57話 思わぬ再会2
「デルフィーヌ、僕の話を聞いて欲しい。けして迷惑はかけないと誓うよ! 君に謝罪したいだけなんだ」
「……っ」
(こんなところでセルジュと会うなんて……)
突然、セルジュに声をかけられて不安になり。私はユベールを捜してパーティー会場を見渡した。
私の両親と話すユベールの姿を見つけてジッ…… と見つめていると。私の思いが通じたのか偶然ユベールがこちらを向いた。
瞬時に私の状況をさっしたらしく、ユベールはあわてて戻ってくる。
「…ああ」
(良かった。気づいてくれた!)
夫が戻ってくる姿に心強さを感じて、ホッとすると。再びセルジュに向き合い答えた。
「セルジュ。夫と一緒なら、あなたの話を聞いても良いわ」
「それで良いよ! できればモンパトワル子爵にも謝罪したいから。ありがとう」
「……え、ユベールにも?」
セルジュから意外な言葉がかえってきて、思わずまじまじと見つめていると。
私のもとに戻ってきたユベールが、セルジュから護るように私の前に立つ。
「セルジュ卿、私の妻に何か用ですか?」
「モ…… モンパトワル子爵、僕は話がしたくて……」
私の視界を遮るようにユベールが立っているから、セルジュの顔もユベールの顔も見えない。
……でも冷淡な声で話し威嚇するような空気を、ユベールが放っているのがわかる。
それに対するセルジュは、ユベールの気迫に気圧されて怯んでいるようだ。
「ユベール……」
私は後ろからユベールの手をつかみ、声をかけた。
「ユベール、セルジュ卿は謝罪がしたいそうよ…… あなたにも。だからユベールと一緒なら話を聞いても良いと、答えたところなの」
セルジュがユベールに謝罪したいという言葉に、興味をそそられた。
「フィーヌ?」
「お願い、ユベール。一緒について来てくれるでしょう?」
振りかえったユベールは渋い顔をしたけれど、私のお願いを聞きとどけてくれた。
「わかったよ……」
私はユベールの腕につかまり、よっこらしょと重い身体で椅子から立つと。
伯爵邸の居間へ移動した。
居間のソファセットにそれぞれが腰をおろすと。
ローテーブルをはさんだ向かい側から、並んで座った私とユベールにセルジュが頭を下げた。
「お二人の結婚式の日のこと…… 申し訳ありませんでした。あの時の僕はシャルロットのウソを本気で信じていたから」
「セルジュ……」
(ああ、やっとシャルロットの虐待さわぎが全部、ウソだと気づいたのね? 今さら気づいても遅いけど)
「ずっと僕は自分に都合の良い解釈をして、君は偽装結婚をしたと思っていたから」
「そうね。でも私とユベールは出会った時から、お互いに惹かれ合って結婚したの」
「……っ」
パッ! と顔をあげて私を見つめたセルジュの顔が、悲し気に歪んでいた。
「あなたとシャルロットに傷つけられ、学園にも私の居場所はなくなった。そんな時にユベールと出会い、苦しい現実を忘れるほど楽しい時間をすごしたの」
私の隣に座るユベールと見つめ合いほほ笑んだ。ユベールは私の手をとりキスをする。
「そうか。本当に愛し合っているんだね?」
「ええ」
「僕はユベール卿が男色家だと聞いていたから……」
セルジュは真偽を確かめたいのか、ユベールをジッと見つめた。
「セルジュ、それもウソよ。ユベールに一方的に好意を持ったパスカル卿が、自分のものにならないユベールを罠にはめて嘘のウワサを流したの」
「私とフィーヌには他人の悪意で傷つけられたという、共通点があった。だからお互いを信頼し、醜聞に惑わされることは無かったんだ」
「ああ……」
顔をあげていたセルジュが、力なく項垂れた。
「ねぇ、セルジュ。あなた、どうやってシャルロットのウソを知ったの?」
(あれだけ私が訴えても、まったく信じようとしなかったのに?)
セルジュは顔をあげて苦笑する。
「それはシャルロット本人から聞いたんだよ」
「シャルロットが⁉」
「彼女も神学校へ来たから、会えば声をかけていたけど。シャルロットは神学校の厳しい規則になじめなくて」
そこまで言うとセルジュは気まずそうに黙りこんでしまう。




