36話 告白
愛する夫に軽蔑されるのを覚悟して、オリヴェ男爵家の音楽会でシャルロットにしかけた罠のことを正直に告白した。
「ごめんなさい、ユベール…… 私が浅はかだったわ。こんなにあなたを心配させるなんて思わなかったの。少しだけシャルロットが恥をかけば良いと……」
あの時はシャルロットに侮辱され、怒りにまかせて衝動的に復讐を考えてしまったから。
「実の妹を罠にかけるなんて。私を軽蔑したでしょう?」
私がチラリとユベールを上目づかいで見ると、ユベールは自分の頬をポリポリと指先でかく。
「いや、デルフィーヌ。私の世界の中心は君なのに、軽蔑なんてしないさ」
「本当に……?」
「うん。本当だよ。ウソはついてない」
ジッ…… と見つめて、ユベールの瞳に私への軽蔑の色は無いか確かめた。
なぜかユベールは面白そうに笑っている。
「どうして笑っているの?」
「いつも真面目な君にしては、ずいぶん思い切ったことをしたと思ってね」
「あ、あの時は本当に頭に来たの」
「妊娠しているフィーヌには、心身ともに安静が必要だから。こんな大切な時に、妹が醜聞まみれになりそうだと…… 君が心を痛めたらいけないと思ったけど」
「……え?」
「それで、この件について君はどうしたい?」
「それは……」
(本心ではシャルロットが私にウソの醜聞を着せたように、私と同じ経験をして欲しいと思っているわ)
でも…
「君がこのままでも気にしないなら。正直に言うと私はシャルロット嬢のことなんて、どうでも良いんだ。そこまでお人好しではないしね」
「あら」
(本当に私のためだけに、ユベールは心配していたのね)
「……ただ。このままパスカルがロンスヴォー伯爵家に、婿入りして当主になれば。確実に財産は喰いつぶされてしまうだろうね」
「ああ!」
(そうだわ。確かにユベールのいうとおりだわ!)
「あの男は根っからの放蕩者だ。領地や事業の運営に、真面目に取り組むような人間ではないから」
「セルジュが当主になるよりも、もっと危ないかもしれないのね?」
「うん。最悪の場合、十年前のモンパトワル子爵家のようになるだろう」
「そこまで深く考えていなかったわ」
「政略的にコンブルー公爵家と強固なつながりを持てても。ロンスヴォー伯爵家の内側から、パスカル(害虫)に喰い荒らされることになるからね」
……つまり公爵家と縁ができても、利益などほとんど無くなる。ロンスヴォー伯爵家は損をするほうが大きいのだ。
「これは没落の危機なの?」
シャルロットも幼い頃から両親に溺愛されて育ったから。
パスカル卿に影響を受ければ、一緒になって好き放題の贅沢をしそうだ。
そうなれば……




