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妹にだまされ、私を無視する婚約者をすてることにした  作者: みみぢあん


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61話 旅立ち 先代ロンスヴォー伯爵side


 甥のシリルにロンスヴォー伯爵家を引き継がせ、当主の重責から解放された。

 ようやく肩の荷がおりて、私は晴々とした気分になった。


 ずっと守ってきたものを手放すのだから、喪失感に襲われ寂しい気分になるかと思っていた。


 ……だが引退後は愛人との間にできた幼い息子と一緒に暮らせると思うと、意外なことに満足感があった。



「叔父上…… 長い間、お疲れ様でした」

「ああ、後のことは頼んだぞ、シリル」

「はい、お任せください」


 新しいロンスヴォー伯爵夫妻のお披露目パーティーも無事に終わり。

 私はさっそく愛人と息子をつれて、田舎に用意した別荘へむかうことにした。


 背後をふり向くと、そこには若い愛人とかわいい息子をのせた馬車が私を待っている。


「あの…… 叔父上、本当にもう旅立たれるのですか? もう少しゆっくりしてもよろしいかと思うのですが?」


「いつまでも先代当主の私が屋敷に居座っていると、お前もいろいろと仕事がやりにくいだろう?」


「そ、そんなことはありませんよ。叔父上!」

「はははっ…… 私は早く子供と一緒に暮らしたいんだ」

「大丈夫でしょうか? もっと詳しく調査したほうが良いのでは?」


 私が息子をロンスヴォー伯爵家の後継者にすると言った時から、シリルは子供の父親が本当に私かどうかを疑っているのだ。


「調査はしたから大丈夫だ。そんなに心配するな」

(母親のリリーを愛人にする前に、問題がないか調査はすませているから大丈夫だ)


 それに息子は焦げ茶色の髪と青い瞳で、私と容姿がそっくりだった。


(あれだけ私に似ている子供なら、私の種で産まれた子どもに決まっているさ。この件については難しく考えなくても問題ない)


「ですが、叔父上」


「それよりも先代伯爵夫人(マルグリット)新しい伯爵夫人(ソフィア)(シリルの妻)に、屋敷内の家政を引き継がせるのに、もう少し時間がかかると居座るつもりのようだ」


「ああ、その話はマルグリット(叔母上)に聞いています」

「そうか、面倒だがしばらく頼むぞ」

「いえ、妻も喜んでいますから。子供がまだ小さいので、叔母上が子育てを手伝って下さると」


「マルグリットが?」

(溺愛していたシャルロットがいなくなり、落ち込んでいたが。次はシャルロットのかわりにシリルの幼い子供に目をつけたようだな)


「はい。良くしてもらっていると、ソフィアも喜んでいます」

「シリル、子育てにマルグリットを関わらせないほうが良いぞ。お前の子供がシャルロットのように、バカな娘に育ったら困るだろう?」


「……」

 シリルは答えに困り無言で苦笑した。


 神学校にシャルロットを入れるのに、大金を寄付する手続きをしたのはシリルだった。


 それに神学校からシャルロットを退学させると手紙が届いた時も……

 王都の大神殿にいる大司教に大金を寄付して、大急ぎでラバジュー神殿にシャルロットの受け入れを承諾させたのもシリルだ。


「小さな屋敷を王都に買ってやったから、いずれはマルグリットもそちらに引っ越す予定だ。それまでは、適当に面倒をみてやってくれ」


「はい」


 できればマルグリットと離婚して、子供の母親のリリーと結婚したかったが。

 マルグリットが受けいれなかったから、別居することにした。


 マルグリットは離婚しないことが私への復讐だと思っているのだろう。

 あいつは若いころから浅はかな女だったから。


「お前なら何でもうまくやれるだろうから、私は心配はしていないが」


 私の右腕として、数年前からロンスヴォー伯爵家の事業を手伝わせていた。

 甥のシリルは有能な男で、共同で事業を運営するトレザン侯爵も、以前から高く評価している。

 取引をしている商人や貴族たちからの評判も良い。


「叔父上の期待を裏切らないよう、精進します」


「うむ」

(シリルの能力に不満はないが。やっぱり実の息子に伯爵家を継がせたかったなぁ……)


 周囲の反発が大きくて息子を伯爵家の後継者に、出来なかったのが心残りではあるが。


(まぁ、息子には将来。男爵位がついた土地でも買ってやろうと思っている)


「そろそろ私も旅立つとしよう」

「お気をつけて、叔父上」


「ああ」 



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