて、蘇生者支配した200人ほどを配下として付けた。

グループを分けたのは、私なりのリスク分散だ。

完全な武闘派のバルバトスには、縄張り争いの主導権を待たすべく、荒事が得意な子分を多く付けた。

バランスと堅実さのバンズとダルクには、闇金融や奴隷売買を仕切らせるために、策士タイプの子分を多く付けた。

セゲールとポディスとキセラワには、盛り場や娼館の切り盛りが出来る連中を子分に付けた。

この3つのグループで、新市街地の裏社会を押さえにかかるつもりだ。

新市街地を牛耳っていた奴らは、昨夜のどさくさに紛れてかなり殺したが、全てを殺しきれた訳ではないし、上手く立ち回っていて、尻尾を掴ませていない奴もいるかもしれない。

そういう奴らを炙り出すには、焦ることはない。バルバトスたちが、このまま勢力を広げていけば、行く手に立ち塞がるカタチで、向こうから現れるだろう。

それを一つ一つ潰していけばいい。


新市街地で最も繁盛していた娼館「貴婦人の宴館」が、不運なことに一番大きな被害を受けていた。

途方に暮れている「貴婦人の宴館」の女将をデビルアイで確認した私は、セゲールたちのグループに、この女将を連れて来るように命令した。


火事の焦げ臭さが残る1階ホールの階段に座って、「貴婦人の宴館」の女将カーミラは、茫然としていた。

扉が壊れて開けっ放しになっていた入り口から、10人ほどの男が入って来た。

見たことがない顔だと思ったが、何の用かと聞く気にもなれなかった。

もうすぐ30に手が届くという歳で、ここまで登り詰めたと思ったら、奈落の底に突き落とされた。雇っていた娼婦の半分が死に、残りの娼婦は皆逃げて、誰も戻ってこない。大金を掛けた建物は、半分燃えてしまった。売り上げは全部奪われ、女たちの身売り証文は、賊たちに面白半分で燃やされた。

何もかも失った、ケツ持ちの組織の者も、この娼館で大勢死んでいる。

そんな女将に、近付いてきた男が言った。

「あんたが、カーミラか。娼館が燃えたのは災難だったな。しかし、もっと悪いことを教えてやろう。この辺りを仕切っていた奴らは、もう居ないぞ。これから、この辺りは俺たちのシマだ。嫌なら出て行け。だけど、俺たちに協力するなら、後ろ盾になってやってもいいぜ。この建物も直してやる。返事を聞かせろ」

と上から目線で言い放ったのはセゲールだった。

階段に腰掛けた女は気だるそうに顔を上げて、

「あんたは誰だい?大口を叩くもんだね」と応じた。

「返事を聞かせろ。俺たちの提案が嫌なら、追い出すだけだ」

「はっ、誰だか分からない相手の施しを受けるほど落ちぶれちゃいないよ」とカーミラ。

「分かった。それが返事だな。おい、連れて来い」

セゲールが後に並んでいる手下に声を掛けると、手下が2人、カーミラの両脇まで来て、カーミラの左右から脇に手を入れて無理矢理立たせた。

「何するんだよ、誰に手をかけてるのか分かっているのかい?」

女は金切り声を上げたが、両脇の男に持ち上げられて、足をバタつかせながら、セゲールの前まで連れて来られると、セゲールは女の髪の毛を片手で掴むと、もう一方の手に持っていた布でカーミラの口を塞いだ。

「むっ、むっ、むっ」

カーミラは、それから流れようとして身体を捻ったが、すぐに力を失ってぐったりした。女の口を塞いだ布には、眠り薬が染み込まされていたようだ。


セゲールが、気を失った「貴婦人の宴館」の女将カーミラを運んで来たのは、私が待機しているバルバトスの酒場の地下室だった。

セゲールの手下がカーミラを床に下ろすと、私は側にいた朱雀蜘蛛に、首を噛ませて殺させた。そしてすぐに蘇生させて、蘇生者支配で配下にした。

こうして私は、新市街地で一番人気のあった娼館「貴婦人の宴館」とその女将カーミラを手に入れた。

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