9話 婚活2
モンパトワル子爵様のことが気になり、従兄のシリルお兄様から情報を聞き出していると……
「おやおや。デルフィーヌは意外と美形好きだね?」
「そ、そんなことはないけれど? 私は年齢がちょうど良いと思っただけよ」
(美醜で相手を判断するような軽薄な娘だと、シリルお兄様に思われたくないわ!)
でも従兄のいう通り、私の興味を引いたのはモンパトワル子爵様の魅力的な容姿だったから。私は恥ずかしくなり、熱くなった顔を扇でパタパタとあおぐ。
「君と相思相愛だったセルジュ卿は家柄以外に、何の取柄も無く地味で平凡な令息だったからなぁ…… イケメンのモンパトワル子爵に、惹かれる気持ちは理解できる」
「シリルお兄様、お口が悪いわよ?」
(まぁ、ひどい言われようだこと。お兄様にはセルジュがそんな風に見えていたのね?)
思わず私はプッ! と吹き出した。
「そうかい? せっかく僕がエスコートするんだから。美人で聡明なデルフィーヌには、セルジュ卿よりも良い男を選んで欲しいからね」
元婚約者のセルジュはすべてにおいて平凡で、私とは釣り合わなかったと。
どうやら従兄のシリルお兄様は、婚約解消で落ち込む私を励まそうとしているらしい。
「もう、お兄様ったら……!」
両親は自分たちが溺愛する妹のほうが美人だから、私を勉強以外で褒めてくれたことがない。
私だって年頃の娘だから。美人で魅力的だと言われれば…… 例えそれが単なるお世辞でもすごく嬉しい。
その単なるお世辞でさえ、何かと優先される妹がいるから。私は言われたことが無いのだ。
「良いじゃないか。デルフィーヌはもっと高望みしても良いぐらいだよ」
「お兄様はお世辞がお上手ね……?」
「ふふっ…… それにしても、モンパトワル子爵は目を引く美形だね」
「ええ。とても魅力的だわ」
綺麗に日焼けした野性的な浅黒い肌に広くて逞しい肩。驚くほど足が長く周囲にいる男性たちより頭1つぶん背が高い。
肩より長めの艶やかな黒髪はうなじでむすび。野性的だけど優雅さも合わせ持っている。
真っすぐ通った鼻筋に、シャープな頬から顎までのラインも美しい。
「ああいう美しい男性が選ぶ女性は…… いったい、どんな人かしら?」
神秘的なアメジスト色の瞳から放たれる力強い輝きは、獲物を狙う獰猛な肉食獣のようにするどい。
あの瞳で一心に見つめられたら、こちらからはきっと視線を外せなくなるだろう。
「うう~ん…… ステキだわぁ……」
(今までセルジュ以外の男性に興味を持たないようにして来たけれど。気になるわ! あれだけ魅力的なら借金さえ無ければ、モンパトワル子爵様はとっくに結婚していたのでしょうね)
私以外にも周囲の女性たちが、子爵様のことを気にしてチラチラと見ている。
「ねぇ、お兄様? モンパトワル子爵様を紹介して下さらない?」
シリルお兄様に美人だと褒められ、気を良くした私は素直にお願いした。
……するとお兄様は私から目をそらし、急に困った顔をする。
「あ────…… すまない。散々、子爵が美形だと言っておきながら、なんだけど。彼は君にすすめられないよ」
「……なぜ?」
「彼には男色家ではないかと…… ウワサがあってね」
「えっ⁉」
(男色家というと…… つまり同性愛者? 女性を愛せない男性? それで独身なの⁉ ……あんなに素敵なのに残念だわ)
「あくまでもウワサだからね。真偽はわからないけど。 昔…… 学園で友人とそういう関係だったらしいと、僕も人から聞いた話だから」
「学園? ずいぶん、古いウワサよね?」
(だって子爵様は私よりも、10歳ぐらい年上でしょう? だから10年ぐらい前のウワサ…… よね?)
「確かに古いけど。彼がいまだに結婚しないのは、本当は借金のせいだけではないと言う人もいるんだ」
「誰も真相は知らないの?」
「ああ。ウワサだけだよ」
「ふぅ~ん……」
私がジロジロとモンパトワル子爵様を観察していると。不意に子爵様がこちらをむき、パチリと目が合った。
(ひゃあっ!)
あわてて視線をそらして扇で顔を隠した。
「……っ!」
(やだ、はしたなく見ていたのに気づかれたかしら?)
気になって、もう一度モンパトワル子爵様を見ると……
また視線が合いニコリッとほほ笑まれた。
今度はモンパトワル子爵様のほうが私を観察していたようだ。
(キャア─────ッ! どうしましょう⁉)




