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妹にだまされ、私を無視する婚約者をすてることにした  作者: みみぢあん


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53話 シャルロットの婚約式


 ロンスヴォー伯爵家のお茶会で公開求婚(プロポーズ)を強行したパスカル卿とシャルロットは、婚前契約がまとまるとすぐに婚約式をおこなうことになった。


 王都のはしにあるコンブルー公爵家が援助する神殿で。

 二人の婚約式がおこなわれると、モンパトワル子爵家にも招待状が届いた。


 私たちも出席すると実家に返事を出そうとしたとき、ますます過保護になったユベールは渋い顔をした。

 

「フィーヌ…… きっとシャルロット嬢は、君に噛みついて来るから。君は体調が悪いと言って欠席してはどうかな?」


「でも、ユベール。妹の婚約式よ?」

「結婚式ではなくて、たかが婚約式さ」

「それは、そうだけど……」

「君は妊婦だし。参列するのは私一人でも、文句は言われないと思うよ」


 ユベールが心配する気持ちもわかる。 

 お母様の話では毎日のようにシャルロットは、癇癪をおこして大騒ぎしているらしいから。


 こうなったのも私がオリヴェ男爵家の音楽会で、シャルロットを罠にかけたのがきっかけだし。

 私はきっとシャルロットに恨まれていると思う。


 でも……


「ユベール。今さらシャルロットに噛みつかれたぐらいで、私は傷ついたりしないわ。でも、ありがとう。心配してくれて嬉しいわ」


 執務机で仕事をしながら、心配そうに私を見つめるユベールの頬にキスをした。


「フィーヌ……」

「あなたがいてくれたら平気よ。お願い」

「んんんん────…」

「ね?」


 結局、ユベールが折れて私はシャルロットの婚約式に、出席することを許された。





◆  ◆  ◆  ◆



 シャルロットとパスカル卿の婚約式当日。



 私たちは婚約式の前に神殿の控室で待機する。

 シャルロットとパスカル卿をたずねてゆくと……


 控室の前には険しい表情で腕組みをした、従弟のシリルお兄様が門番のように立っていた。


「シリルお兄様、どうしたの? そんな顔をして。シャルロットは?」


 私がシリルお兄様に声をかけると、なぜかシリルお兄様はヒソヒソと声をひそめて話す。


「ああ、デルフィーヌ。ユベール卿…… 今は中に入らない方が良いよ」

「シリル卿、何かトラブルですか?」


 ユベールもシリルお兄様に合わせて、ヒソヒソと声をひそめてたずねた。


「いや、それがね……」


 シリルお兄様が控室の扉を少しだけ開くと。中からシャルロットのかん高い怒鳴り声が聞こえた。


「パスカル卿があんなウソさえつかなければ、こんなコトにはならなかったのよ! この詐欺師!」


「なんだと⁉ シャルロット、君こそ自分なら父親を説得できるとウソをつき。無理やり僕に求婚しろと迫ったくせに! この性悪女!」


「迫ってないわ! パスカル卿だって、私を愛していると喜んでいたでしょう?」



 扉のすきまから控室の中をこっそりのぞいてみると。

 結婚式で着るような豪華な純白のドレスに身をつつんだシャルロットが、口汚くパスカル卿を(ののし)る姿が私たちの目に飛び込んできた。


「……あらあら」

「ずいぶん、派手にやっているなぁ…… パスカルがあんな顔で怒鳴り散らすなんて初めて見たよ」


 シリルお兄様は心底、困ったと。ハァ───…… とため息をつく。


「そうなんだよ。だから止めようとすれば、こっちまで飛び火しそうだろう? それで、こうして彼らの怒りが静まるまで、ここでまっているんだけどね」



 シャルロットは癇癪(かんしゃく)を爆発させていて、手は大きくふりまわし。

 足で床をガンッ! ガンッ! ガンッ! と踏み鳴らしている。


 パスカル卿も顔を真っ赤にして、とても紳士とは思えない態度でシャルロットに怒鳴り返している。


「まるで子供のケンカだな。妹の子供みたいだ」

「あら、あなたの甥っこはもっとお行儀が良いわよ?」


 私の妊娠を知ったユベールの妹アリス様は、子供をつれて数日前に会いに来てくれた。

 その時会った子どもたちはすごくかわいくて、お行儀がよかった。


「確かに私の甥は悪態をついたりしないが。それにしても、アレが紳士淑女とは思えないな」


「お似合いと言えば、お似合いだけどね。詐欺師と性悪女なら、二人とも似た者同士さ」


 ユベールの言葉にシリルお兄様がニヤリと笑って答えた。


「まぁ、二人とも口が悪いわよ。あなたたちまで紳士をやめないで下さいね?」

「そういう君のほうが、結構辛辣(しんらつ)じゃないか」

「あら」


 ユベールが苦笑すると一緒にシリルお兄様も、ヤレヤレと首を横にふり苦笑する。 



「この詐欺師!」

「なんだと、性悪女が!」

「ウソつき───っ!」 


「やめなさい、シャルロット! これから婚約式なのよ? そろそろレディらしく大人しくしなさい!」


 (ののし)り合いはしばらく続き、見かねたお母様が二人のケンカに割って入ったが。

 シャルロットはお母様にまで、金切声でからみはじめた。


「お母様も悪いのよ! この詐欺師が男色家だと、なぜ教えてくれなかったの⁉」

「シャルロット、だからそれは……」


「お母様が教えてくれていたら、こんな詐欺師なんて相手にしなかったわ!」


「何だと?! 性悪女が!! お前が僕にまとわりついて来たから、僕はしかたなく相手をしてやっていたのに!」


 ちなみにお父様はケンカをはじめた二人を見て。

 自分だけは被害にあわないよう、さっさと祭壇前広場へ移動しコンブルー公爵と結婚式のことで話し合っていたらしい。



 シリルお兄様の話だと、シャルロットとパスカル卿が結婚したら。

 そのあとお父様は爵位をシリルお兄様にゆずり、愛人と息子をつれて三人で田舎の別荘で暮らすそうだ。




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