第10話 次の獲物
翌朝、17体のデビルアイのうち5体を、エヴァの視幹に結合させて、私は12体を10メートルほど頭上に浮かべて宿を出て、昨日の約束通り、街の門の外でバンズとダルクと落ち合った。
「街から少し離れたら話があるの」
と2人に告げてから、どんどん街を離れていく。バンズたちも足早に私に着いてくる。街から少し離れてから森に入り、漸く足を止めた。そこでバンズ達に振り返って、
「あなた達に確かめておかないといけないことがあるんだけど、洞窟の奥に捕まっていた女の子が居たでしょう。あなた達も、あの子たちとやったの?」と問い詰めると、2人は顔色を変えて、互いを見た後で、
「はい、やりました」
「はい、お、俺もです」
と2人は、自分たちの非を認めた。
私は渋い顔になって、
「キキーラたちは、この後、冒険者として独り立ちさせたいのよ。だけど、彼女があなたたちの顔を覚えていたら、出会うと彼女の精神がまたおかしくなるわ。それを考えると、あなたたちには、冒険者を辞めて他のことをして欲しいんだけど、いいかしら?」
2人とも「イヴ様の仰せに従います」と言うので、
「このエルセラムの街には、南門の外に歓楽街が広がっているでしよう。そこにスラムもあるわよね。あなたたちは、そっちで地盤をつくってくれないかな。壁内にいると、キキーラたちと顔を合わすと具合が悪いからね」と言うと、
「南門の外というと新市街地と呼ばれているところですね。娼館とスラムと裏組織の巣窟と聞いています。その場所で、どの程度の地盤をお望みですか?」とバンズ。
「裏社会での活動の下地づくりってとこかしら」
「俺たち2人だけということなら、無理があります」とダルクが答えた。
「昨日の話の続きになりますが、裏社会の人間を、私たちのように支配されたらいかがですか?」とバンズ。
「それは、考える余地があるわね」
私は、バンズの言ったことを暫く考えた。
「何をするにも、もう少し人手が要るわね。分かったわ。私も冒険者の活動はいったん辞めて、もう一度、盗賊を探して、人材と財産を手に入れることにするわ。人手を増やすまでは動き出さないでね」と、私の考えを伝えた。
「それと、裏社会にいながら、手を汚さずに金を稼ぐ方法はないかしら?」
「手を汚さないとなると、春を売ることしかないでしょう」
「娼館経営ね。私には出来そうにないわ」
「娼婦を仲間に引き入れて、その者に娼婦の組織をつくらせたらいいかと」
「そうね。それはおいおい考えるとして、私は、これから盗賊狩りに出掛けるわ。今日は、あなた達を、こんなところまで連れて来て悪かったわね。昨日、この話が出来たら良かったんだけど、あの後、キキーラ達を見ていて気が付いたことだから」と弁解した。
「いえ、これぐらい街から離れていないと、誰かに聞かれては不味い話しですし」とバンズ。
「分かりました。それでは、俺たちは街に戻ります」とダルク。
「ちょっと待って。軍資金を少し渡しておくわ」と私は彼らを引き留めて、皮袋に入れた銀貨を差し出す。
「いえ、イヴ様から頂くわけにはいきません」と首を振るバンズに、
「今日の稼ぎをフイにしたんだから、貰っておいて」と言って、彼らに押し付けると、ダルクが渋々受け取った。
街に戻っていくバンズたちを見送りながら、私の頭上で待機している12匹のデビルアイ達に、森の中の盗賊のアジトを探すように命令した。
デビルアイは全部、私から離れたので、今の私の護衛は革鎧の外側に張り付かせている擬態スライムだけになった。擬態スライムは1体でもかなり強力な魔物だが、もう1体護衛をつくっておこうと思う。
まず、幻影スキルを使って周囲に幻影空間をつくる。これで、私を見張っている者がいたとしても、私の姿を見失った筈だ。もっとも、誰かが見張っているなんてことはないのだが。そして、この幻影空間の中で、朱雀蜘蛛という魔物を蘇生させて支配した。
朱雀蜘蛛は翼のある蜘蛛で、高速で飛翔し、空中戦と樹上戦を得意とする魔物だ。大きさは1メートルくらいしかないが、知能が高く、単分子の糸を尻と口から吐き出して樹々の間に張り巡らす。この単分子の糸は、目には見えず、どんなに硬いものでもスパッと切ることが出来る。森の中でのゲリラ戦になれば、デビルアイズを除いて、最強と言っていい魔物だ。
私はインビジブルで姿を消したまま、エンゼルウイングで飛翔しながら、デビルアイに探索させながら移動していく。
私の下では、朱雀蜘蛛が周囲を警戒しながら、梢から梢へと渡り、身を隠しながら飛んでいる。
デビルアイの視幹の有効範囲は500メートル。さらに、500メートル先まで透視できる空間透視をデビルアイに付与したので、捜索範囲は半径1キロに拡大している。
とはいえ、広大な森の中では、この捜索範囲は狭過ぎる。
最初の3日間は、成果が無く、夜は精霊結界の中で、浮遊しながら眠った。
4日目に、やっと盗賊のアジトが見つかった。
幸い捕まっている者は居ない。
私は、盗賊のアジトを見つけたデビルアイを目印にして朱雀蜘蛛と擬態スライムに触れて、一緒に転移した。
デビルアイは空中にいるので、私の転移先も空中だ。私は浮遊しているし、擬態スライムは私の鎧に張り付いており、朱雀蜘蛛は羽根があるので、今の私たちは飛行部隊だ。
さて、空中から空間透視でデビルアイが見つけた洞窟の中を観察する。
洞窟の中の盗賊は30人を超える規模だ。
流石に、デビルアイを通して鑑定は出来なかったので、ここから自分が空間透視を使って鑑定するとにした。
前に盗賊を殺したときは、鑑定でステータスを調べずに殺してしまったので、蘇生する人材を選べなかった。
バンズとダルクは顔が凶悪過ぎないからと選んだが、いい人材だったのは本当に、たまたまだっただけのことだ。
しかし、全員が起きているときに鑑定すると、誰か勘のいい奴に気付かれる恐れがあるので、盗賊たちが寝静まるのを待った。




