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妹にだまされ、私を無視する婚約者をすてることにした  作者: みみぢあん


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40/65

40話 波乱


 ようやくユベールが私のところへ来た時には、すべてが手遅れになっていた。


 満面の笑みを浮かべるパスカル卿の隣で、真っ赤なバラの花束をかかえて嬉しそうにはしゃぐシャルロット。そして娘と求婚者を祝福するお母様。

 羨ましそうにシャルロットとパスカル卿を眺める、未婚の若い令嬢たち。


 令嬢たちとは明らかに温度差がある、年配の貴婦人たちの冷めた目。



 私に呼ばれてきたユベールは異様な雰囲気につつまれたお茶会に困惑し、ヒソヒソと声をひそめて私にたずねた。


「フィーヌ…… これはいったいどういう状況なんだい?」

「たった今、パスカル卿が求婚して。シャルロットが受け入れたの」

「求婚⁉」

「ええ。なぜかお母様も止めなかったわ」

「それはまた…… 困ったことになったな」


 私の頭の中に“ロンスヴォー伯爵家の没落” ……という文字が浮んだ。


「これから、どうなるのかしら?」

(こんなに浅はかなことをする人たちが、伯爵家の当主になるなんて)


 考えただけでもゾッとする。


「さっき、君の義父上にあいさつをしに行ったとき。パスカルがシャルロット嬢を狙っている話をしたばかりなのに……」


 ユベールは視線を私からパスカル卿にうつして、険しい表情で見つめた。


「お父様は知らなかったの?」

「うん。私が伝えて初めてこんな状況になっていると知って、驚いていたよ」

「だったら、これはシャルロットとお母様が勝手に仕組んだことなの?」

「そういうことになるね」


 私が不安そうにしていると、ユベールは椅子に座る私の肩に手をおく。



 ユベールがお茶会にあらわれたことに気付いたシャルロットが、かん高い声で呼びかけてきた。

 それに続き、パスカル卿もニヤニヤ笑いをうかべて話に加わった。


「まぁ! ユベールお義兄様! 私たちの祝福をしに来てくれたのですか?」

「嬉しいよ、ユベール。僕たちもこれで親戚になれるね」


 シャルロットとパスカル卿に、意外にもユベールは険しい表情を引っ込めて。

 にこやかに笑いながら答えた。


「シャルロット嬢、パスカル卿に求婚されたそうだね?」

「はい、お義兄様」

「それはおめでとう、二人とも」


「ありがとうございます、お義兄様!」

「君に祝福されて嬉しいよユベール」

 

 シャルロットが私を見て誇らしげに笑う。


「でも、ごめんなさいお姉様。私だけ…… お姉様よりもずっと幸せになってしまって」


 今の私は不幸だと。シャルロットは言いたいらしい。


「シャルロット、私は幸せよ」

(また、私たちを侮辱する気ね)


「無理しないで、お姉様。だって……」

 シャルロットはチラリとユベールの顔を見た。“ユベールお義兄様のせいでお姉様は不幸でしょう?” ……と嘲笑う。


 カッ! と怒りが爆発しそうになった。

 私はシャルロットに見下ろされたくなくて、ユベールの手につかまり椅子から立った。 


「シャルロット、私もあなたに祝福してほしいことがあるの」


 まだまだ平らな自分のお腹に触れて、隣に立つユベールを見あげてニッコリと笑った。

 ユベールは小さくうなずく。


「あなたはもうすぐ姪か甥に会えるはずよ」


 シャルロットはハッ! と息をのみ、私のお腹を見た。





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