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妹にだまされ、私を無視する婚約者をすてることにした  作者: みみぢあん


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8/11

8話 婚活


 破談の話が出てから1度も会うことなく、薄情なセルジュがすんなりと同意して婚約解消が正立した。



「たぶん、セルジュは私のことが嫌いなのね……? 私の初恋がこんなカタチで終わるなんて」

(私から先に言い出したことだけど、さびしくて、さびしくて、どうしようもなく孤独を感じるわ)


 そして私の気持ちを尊重した両親は、すぐに新たな結婚相手を探し始めた。


 けれど学園で流れた私の『嫉妬に狂い妹を虐待した』という醜聞のせいで、同じ年代(学園生たち)の男性は私を嫌い。

 私の縁談は思うように進まなかった。


 そんな中で私は母方の5歳年上の従兄(妻子持ち)にエスコートされ。

 数ヶ月前にデビューした社交界で、自分の目で結婚相手をさがすことにした。


 今年のデビュタントたちのために、今夜の夜会は王家の主催で開かれた。

 今期の社交シーズン中で、もっとも大きくて華麗な王宮舞踏会となった。



「連れて来てくれてありがとう、シリルお兄様。ずっと憧れていたの…… この舞踏会で踊ることを」

「どういたしまして」


 従兄のシリルお兄様はロンスヴォー伯爵家の(いびつ)な家族関係を、少し離れた場所からずっと見て来た人だ。


 だから理不尽(りふじん)な理由で両親にしかられ、私が悲しむ姿も知っていて。

 側にいる時は慰めてくれる、数少ない私の理解者だった。


「少し前までセルジュと踊ることを夢見ていた場所だけどね……」


 うっかり声にさびしさを(にじ)ませてしまうと、すかさずシリルお兄様が慰めてくれた。


「そう、腐ってはいけないよ。君は今年のデビュタントの中で一番綺麗なんだから」

「ふふっ…… そう言ってくれる身内はシリルお兄様だけだわ」


 いつも甘え上手で可愛らしい妹の陰になり、私の存在はぼやけてしまうから。でもシリルお兄様はシャルロットよりも、いつも私を気にかけてくれる。


「さぁ、嫌なできごとは早く忘れて。幸せになった者の勝ちだよ、デルフィーヌ」

「ええ」

 

 少しだけ卑屈(ひくつ)な気持ちになり、ヂクッ…… と胸が(うず)いたけど。優しいシリルお兄様の笑顔でじんわりと(うず)きが癒される。

 

 本来なら両親がお目付け役となり、夜会に付きそうのが普通だけど。私が先に社交デビューしたことで、妹のシャルロットが癇癪(かんしゃく)を爆発させて大騒ぎした。


 そこで伯爵家の事業を手伝うお父様の右腕。従兄のシリルお兄様がその役目を両親から任された。



「そういえば…… ソフィアお姉様はお元気になられた?」


 シリルお兄さまの奥様はつい先日、出産したばかりだから気になってたずねた。


「うん。医師には産後の回復は順調だと言われたよ」

「ふふっ…… お姉様と赤ちゃんに会えるようになったら教えてね?」

「もちろんだよ」


 私はお兄様が知る未婚の男性たち(みんな年上)に、次々と引き合わされたけど。

 学園で流れた『嫉妬で妹を虐待した姉』という醜聞が耳に届いているのか、いまひとつ反応が悪い。


 私に近寄ってくるのはお金に困った人たちばかりで。そんな人たちはシリルお兄様が追い払った。



「ねぇ、お兄様…… あの男性は誰? お城の絵が掛けてある壁際に立っている人」


 (おおぎ)で唇をかくし、私をエスコートする従兄にさりげなくたずねた。

 貴族名鑑で名前とその家の歴史は暗記したけれど。顔は自分の目で実際に見るしかおぼえようがない。


「ああ。モンパトワル子爵だよ」

「ふぅ~ん…… 見たことが無いかただわ」 


 社交シーズンに毎晩、夜会に出ていると……

 だいたい顔ぶれが同じで、私も有力な貴族たちの顔はすでにおぼえた。


「彼はめったに社交には出て来ないから、デルフィーヌが顔を知らなくても当然だよ」 


 シリルお兄様は仕事の関係で社交界でも顔が広く。

 いろいろな貴族たちの諸事情を知っていて、すごく頼りになる。


「シリルお兄様の知っている人?」

「仕事で何度か話したことがあるけど、結構なヤリ手だよ。とにかく交渉するのが上手くてね、悪い人ではないけど……」


 大きな声を出せば相手に聞こえてしまいそうな距離にいたため。従兄はヒソヒソと私の耳元で答えてくれた。


「どうして社交には出ないのかしら?」

「先代のモンパトワル子爵が、ギャンブルで大きな借金をかかえたんだ。その返済に追われて忙しかったからだと思うよ」


「まぁ…… それはお気の毒に」

「でも異国の果物の栽培に成功して、その収益で返済したと聞いた」

「本当に子爵様はヤリ手なのね?」

「だけど婚約解消を2度もしているらしい」


 パッと胸の中に期待する気持ちが湧く。


「あら、あんなにステキな男性がもしかして独身なの?」


「うん。確か年齢は…… デルフィーヌより10歳ぐらい年上だったと思うよ」

「10歳…… それなら許容範囲だわ」


 ──正直。


 同じ年代の男性には散々、学園で陰口をたたかれたから不信感を持っている。


 醜聞持ちの私には礼儀は必要ないと、嫌な態度をとられたこともあり。

 少し年が離れていても、シリルお兄様のような大人の男性が良い。




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